第一話 ヘンデール。
轍の続く道は交易路として使われ、その先に目指す所のヘンデールがある。
小さな森を幾つか抜けるとヘンデールの街が見えて来る。
石造りの城壁に石造りのアーチ状の門がある。
その手前には諸侯が派遣した、警邏のリシアド騎士団員が数名常駐しており、余程の事がない限り入り口の門は普段から開けっぱなしとなっている。
ハルバードを右手に持ち、プレートアーマにアーメットヘルムで重武装の騎士団員その中の一人がバイザーを跳ね上げた。
その顔をゲイルは知っていた。
「ハモンドか…。」
「よお、ゲイル。旅はどうだった。」
リシアド騎士団外部警邏部隊長のリシウス・ハモンド。彼の所属する外部警邏隊は主に、街の門扉を警備、守備の任務を担うと共に、重要な物質輸送の際は付き添い交易路に護衛に出る。
前に何度か交易路に出た怪物の討伐に手を貸したことがある。
「まぁまぁだ、いつもと変わらないよ。お前は元気か?ハモンド。」
「あぁ、最近は外のならず者共もめっきり大人しくなったからな。暇で仕方ないよ。」
「大方外の怪物共に喰われちまったんだろうよ。」
「ははは、そうかもな、最近は化け物の出没頻度のほうが高い。ギルドの仕事も繁昌してるみたいだ。」「街には、しばらく居るつもりなのか?」
「ああ、暫くはな。ギルドには仕事が多そうだな。またホブゴブリンが出たら手伝てやるよ。」
「外部警邏隊を甘くみるなよ。ホブゴブリンぐらい俺たちで何とかなる。そうだ、騎士団長がもしお前が戻ってきたら、顔見せろってさ。なんか話しがあるみたいぜ。」
「オルテンシア騎士団長か…。」
リシアド騎士団フィオナ・オルテンシアは三十歳の若さで初の女性騎士団長となった人物。
ヘンデールの治安維持を統括している。
何度か顔を合わせたことがある。ちなみにかなりの美人なんだが、お堅い女性で俺は苦手だ。
また盗賊狩りでも手伝わせる気なのか?
「あぁ、後で寄るよ。」
ヘンデールは商人の街だ。
人口およそ千四百余りだが、ここに定住している者たちのほとんどが商人関係や貿易関係者とその家族だ。中心地は富裕層の邸宅が多く、端には平民とその下の身分の者が暮らしているスラム地帯がある。
から様々な品が大量に入ってくるので、他の街より、安く、いい品が手にはいる。
市街は酒場や宿屋、雑貨店などが賑わいをみせている。冒険者をはじめ、商人、旅人などでごった返している。
まず、鍛冶屋だな…。
愛用のショート・ソード二本は最近ろくに手入れもしていない。まずは、武器の手直しと、刃の研磨を依頼したい。時間が一番掛かるため最初に寄っていこう。
それから、知り合いの調合師に霊薬の材料を届けて、消耗品の買い足し、それからリシアド騎士団の駐屯所に顔を出すとしょう。
ギルドがある酒場には武器の手直しが終わたら、一杯やりついでに依頼の張り紙をみにいこう。
人混みを避けながら、鍛冶屋を目指す。
鍛冶屋は武器の作成、販売を専科とする店で、武器専門の店や防具を中心に取り扱っている店と様々だ。
ヘンデールに鍛冶屋は十軒以上あるが、大通りにある鍛冶屋は使わない。
その店の鍛治師の腕の差もあるのだが、大通りの鍛冶屋は相場より修理費や手直し料が高い。
利用するのは大抵外部の俺のようなギルド利用者か冒険者くらいしかいない。それに、大規模な刃こぼれか、武器事態が破損しなければ用事がないため、取れる時に取っておこう的な算段なのだろう。
大通りの人混みを避けながら、俺は裏路地に入る。
目的の鍛冶屋と調合師の薬屋はどちらともに、裏路地商売をしている。
買春宿とぼったくりの酒場の前を通過し、入り組んだ路地を右手に曲がると、すぐ目的の一軒目に到着。
〈ヴィネの鍛冶屋〉と、小さく看板が出ている。
これで、ほんとに商売する気があるのか。
ただ、この〈ヴィネの鍛冶屋〉は禁制品となっている強力な武器も取り扱っていて、そういった類いの品は店頭には出ていないため、ごく極限られた常連客にしか売ってくれない。
俺もそのごく少ない常連客のひとりだ。
ゲイルは古びた木製のドアを開く。




