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第113話『雪合戦はやめましょう』

 『重度のシスコンに構っている暇はない』と容赦なく着信拒否にし、チャットを閉じる。

────と、ここで次の目的地である山の頂上に辿り着いた。

のだが、ここで一つ問題が……。


「さ、さむーーーーーい!!」


「そりゃあ、そうだろうね〜。ここ頂上だし〜。ついでにアイスゴーレムも居るから〜」


『寒くない方がおかしい』


「こ、こここここここ、この寒さは実に刺激的だね☆」


「歯、ガタガタ言ってんぞ?とりあえず、予備の防寒具を貸してやるから、さっさと着ろ」


「ありがとう、レオンさん♪恩に着るよ」


 レオンさんから大きめのウィンドブレーカーを受け取り、リアムさんは小刻みに震える手で何とか羽織る。

他のメンバーも自前の防寒具を着用し、寒さを凌いだ。

しっかり靴まで替えて、雪の降り積もった大地を踏み締める。

『ここは吹雪も凄いし、ちゃんと着込んだ方が良さそう』と考える中、ふと体育座りしているアイスゴーレムを目にした。


 ここに到着してから、ずっとあの体勢なんだよね。

さっき出会したサンダーゴーレムと言い、最近のゴーレムは個性豊かだな。


 などと思いつつ、私はブルリと身を震わせる。

これでも結構暖かくしている方なんだが、山頂というシチュエーションだからかまだ寒い。


 これは長居出来ないな。

低体温症になる前に……いや、凍死する前にアイスゴーレムを倒さなきゃ。


 私はアイスゴーレムからパッと視線を逸らし、呑気に雪玉を作り出したチームメンバーへ目を向けた。

防寒具のおかげで多少体温が上がったとはいえ、まだ寒いだろうに……遊ぶ気満々である。


 この人達、本当に自由だな……。


「ちょっと、皆さん。ここへは遊びに来た訳ではありませんよ。雪玉作りよりも、大切なことがあるでしょう……?」


「えー?そんなのあったっけー?」


『恐らく、なかったと思うぞ』


「いやぁ、それにしても雪合戦(・・・)なんて久々だな!子供の頃以来だ!」


「男はいつまで経っても子供のままさ☆さあ、早速始めよう!」


 本来の目的を忘れて雪玉を手に取る男性陣に、私はピキッと頬を引き攣らせる。


 ほう?アイスゴーレムの討伐より……いえ、ゴーレム討伐イベントよりも雪合戦の方が大事なんだ。ふーん?

なら、もういいよ。私一人でやるから。


 『皆は楽しく遊んでいればいい』とブチ切れ、私は一人でアイスゴーレムの元へ近づく。

が、見慣れた黒い背中に行く手を阻まれた。


 徳正さん……?


「シムナ達〜!ラーちゃんキレているから、雪合戦は諦めた方が良いよ〜。遊びたい気持ちは分かるけど、今はイベントに集中しなきゃ〜。それに早く謝らないと、ラーちゃんが一人でアイスゴーレムに突っ込んじゃうよ〜?それでもいいの〜?」


 この中で最も付き合いの長い徳正さんは私の怒りを敏感に感じ取ったようで、素早く手のひらを返した。

さっきまで、ノリノリで雪玉を作っていたのに。

『現金な人だな』と肩を竦める中、シムナさん達は慌ててこちらを振り返る。


「いや、いい訳ないじゃん!!雪合戦なんて直ぐにやめるから、置いていかないでー!」


『すまない、ラミエル……久々の雪で、テンションが上がってしまったらしい』


「最初はただ、雪玉を作るだけのつもりが……我慢出来なくなっちまった」


「ごめんよ、ラミエル……君との約束を破ってしまった。これは完全に僕の落ち度だ。如何なる罰も受け入れよう」


 迷わず謝罪の言葉を口にする彼らは、慌てて雪玉を投げ捨てる。

シムナさんに関しては雪玉の山を踏みつけて、(たいら)にしていた。

その姿は証拠隠滅を図る幼い子供のようだ。

これでもかというほど焦る彼らを前に、私は苦笑を漏らす。

自分もちょっと怒りすぎたな、と反省しながら。


「こちらこそ、勝手にイライラしてすみませんでした。とりあえず、ここは危険なのでアイスゴーレムを倒してさっさと下山しましょう。よろしいですか?」


 己の非を詫びた上で本来の目的であるアイスゴーレム討伐を口にすれば、彼らは間髪入れずに頷いた。


「「「『もちろん(だ)!』」」」


 気合い十分といった様子でアイテムボックスから武器を取り出し、彼らはアイスゴーレムに目を向ける。

『行こう行こう!』と張り切る彼らに頷き、私はもう必要なくなった短剣をアイテムボックスに仕舞った。

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