夜の雨
五月雨が夜の街に降り注ぐ
ベランダで座っている私の手のひらに
一粒の雫がこぼれ落ちてきた
この暗闇は始まったばかりで
寂しさを紛らわせるために
光が灯っていてそんな光景を
なぞりながら眺めていた
今日もまた終わってしまうんだ
楽しいことも悲しいこともまだ
私の後ろを追っているのに
会いたいな、君に会いたいな
面白い話を聞かせておくれよ
つまらない祈りをこの雨に乗せて
大地に染み込ませて
明日も雨だってさ
心の中で君に呟いてみたんだ
アジサイは綺麗に
紫色に咲き誇っていて
君から見て私は何色だろう
私なりには赤がいいな
イヤフォンを外して雨の音を聴く
全ての音が飲み込まれそうなほど
君のことをずっと考えているんだ
どうしようもないんだよ
手をいじって慣れない感情を
どうにか慣れようとしてみるけど
それは悲しいな、悲しく思うんだ
どうしてだろう初めてのことなのに
雨に声を包ませて君へと届けておくれ
少しでもいいんだ 聴いておくれ
願い事ばっかりで頼りすぎているけど
まだいろんな勇気が持てなくて
言葉にならないよ
気がついたら雨は止んでしまって
雲間に覗き込む月の光が
私を照らしている
なぜだか一歩踏み出せそうな気がしたんだ