死神がCanvaで営業効率化を始めた。
ショート・ショートでも投稿した死神業務効率化をシリーズものにしようと思いたち再投稿。
シニガミ シンタロウ(広報課長代理)32歳。
朝9時30分。㈱シニガミ デス カンパニー 3階
マッキーの特殊な匂いが鼻をつく。
ポスター制作も飽きた。俺はこんなことをするためにこの会社に入社したのだろうか?
中年太りした営業課長がドカドカと広報課に踏み込んできた。ワキガが臭い。
「今日から我が社で『Canva』というものを導入することにした!PCにインストールしておいたから、早速使ってみろや!」
きゃ⋯んば?
舌がムズムズする。聞いたこともない。外界のものなのだろうか?
早速PCを立ち上げると、シェルフに見覚えのない青緑のグラデーションをしたアイコンが元からそこにあったかのように鎮座している。
ダブルクリックをして開く。
『さあ、何をデザインしましょう?』
軽い。
軽すぎる。
こちらは一日平均400件の魂回収案件を抱えているのだぞ。
俺は恐る恐る「作成」を押した。
すると──
『地獄の業火キャンペーン!』
というテンプレートが出てきた。
「なんであるんだよ⋯」
しかもオシャレだ。
炎のエフェクト。ゴシック体。赤黒グラデ。
悔しいがセンスがいい。
隣の席の後輩、ドクロベエ主任(26)が興奮気味に椅子を転がしてきた。
「課長代理!これヤバいっすよ!ドラッグするだけで魂の回収率グラフ作れます!」
「は?」
「あと“死の恐怖を煽るSNS広告”のテンプレもあります!」
「は???」
見れば、本当にあった。
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昼休み。
営業課長がデカい声で笑いながら広報室に来た。
「どうだァ!?Canvaすげぇだろォ!?」
汗臭い。
「……まぁ、便利ではあります」
「だろ!?もうマッキーでポスター描く時代じゃねぇんだよ!これからは“デザインの民主化”だァ!!」
突然、後ろの古い棚がガタガタ震えた。
積み上がった“昭和式手描きポスター”の束が崩れ落ちる。
全部、筆だった。
古参の死神たちの遺産。
インクと怨念の染み込んだ歴史。
広報室が静かになる。
その時、最古参の老人死神──
デス ヤマダ相談役(享年不明)が口を開いた。
「……手描きには、“呪力”が宿るんじゃよ」
全員が黙る。
「Canvaには便利さがある。じゃが、筆文字には“圧”がある」
重い。
この人だけ会話がRPGの賢者なんだよな。
しかし翌週。
デス ヤマダ相談役は普通にCanva Proに加入していた。
「背景透過が便利じゃよ。」




