第101話『三馬鹿はやはり馬鹿だった』
『もう二度と気を抜かないようにしよう』と決意する中、レオンさんは全力疾走していき……何とか危機を脱する。
『はぁ……』と大きく息を吐き安堵する彼の傍で、私は視線を上げた。
とりあえず、三馬鹿の現状を把握しようと思って。
『まさか、移動の間に殺られてないよね?』と少し不安に思いながら、視線をさまよわせると……今日も今日とて、馬鹿を晒す三人組の姿が。
「あの人達は一体、何をしているんですか……」
「せっかく、リアムがゴーレムの気を引いているって言うのにな……」
「実に愉快な遊びをしているね。是非、僕も混ぜてほしいよ♪」
何故かファイアゴーレムの纏う炎へ槍を伸ばす三人の姿に、私達は釘付けとなる。
様子を見る限り、攻撃ではなさそうだが……だって、槍は明らかに安物だし、かなり端っこの方を持っているから。
あれでは、仮に当たったとしても大してダメージを与えられないだろう。
『一体、何がしたいんだ?』と疑問に思いつつ、私は槍を持つシムナさんと手綱を握るラルカさん、そしてシムナさんを支える徳正さんをじっと観察した。
が、やはり分からない。
なので、直接聞いてみようとマイクをオンにした。
「徳正さん、つかぬ事をお聞きしますが、あなた方は一体何をしているんですか?まさか、遊んでいる訳じゃありませんよね……?」
「えっ?あっ!ラーちゃん、見てたの〜?」
「ええ、ばっちり。それで、何をやっているんですか?」
「え、えーっとね……これはファイアゴーレムの炎で、武器が溶けないか確認するためのテストだよ〜。ほ、ほら!俺っち達の武器って、かなり希少でしょ〜?だから、ダメになるのは勘弁って言うか〜……ねっ?」
若干声を上擦らせながら弁解する徳正さんに、私は深い溜め息を零す。
『なんだ、そんなことか』と。
別に彼らの武器を軽く見ている訳じゃない。
ただ、彼らの場合戦い方次第でどうとでも出来る問題のため、無駄な努力に映ったのだ。
『やっぱり、私が指揮を取って良かった』と思案する中、シムナさんはそそくさとグリフォンの背中に座り直す。
どうやら、不穏な空気を察知したようだ。
「……大体、事情は分かりました。ですが、時間がありません。なので、そのテストは諦めてください。どうしても不安なら、風を使った間接的な攻撃や影魔法を使ってもらって構いません。直接斬り掛かることだけが、攻撃じゃないので……」
「りょ、りょーかーい!そっちの戦法に切り替えるよ〜!いやぁ、ラーちゃんは本当に頭がいいなぁ〜!」
「そのご機嫌取りは、あまりにも白々しいですよ」
「うっ……と、とりあえず!テストは諦めて、攻撃に本腰を入れるね〜!」
「そうしてください」
「は、は〜い」
『じゃあ、マイク切るね〜』と言って、徳正さんはまたもや無音状態になった。
相変わらず逃げ足の早い彼を前に、私もマイクをオフにする。
とりあえず、これで時間を無駄にしなくて済む。
シムナさんの手から槍が消えたことに確認し、私は一つ息を吐いた。
────と、ここでリアムさんが『おお!』と声を上げる。
「ラミエル、聞いておくれ!ファイアゴーレム二体の気を引くことに、成功したよ!」
「はい!?二体同時にですか!?」
「ああ。だって、そっちの方が戦いやすいだろう?」
「そ、そりゃあそうですけど……」
デタラメとしか思えないリアムさんの言い分に戸惑いながら、私はファイアゴーレム二体へ視線を向ける。
すると、二本の弓矢が目に入った。
えっ?嘘!?本当にファイアゴーレム二体の気を引いている!!
通常では有り得ない動きをする弓矢を何とか捕まえようと動き回る二体のファイアゴーレムに、私は目を剥く。
『本当に現実なのか!?』と疑いたくなる光景に、ひたすら困惑を示した。
ていうか、リアムさんさっきより遠隔操作上手くなってない……!?
めちゃくちゃスムーズに動いているような気が、するんだけど……!?
チートを使用したかのような急成長に、目を白黒させていると、徳正さん達が攻撃を始める。
アドバイス通り、風を使って……間接的に。
『おお、これは……』と苦笑する私の前で、彼らは巨大な竜巻を作り上げた。
大地に広がる火の海を吸い上げ赤くなるソレは、ファイアゴーレムへ衝突する。
と同時に、凄まじい破壊音と衝撃波がここら一帯を包み込んだ。
「ようやく、始まりましたか……」




