かくれんぼの最中の…
ー屋敷近くの森ー
羅白は木の枝に座り、空を眺めていた。
今は時雨とのかくれんぼの真っ最中である。
羅白自身、先程の妹の言葉を気にしていない訳ではないが、時雨があまりにも思い詰めた顔をしていたので、羅白からかくれんぼに誘ったのだ。
何故かくれんぼだったのかというと、二人の思い出が詰まった遊びだからだ。
時雨が羅白が鬼の時、わざと見つかりやすい隠れ方をして羅白に拗ねられた事もあった。
時雨が鬼の時、魔法まで使って隠れきって、時雨に「羅白が行方不明になった!」と騒がれた事もあった。
かくれんぼの最中に流華が時雨を探しに現れ、二人して隠れた事もあった。
それに
(時雨はいつも私を見つけると嬉しそうな顔になる。今回もそうなればいい。)
そう思いながら羅白は枝に座っていた。
ふと、羅白の視界に、木に空いた大きめの穴が写った。
隠れ場所を変えようかと思い、近寄って穴の淵に手をおき覗いてみると、しゃがんだ羅白がちょうどすっぽり収まりそうな穴だった。
入ろうか迷っていると、背後から時雨の声がとんできた。
「主!見つけたぞ!」
「あ…もう見つかー」
ズルッ
「あっ」
「!?主!」
振り向こうとした羅白は足を滑らせ、穴の中に落ちてしまった。
すぐさま時雨が穴の中を覗き込むと、そこに羅白の姿はなく、ただ木の空洞があるだけだった。