表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

前編

2003年2月の終わり。


ここは岡山県の牛窓町の三流マンガ家・高藤真琴の家。

「ああっ、描けな−い!」

「そんなこと言われてもねぇ、早く描いてください」

 松尾奈都海は真琴の部屋にあるテレビで、中島みゆきの夜会ビデオを見ながら、原稿が描き上がるのを待っていた。

「そんな−ん、描けね−よ! って、何でウチで中島みゆきのビデオ見るんだよ一! 気が散る!」

「はいはい。もう止めるから。でも、早く描いてよね。締め切りが・・・あっ! 歩摘さんに電話しておかなくては。この分と締め切りに間に合わないだろうかなぁ」

 奈都海は、ビデオを停止してE出版に電話した。そして、真琴の担当の歩摘に電話を繋いでもらった。

「お待たせしました。歩摘です」

「あっ、もしもし、高藤真琴のアシスタントの松尾です。いつも高藤がお世話になってます」

「こちらこそ、お世話になってます。で、今日はどうなさいましたか?」

「実はですね、高藤、原稿をまだ、プロット(下書きのこと)も、描けてないんです」

 奈都海は、申し訳なさそうに言った。

「えーっ! プロットもですかあ?」

「はー、・・・。申し訳ありません! 何とか、もう少し待って頂けませんでしょうか? 十日、いや、 一週間。一週間だけでも・・・。お願いします!」

 電話口で奈都海は必死で頭を下げた。

「うーん。そうね。じゃ−、以前に奈郡海ちゃんが描き下ろした小説をマコちやんがマンガにしたの、たしかあったでしょう。今回はあれで行きましょう」

「えっ、それでいいんですか!?」

「仕方ないでしょう。あれしかないし・・・」

「そうですよね・・・。よろしくお願いします。では、失礼致します」

 奈都海は、E出版の歩摘との電話を切って、真琴に向かって言った。

「は−、もう数え切れないよ。歩摘さんに謝ったのぉ」

「ごめんね、なっちゃん。いつも迷惑ばっかりかけて」

 真琴は、申し訳ないという顔して言った。

「いいってば、あたしは。でも、歩摘さんに申し訳が立たないよぉ」

「だよね。何か描かなきゃいけない。でも、何も思いつかないよ。なっちゃーん、助けてよぉー、ねぇ?」

 真琴は、思いつめながら、頭を掻いた。

「仕方ないな。こうなったら、歩摘さんにお願いするしかないか。どんなのが描きたい? やっぱりシリーズ化がいいよね」

 真琴は考えながら言った。

「うーん、そうだなぁ・・・。陶芸、うん、陶芸家を目指す少女の悲しい愛の物語。なんてのはどう?」

「いいんじゃないの。それで」

 奈都海は、真琴が原稿を描けるなら何でもいいと思い、適当に返事をした。


 そんなこんなで無理矢理スケジュールを割り込ませ、早速編集部との繋がりのある陶芸教室に取材を申し込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ