第三話 騎士団駐屯所
ヘンデールの宿はピンからキリで、商人が泊まる高級宿もあればあばら屋のような金の無い冒険者や旅人が泊まる格安宿と様々。
その中で比較的上のランクの宿に泊まる。
部屋事態そこまで綺麗ではないが、各部屋戸締まりがしっかりしており荷物が盗難に遭う心配も無い。
時間もある事だし例の騎士団長に顔を出しておくことにする。
騎士団の駐屯所は街の中心部分にある。ゲイルの取った宿は街の端の方にあったため駐屯所までは距離がある。
結構遠いな…。
市街地の大通りを中心を目指し歩く、しばらく荒れた道や草原ばかり歩いていたゲイルにとって、石畳の敷かれた市街道はかなり歩き易い。
多くの積荷を積んだ馬車や大荷物を背負った旅人。
道の端の方では道化師の格好をした大道芸人達が、各々珍妙な技や芸を披露し、その前に野次馬が出来ている。
しばらく歩いていくと、周囲を正方形に壁に囲まれた小さな城塞のような建物が現れる。
建物の一番高い円形の屋根に騎士団の紋章が刺繍された旗が風に揺らめく。
ここがリシアド騎士団の駐屯所だ。
駐屯所前には、街の入り口を警備していたような騎士団員が門の左右に一名ずつ立ち番をしていた。
外部警邏隊ほど重装ではない。アーメットもプレートアーマーも身につけず、騎士団の制服に剣を帯びている。
「ヘンリー・グリッドが会いに来たと、騎士団長に取り次いでくれ。」
「わかった。そこで、待て。」
騎士団の一人が門の中へ入っていく。
石造りの殺風景なこの建物は警備騎士団員の駐屯所と共に、街で犯罪を犯したものを拘留する牢獄の役割め担う。
しばらくするとさっきの騎士団員がもどってきて、
「騎士団長が、お待ちだ。二階の団長室へ。」
「どうも。」。
敷地へ入り正面の黒塗りの大扉をあける。
扉は重く頑丈で、開けるとすぐの所にも警邏の騎士団員が数名。
そのうちの一人に案内され、二階へと通される。
団長室と記された部屋を騎士団員が軽くノックする。
「オルテンシア団長。客人をお連れしました。」
「どうぞ。中へ。」
「もう行っていいわ。」
騎士団員は一礼し、自分の持ち場へ戻っていく。
「わざわざ会いに来てくれて、有難う。」
「あんたが、顔見せろて言ったんだろ。呼んだてことは何かあるのか?」、「前みたいに盗賊団のアジト探しとかは、ごめんだぜ。」
オルテンシア団長は一呼吸置き、言った。
「あなた向きの仕事よ。怪物退治。」
そう言って団長は一枚の紙をゲイルに手渡す。
「今からか?無理だね、武器は研ぎに出してる。そもそも怪物退治ならギルドに依頼出せば済む話しだ…」
書類に書かれている討伐対象を見てゲイルは言葉を失った。
その相手は盗賊団でも、ホブゴブリンと言った雑魚ではない…。
ライカンスロープ(人狼の上級タイプ)…。
ここで通常の人狼の説明をしておこう。
通常の人狼は他の怪物より強敵だ、それはゲイルも知っている。
人狼は通常半日か数時間くらいで人間に戻ってしまう、それに一度人狼化すると数日間は変化出来ない、何故かは詳しく知らないが…。
なので、人狼に変化している間に再生不能の怪我を負わせる。
例えば、腕を一本切り落とすとか、目を潰す何でもいいから負傷させる。
そうすると人狼化が溶けてもその怪我は治癒すること無く残る、それを目印に叩けばいい。
ただ、このライカンスロープは比べものにならない。
戦闘能力、スピード、治癒力は通常の人狼とは桁違いである。
おまけに、ライカンスロープは一度人狼化すれば数日間はそのままだ。
「何処に出やがった。交易路か?」
「いいえ。ヘンデールの外れに朽ちかけた廃村があるのはしってるわよね。そこでその、ライカンスロープが何度か目撃されているらしいのよ。」「このままじや、いつ被害が出るかわからない。報酬はそれ相応の額を約束するわ。」
ゲイルは小さく溜め息をつく。
「ただの人狼じゃないのか?」
「日頃から怪物退治ばかりしているくせに、怖じ気づいたの?」
「お前らは人狼退治の大変さを知らないからそんな事が言えるんだ。」「俺の同業者が何人、人狼退治で死んだかしってるか?」
「まさか断らないわよね?あなたが禁制品の霊薬を何処でいつも調達してるか把握してるのよ?今まで多めに見てきてあげたじゃない。」
くそ!ばれてたのかよ。
「あ~くそ!分かった、やればいいんだろ。報酬忘れんなよ!」
その人狼がほんとにライカンスロープかどうか実際行って確かめてやる。




