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街へ

暑い、まるで鉄板の上に寝転がっているみたいだ。あまりの暑さに目を覚ますとさっきまでいた教室とは違う風景が広がっていた。  

なんだここ、知っているような知らないような、でもなんだかとても懐かしい場所に俺は来ていた。目の前にY字路があり両方からは陽炎が立ち込めていた。

「暑い、なんだここは・・・」

ミーン、ミーンと蝉の鳴き声がこのうだる様な暑さに拍車をかけていた。

「しかし、暑いなこの場所は、いったい何なんだよ。知らない場所だし。だいいち俺、学校に居ただろ・・・」

「ねえ、お兄ちゃん迷子なの?」

「うわあ」愚痴ばかりこぼしていた俺を、見知らぬ幼女がが現実に引き戻した。振り返ると小学生ぐらいの女の子が、仁王立ちで立っていた。

「なんだよ。驚かせんなよ。チビ助」

「チビ助じゃないよ。で、お兄ちゃんは迷子なの?」その小学生は躊躇なく聞いてきた。

「うるせぇな。ああ、そうだよお兄ちゃんは迷子だよ。助けてくれんのかよ。チビ助」小学生に迷子を指摘され苛立ちと恥ずかしさを含ませつつ返答する。

「だから、チビ助じゃないって。じゃあ、ここらへんを案内してあげるよ」チビ助は、腕を組みふんぞり返って言ってきた。何なんだこの小学生は、親はいねえのかよ。昨今の教育では、知らない人に声をかけるという行為は、駄目だと教えないのかと考えたが、でも俺もこんな所早く抜け出したいし・・・。

「はい、はい。じゃあ。お兄ちゃんに、ここらへんを案内してくださいよ」気だるそうに言う。

「分かればよろしい。」うざ!なんなんだこの餓鬼は・・・。

他に縋るあてもなく、見知らぬ場所では、小学生さえも心強く思え、そのまま案内してもらうことにした。

Y字路を右に行くと大通りに抜けた。

 「へえ、こんなに大きな街を見たのは初めてだ。」空が狭く感じるほどにビルがたくさん立ち並び雑踏もものすごい数だった。

 「お兄ちゃんて案外田舎者だったんだね。」人を小馬鹿にするようにチビ助が言う。

 「うるせーな」俺にとっては、この街みたいなものは目を輝かせる対象物がたくさんあり、興味の尽きることがなく、およそ世間一般では低能と思われるやりとりがチビ助と続いた。

「あ!お母さんだ。じゃあねお兄ちゃん」いつの間にかチビ助と繋いでいた手が離れチビ助は、母親と思われる女性向けて駆け出していった。

 「おい!待てよ、チビ助!」雑踏の中精一杯の声をだして言い放つ。

 「だから、チビ助じゃないって××ゆうかだよ。またね×××××。」

 「はあ?何だって聞こえないんだよ。」なぜか俺は駆け出して、雑踏の中を無我夢中で「ゆうか」を追っていった。

 「おい!春哉!おいってば」省吾の声に目を覚ました俺は、もとの教室にいた。

 「春哉、寝すぎ、もう帰りの会が終わっちゃったよ。」省吾が親指で時計を指しながら言う。

 「省吾・・・俺ついに馬鹿になったのかもしれない・・・。」

 「え!?今更何を言ってんの。そんなの今に始まったことではないじゃん。」笑いながら省吾が言う。

 「いや、違うんだ。俺は別の世界にいたんだよ。自分でもよく分からないけど・・・。」

 「晴香ちゃん。ついに春哉が本物の馬鹿になりました。助けてあげてください」省吾が言うと

 「春哉、私たちの前だからいいけど、あんまり人様の前でおかしなことを言っちゃダメだよ」教科書を鞄にしまったり明日の予定を確認したりなど帰り支度を始めながら言っていた。

「晴香!聞いてくれ本当なんだ」あまりの真剣な眼差しに晴香は

「分かったよ。今は忙しいから今夜電話してよ。聞くからね。じゃあね春哉、みんな」そう言って晴香は教室を後にした。

表現できない寂しさを切り裂くように

「さてと、俺らも帰るか」鞄を肩にかけながら野太い声で楓が言った。

駐輪場まで来ると省吾が、

「帰りも病院に行くんでしょ?」と聞いてきた。

「ああ。」俺は二つ返事で答える。

「なら後ろに乗ってきな」

「助かるぜ。毎日悪いな」

 「いいよ。いいよ。帰る方向一緒だしね」省吾の自転車の荷台に乗り母親が入院している病院へ行くのが毎日の日課だ。

 「ていうか、いくら学校から近いからって自転車に乗ってこいよ!」省吾がいつもの愚痴をこぼす。

 「いいじゃん。いいじゃん」勢いよく荷台に飛び乗り鞄を背負い直した。



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