表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

オトナの事情

 フジコちゃんは顔を洗おうと、立ち上がってクマさんの前を通りすぎようとした。そのとき、彼が彼女の右手首を軽くつかむ。

「なあ、ええやろ」

 上目使いにのぞき込まれたが、その言葉の意味をとっさに悟ったフジコちゃんは

「だめ!」

と、即答した。

「明日も授業があるじゃない。準備しないと」

「夜は長いねんで」

 少し情けなさそうにクマさんが訴える。が、早く洗面所に行きたいフジコちゃんは右手首を外そうとする。

 そんならと、クマさんはどっこいしょとお気に入りのソファから立ち上がり、太くてゴツゴツした手を彼女の肩にまわして、背中から軽く羽交い締めにする。

 なにすんのよ、と抗議の声をあげるフジコちゃんの耳元に口を寄せて、「好きだよ」とフジコちゃん限定でしか使われない魅惑の低音ボイスでささやいたのだった。

「……一度しか言わないんじゃなかったの?」

 この腰に響くバリトンにめっぽう弱いフジコちゃんは、早くも涙目になりながら、がっしりホールドされてしまっている筋肉質の腕をぺしぺし叩いている。

 そんな抵抗はものともせず、逃げ出そうとじたばたしている彼女の頬にキスが一つ落とされた。

「まずは、今度ワシの部屋に来てみいへんか? 面白いかもしれへんで。今までに付き合うてた女が、壁に塗り込められてたりするかもしれへん」

「アンタ、言ってることとやってることが違うじゃないのよ! 十年間付き合ってなかったんじゃなかったの!」

 クスッという笑いとともに、軽くついばむようなキスがフジコちゃんの唇に落ちてきた。

「ちょっとくらいアンタもバリア緩めててもええやろ?」

 フジコちゃんの口がぎゅっとへの字にゆがむ。泣きそうになるところをぐっとこらえる。そこにバリトンボイスが落ちてきた。

「好きって言ってほしい」


 あきらめたようにフジコちゃんの体中の力が抜けた。そしてため息とともにかすれた声がはき出される。

「豚まん臭いわよ」

 あははは、と本当におかしそうにクマさんは笑い声をあげた。そしてフジコちゃんの腕を愛しそうになでながら、「そんなら一緒にお風呂入ろか?」と、もう完敗してぐったりしている彼女の首筋に口づけを落とした。


 窓の外は春の嵐が吹き荒れているが、二人の夜はまだこれからである。


どうもありがとうございました。

爽やかな教え子桐原クンのところと違って、オトナな二人は数で勝負です! 

「一体なんべんキスしてんのや?」と遠慮なく突っ込んでやってください。

ま、一応R15タグなしで投稿してみましたが、大丈夫、ですよね?(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ