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この世の中の何よりも

作者: 遊己

基本的に読みやすいように書いたつもりです。

よければ読んでやって下さい。

許さない。

私は決して許さない。

あなたは私を裏切った。

よくある結婚詐欺かもしれない。

それでも私は本気だったんだ。

本気であなたを愛していたんだ・・・!



「悠良。まだ探してるの?」

西国悠良。25歳。

しがないOLだったのを3ヶ月前退職した。

退職理由は

『寿退社』

半年前出会い、5ヶ月前に付き合いだして、1ヶ月前に婚約をした。

出会ったのは行き着けのバー。

いつも一人でブラリと飲んでた。

彼『結城雅』はそこにバー「birth」に1年位前に来始めた。

「いいじゃない。幸依には関係ないでしょ」

幸依。私の高校時代からの友達。

良い奴でずっと親友だと思ってる。

もちろん今でも親友だと思ってる。

でも、こと雅のことだけはゆずれない。

「ダメなのよ。雅のことだけはどうしても。

許す事が出来ないの。ごめんね、幸依」

振り向くこともなく私は幸依の前から立ち去った。

とても今の私には見れない。幸依の姿は正しすぎて・・・


雅は目立つようなヒトではなかった。

大人しめで、いつの間にかbirthに通い始めていた。

何時も一人でワインを飲んでいて、時折店員と他愛無い世間話を交わしていた。

私と話すことなんか本当になかった。

でも、ふとした時に話すキッカケができた。

そこから二人が始まった。

一緒に暮らし、平凡な日々を過ごせると思っていた。

なのに・・・・



まずは、お金が必要だった。

雅を見つけるために。

雅に復讐するために。

25歳。大分年増ではあるけど、働けない事はない。ということで水商売に手を染めた。

昔の私が毛嫌いしていた、ソープと言う仕事。

私は雅しか知らない。

雅以外に抱かれたことはない。

でも、それが良かったのか人気が出た。

月○○百万稼ぐようになった。

半年、雅を探しながら稼いだお金は軽くマンションを買える程度になったから、仕事を辞めた。

探偵を雇い、裏の世界の人間にまで助けを求めた。

お金だけでは請け負ってくれないからそこでも身体を売った。


「悠良。今晩は俺のとこだ。ちゃんと来いよ。

でないと、お前の探してるやつをこれ以上探す事は出来ねぇぞ」

もう、こんな事がどれくらい続いただろう。

本当に探してくれているかどうかなんか知らない。

でも、もうこれしか方法がない。

正攻法の探偵はいつまで経っても見つけてはくれない。

お金ばかりがかさむ。

雅、今どこにいるの。

早く私の前に現れなさい。

これ以上私の怒りが増さないうちに。


昨日、私は26歳になった。

誕生日になるその時、私は背中に模様のあるヒトの下にいた。

身体を弄られ、舐められて。

そんな時ほど雅を思い出す。

そして、また怒りが膨れ上がる。

今、私がこんなに惨めな思いをしてるのは雅のせいなんだと・・・。

雅が逃げないでいれば、私はこんな思いをしなくてよかったのに。


「悠良。お前の探してた男がみつかったぞ」

また今日も呼び出しが掛かったのか、そう思っていた矢先のこと。

「どこ!?」

私は食いついた。

もう、逃がさない。決して。

必ず見つけて、復讐をする。

そのために、私はこんなにも惨めな姿になってしまったのだから。

「○×県だ。この地図に居場所を書いておいた。」

「・・・行って良いのね?」

まともな職種の人間を相手にしているんじゃない事位解ってる。

もしも見付かっても、本当のことなんか話してくれないかもしれないって事も解ってる。

それがこうもあっさりと事が進むと、何故か疑ってみたくもなる。

私の悪い性格なのかもしれないけど。

「行けば良い。

お前には十分奉仕してもらったさ。

組の為にもずいぶん働いてもらった。

金が要るんなら用意してやるが?」

「いらないわ。これだけで十分よ。ありがとう」

これで、行ける。

雅のところへ。

私がこの世で一番憎い男の所へ。


○×県。

新幹線で約2時間半。

高鳴る胸を沈めようとする一方で、どうしようもない高揚感が私を襲う。

やっと会える。

2年間。自分を貶めながらも忘れる事が出来ず探し続けた男に。

『結婚詐欺』

そんなちっぽけな詐欺に自分がひっかかるなんて思いもしなかった。

でも、本当に愛してた。

可愛さ余って憎さ百倍。

今、私の恨みに勝てるヒトなんて本当にいないんじゃないかって言う位、私は雅を恨んでる。

早く。早く雅の元へ。

あいつらがくれた情報。

信じきれるものではないけれど。

それでも今はコレしか情報がない。


あっけないほど簡単に雅は私の前に現れた。

渡された地図の場所へ向かう途中。

ふと寄ったコンビニ。

そこに雅はいた。

「雅」

呼んだ私の声に雅は敏感に反応した。

まるで鬼にでも見付かったようなその形相。

まるで見た目は変わってしまっている。

きっと整形したんだろう。

目元も鼻も口元も。髪型から服装まで全部が私が婚約していた頃の雅とは違っている。

でも、私が雅を見間違えるはずがない。

「悠・・・良・・・?」

間違いなく、こいつはかつての私の婚約者。

結城雅その人だ。


「ずいぶん、派手になったのね?」

地味で目立たなかった雅ではなかった。

いまどきな服装を身に纏い、髪もワックスで立て、色も染めている。

「何で・・・ここに・・・?」

雅の顔色がどんどん悪くなっていくような気がする。

土気色に変色していっている。

少しは悪いことをしたと思ってくれているの・・・?

「何のようだよ!今更・・・解ってんだろ?!お前は俺に騙されたんだってことはよ!」

まくし立てるように怒鳴る雅。

一気に頬が上気していくのが見ていてわかる。

興奮している。

いまにも飛び掛ってきそうなくらい。

「何しにきた・・・?」

私は一切言葉が出なかった。

探して探して漸く目の前に現れた尋ね人。

愛しくて愛しくて。

だからこそ裏切ったのが許せなくて。

何をしに?

復讐をしに。

具体的には?

・・・考えた事もなかった。


私は復讐復讐と言いながらも、実際にはどうするかなんか考えた事がなかった。

ただ許せないと。そう思った。


でも、眼の前にいる雅を見ると・・・

忘れていた愛しさがこみ上げる。


解っていた。

最初から。

私はただ、雅に会いたかっただけ。

雅の顔を、姿を見たかった。

声を、息づかいを聞きたかっただけ!


「何も?ただ、会いに来たの。いけない?」

気づいたらそう口走ってた。

困惑するような雅の顔がなんだかとても嬉しくて。

歓迎されていないとわかってても、雅の顔を見るだけでシアワセで。

バカな女と自分で思っても、それでもこれでよかったと思える自分が、なんだかとても愛しくて。


今も私は雅を探してる。

あれからも私から逃げる雅を私は追いかける。

自分を貶めてでも、私は雅に会いたいと思うから。

何を望むわけでもない。

ただ、またあの雅の困惑する顔を見てみたくて。

私は雅を愛している。

この世の中の誰よりも。


私自身よりも・・・。

よろしければ評価などして下されば幸いです。

今後の参考にさせて頂きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読み仮名がないのが、残念です;; でも、文章は、良かったと思います^^
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