初めての景色 初めての戦闘
「………ん…?」
羅白はゆっくりと目をあけた。あの穴に落ちた後、気絶していたらしい。
しかし羅白が今目にしているのは屋敷の天井ではなかった。
木の枝だ。
時雨が気絶した羅白を地面に転がしておくわけがない。起き上がろうとすると右手首に鈍い痛みが走った。
どうやら捻挫してしまったらしい。
右手首をオーパーツ越しに擦りながら起き上がると、羅白の霞んだ瞳に写ったのは木と小さな泉、岩壁だった。
羅白は泉を覗き込んでみた。
泉の水は透き通り淡く発光していた。羅白がためしに一口飲んでみると、とても不思議な味がしたが飲み水にはなりそうだ。
「?痛みが引いた…」
水を飲んだと同時に捻挫の痛みが引いた。
人心地ついた羅白は改めて辺りを見回す。
どうやら自分は洞窟の中にある泉の中央に浮かぶ小島に生えている木の下にいるらしい。
「時雨…いないか…」
時雨はいなかった。この洞窟から出るには羅白一人の力で出なければならないらしい。
さすがに無謀すぎると思い、何か使える物がないか探していると、泉の底に何かが沈んでいるのを見つけた。
泉から引き上げ見てみると、透明で頑丈な鉱物で作られた水筒のようだ。羅白にはよく見えないが、細かな細工が施されていた。高価な物のようだ。
「水を入れて持っていこう」
水筒に水を入れると、羅白は泉を飛び越え進む事にした。
羅白の目では水筒以外見つからなかった。
しばらく歩いていると、羅白の前に魔物が飛び出してきた。
大型のうなぎ型の魔物が一体。
羅白に魔物との戦闘経験はないし、図鑑でも見たことのない魔物だった。
だが羅白は強力な魔法が使えるため、あまり問題はない。あるとすれば、視界が悪い事だ。
ゆえに羅白は広範囲魔法を使った。
「そこをどけ。ウィンドブラスト!」
羅白から放たれた突風と大量の鎌鼬が魔物をミンチに変えた。
それ以降は何も出てくる事なく洞窟を抜ける事が出来た。