新社獣ハンター SNSデマ拡散業者・牛久片倉屋の闇を暴け!
近年、SNSの普及によって情報の拡散は一瞬で世界へ広がるようになりました。便利さの裏で、根拠のないデマや誹謗中傷が氾濫し、それが現実の犯罪へと結びつく事例も数多く報告されています。二十年前には想像もできなかった現象が、今や日常の風景となってしまったのです。
本作では、SNSを悪用して虚偽情報を流し、利益を得ようとする「社獣」という存在を描きました。人の心を追い詰め、社会を蝕むその姿を物語として提示することで、現代の闇を少しでも照らし出せればと思います。
【登場人物】
社獣ハンター
• 伊田裕美
黒髪ショートカットの首領格。格闘技の天才で必殺技「飛燕真空回し蹴り」を操る。冷静沈着で頭脳戦・肉体戦を兼ね備える。
• 五十嵐いづみ(いがらし いづみ)
女優・山岸あや花を思わせる美貌。175cmの痩身で知的な雰囲気。黒縁メガネに仕込んだ小型カメラで敵の動きを記録。セクハラ社獣を罠にかけることを得意とする。
• 青島美香
若きアシスタント。伊田と五十嵐を尊敬し、彼女たちを支える存在。
• 暗号屋
情報工学の専門家。盗聴・盗撮を駆使し、最新情報を解析してハンターを援護。
• ドラゴン(龐統)
身長180cmの空手プロ。真ん中分けの髪が特徴。静かな呼吸の奥に爆発的な一撃を秘める。
• ブタッキー
政府の要人であり、社獣ハンターの司令塔。翁の能面をつけ、滝沢英明に似ていると豪語したことからこのあだ名で呼ばれる。
• モニター上のインターフェース
信頼性の高い通信システム。確実な情報を伝えるハンターの目と耳。
牛久片倉屋
• 片倉ちゃぷと
1956年生まれ。スキンヘッドに分厚いメガネ、出っ歯が特徴。稼いだ金はすべて風俗に消え、西川口のソープ街を徘徊する異様な男。
• こじりん
片倉の忠実な使用人。身長155cm、小柄だが全身毛深い。剃ってもすぐに濃い毛が生えるため、常に影のような存在感を放つ。
周辺人物
• 熊本紀子
東南アジア系の顔立ちを持つ女性。短髪黒髪、身長150cm。ブランド品を常に身につける上場企業の課長。出っ歯が特徴で「すっぽん」と呼ばれている。
• 堀部理絵
熊本の2年後輩。大学時代にミスキャンパスに選ばれた経歴を持つ。上場企業で部長へ昇進。身長160cm。
第一章:給湯室のざわめき
上場企業の給湯室。
昼休み前のひととき、湯気の立つコーヒーの香りに混じって、女子社員たちの声がひそやかに響いていた。
「ねぇ、次の部長昇進、誰になると思う?」
「本命は熊本紀子課長。次点は堀部理絵課長ってところでしょうね」
紙コップを指で弄びながら、一人が口を尖らせる。
「わたし、熊本課長って嫌い。上には媚びて、下にはパワハラばかり」
別の社員が肩をすくめて応じる。
「その点、堀部課長はいいわよ。部下思いだし、面倒見もいい」
しかし、声を落とした一人が囁いた。
「でも……やっぱり熊本課長が部長になるんじゃないかしら」
その瞬間、空気が少し重くなる。誰かがさらに声を潜めた。
「ここだけの話だけど――熊本課長、社内でも社外でも“営業”の仕方が特別らしいわよ」
「枕営業ってこと?」
「そう。取引先のSEから聞いたの。仕事ができない分を、体で払ってるんだって」
「最低……」
吐き捨てるような言葉が給湯室に落ちた、その時だった。
背後に、気配なく立つ影。
振り返ると、そこには熊本紀子課長。
無表情のまま、唇だけが動いた。
「……れすよん」
その声に、女子社員たちは血の気を失い、一目散に散り散りになった。
残された給湯室には、湯気と沈黙だけが漂っていた。
*
熊本紀子――上場会社「商会」の課長。
2025年度、突発的に社内で部長の座を争うことになった。
狡猾な熊本は、上役に媚びるだけでは飽き足らず、裏では枕営業を仕掛けていた。夜ごとに繰り返される密会のせいで、日中は常に眠気に襲われている。それでも彼女は、自分が部長になるのは当然だと信じて疑わなかった。
「そんな~、あたしなんかまだまだですよ」
口では謙遜を装いながら、心の奥では勝利を確信していた。
だが結果は期待に反し、二年後輩の堀部理絵が部長に抜擢された。堀部は実直で、部下思いの性格が評価されたのだ。もちろん、熊本のような裏取引など一切していない。
その日から、熊本は一層陰険になった。
堀部から「熊本さん」と呼ばれるだけで、顔を引きつらせ、悔しさを隠せない。怒りの矛先は、無力な部下たちへと向けられた。
熊本のいじめ
• オフィスの奥に追いやり、両手に水の入ったバケツを持たせる。
「一日中、立ってなさい」
部下は腕を震わせながら、誰にも助けを求められずに耐えるしかない。
• トイレに行くことを禁じる。
生理的な欲求すら押さえつけられ、屈辱と恐怖が積み重なる。
• 自分の机の前で正座を強要する。
「そこから動くんじゃない」
得意先から電話が来ても、熊本は「休日です」と取り次ぎを拒み、部下を無能に見せかける。
こうした日々のパワハラは、社内にじわじわと広がり、給湯室の噂話を現実の恐怖へと変えていった。
熊本の笑みは冷たく、部下たちの心を削り取る刃のように鋭かった。
*
池袋のカラオケ館。
自称IT企業の社長との密会。
読者は疑問に思うかもしれない――カラオケ館の個室には監視カメラが取り付けられている。そんな場所で男女が事に及べば、すべて丸見えではないか、と。
その男は1956年生まれ。髪は薄くなり、白髪を嫌って真っ黒に染めている。見栄を張ることには惜しみなく金を使うが、肝心な場面では徹底的にケチだった。ラブホテルを使うこともなく、カラオケの個室で欲を満たす男だった。
「SNSで憎い相手を始末してくれる――牛久片倉屋っていうのがあるんだ」
「そんなものがあるんですか?」
熊本の心の中で声が響く。
本当ならいいわね。あたしが部長になるチャンスだ。
*
休日、熊本は茨城県牛久市へ向かった。
郊外の風景はどこか寂しく、冬枯れの田畑が広がり、古びた家々が点在している。
目的地は「牛久片倉屋」と呼ばれる一軒家。
外壁は煤け、玄関の戸は歪み、まるで廃屋のようだった。
中に入ると、ソファーに片倉ちゃぷとがふんぞり返っていた。
使用人のこじりんが茶を運んでくる。だが茶碗は欠けており、熊本は口をつける気になれない。しかも、なぜか体が痒くなってきた。
「高いよ」
片倉が低い声で言う。
「お払いします。足りないのなら……体で払います」
眼鏡の奥で片倉の目が光り、口元がニンマリと歪む。
「三百万だ」
熊本は即答した。
「払います」
「プラス、あんたの体もだ」
熊本にとって、枕営業は日常だった。
一年365日のうち、300日はそうして過ごしている。片倉が一人増えたところで、何も変わらない。
熊本は承諾し、牛久の空気を背にして帰路についた。
第二章:牛久片倉屋の悪辣な手段
ある晩のこと。
堀部がひとり暮らしのマンションに帰ると、ポストから封筒が雪崩のようにこぼれ落ちた。ポストはパンパンに詰まり、これ以上入らないほど膨れ上がっている。拾い上げてみると、新築マンションのチラシ、墓地の案内、大人のおもちゃの広告資料――常軌を逸した投げ込みだった。
「何よ、これ……」
不快な気分を抱えたまま部屋でくつろいでいると、宅配便が届いた。差出人には見覚えがない。箱からは妙な匂いが漂う。恐る恐る開けてみると、中には人糞が詰め込まれていた。
この日を境に、牛久片倉屋の攻撃はエスカレートしていった。
SNSには堀部の顔写真と住所が晒され、過去の生活まで暴かれる。
「大学卒業後、就職できずラウンジ嬢をしながら生活保護を受けていた。生活保護詐欺の疑いがある」――そんな根拠のない中傷が拡散される。
さらに、
• 「一年に五人は愛人がいる」
• 「性欲魔の堀部は乞食とも性交している」
といった悪意ある投稿が広がり、公園で撮られた不鮮明な写真まで添えられていた。顔は判別できないにもかかわらず、堀部のものだと断定されていた。
牛久片倉屋は堀部の顔写真と姓、住所を晒し、わずか三十分後には名と番地まで公開した。
堀部の精神は急速に追い詰められていった。
駅から自宅までの道には「金を返せ」と書かれたビラが貼られ、QRコードを読み込めば堀部の性交動画が見られる――と虚偽の情報が記されていた。実際は風俗店の宣伝に過ぎない。
さらに、黒いダウンジャケットに黒のジーンズ、帽子、サングラス、マスクで顔を隠した不審者が十人ほど、堀部のマンション周辺を徘徊するようになった。近隣住民は恐怖に震えたが、彼らは片倉屋の使用人・こじりんが雇ったアルバイトだった。
堀部は食事も喉を通らず、夜は眠れず、会社も休みがちになった。
警察に届けを出しても、「殺されれば捜査します」という冷たい言葉を返されるだけだった。
そしてある日――。
堀部はマンションの九階から転落した。警察は事故と判断し、捜査は打ち切られた。だが実際は、精神を病んだ末の自殺だった。
*
堀部の死を知った熊本は、内心「やるじゃない」とほくそ笑んだ。だが表面上は悲しみを装い、同僚の前では涙ぐむ素振りすら見せた。
しかし、熊本の予想外の事態が待っていた。
堀部が死んだことで、部長職はしばらく空席とされたのだ。
熊本は大いに悔しがった。だが心の奥では、堀部さえいなければ、枕営業で部長職を自分のものにできると確信していた。
第三章:社獣ハンター出動
東京のとあるビル。
夜の帳が下り、外界から切り離されたような静けさが漂う。社獣ハンターは秘密の組織であり、その拠点は常に移動している。今日もまた、別のビルの一室が彼らの臨時事務所となっていた。
エレベーターの扉が開くと、翁の面をつけた男が姿を現した。
ブタッキー――依頼人である彼がここに来たということは、社獣ハンターに新たな任務が下された証だった。
事務所の壁には、堀部と熊本の写真が映し出されている。
青白い光に照らされたその顔は、まるで罪状を突きつけられた被告のように浮かび上がっていた。
メンバーの一人、青島美香が口を開く。
「この熊本って女……顔つきからして“悪だよ”って叫んでるみたいね」
別のメンバーが応じる。
「単なる自殺事件じゃない。裏にはSNSでデマを拡散し、人を死に追いやる組織の影がある。牛久片倉屋だ」
次の瞬間、スクリーンには片倉とこじりんの写真が切り替わった。
その不気味な笑みと冷たい眼差しに、室内の空気がさらに張り詰める。
「牛久片倉屋については、これから徹底的に調べてもらう」
リーダーの声が低く響く。
伊田裕美が椅子から身を乗り出し、唇を吊り上げた。
「悪そうなやつほど、燃えるわね。狩り甲斐があるってものよ」
青島が頷き、机の上に散らばる資料を手早くまとめる。
「熊本の背後に片倉屋がいるなら、これはただの社内権力争いじゃない。社会そのものを蝕む“社獣”の仕業よ」
事務所の窓から見える東京の夜景は、無数の光が瞬いていた。だがその光の下で、人知れず悪が蠢いている。
社獣ハンターの使命は、その影を狩り、闇を断ち切ることだった。
第四章:新部長と暗躍の影
月曜日の朝礼。
全社員が立ち並び、取締役の声に耳を傾けていた。壇上の横には一人の女性が控えている。
「堀部さんがあのような最後を迎え、誠に悲しいことではあります。しかし会社の業務を停滞させるわけにはいきません。本日より、企画推進部の田村誠子さんを当営業部の部長に任命いたします」
場内にざわめきが走る。田村誠子が一歩前に出て、落ち着いた声で挨拶を述べた。
その瞬間、熊本の奥歯がきしむ。
「部長には、あたしがなるはずだったのに……」
だが熊本は思い違いをしていた。確かに一部の取締役には枕営業で取り入っていたが、反感を持つ者も多い。全員を掌握できるはずもなく、実際には三分の二が“アンチ熊本”だったのだ。
*
同じ頃、暗号屋がこの日の朝礼をハッキングしていた。
スクリーン越しに映し出される田村の姿を見ながら、低い声が交わされる。
「今度は田村さんが狙われるな」
「守らなくてはならない」
その場にいた者たちの意思は、ひとつに固まった。
*
その日の夕刻。
熊本は定時で退社すると、池袋の安ホテルへと足を運んだ。
安上がりのラブホテルの一室。薄暗い照明の下、煙草の煙が漂う。
「片倉さん、また頼みがあるの」
「なんだ」
片倉が煙を吐きながら問い返す。
熊本は唇を歪めて答えた。
「一人、始末してほしい女がいるのよ。田村誠子――新しい部長よ。堀部をやったみたいにお願いね。ただし短縮版で。歳をとったせいか、せっかちになったの。それに、一日も早く部長になりたいしね」
片倉は目を細め、笑みを浮かべた。
「よく金があるな」
「いくらでも払うわ。あたしの体も、いくらでも使っていいから」
そのやり取り――そしてその後の行為までも、すべて録画されていた。
第五章:田村誠子の苦悩
堀部が受けたのと同じ手口で、田村誠子への攻撃が始まった。
まずは大量のパンフレットの送付。新築マンション、墓地、怪しい健康食品、そして卑猥な広告まで、ポストは毎日溢れ返り、開けるたびに嫌悪感が押し寄せる。
次に宅急便。差出人不明の荷物を開けると、中には人糞が詰め込まれていた。悪意の臭気が部屋中に広がり、田村は吐き気をこらえながら処理するしかなかった。
さらにSNSでは、彼女の顔写真、名前、住所が晒され、根拠のない誹謗中傷が拡散されていった。
「生活保護詐欺の疑い」「愛人を複数抱えている」――事実無根の言葉が、ネットの海で増殖していく。
田村は心身ともに疲弊していったが、それでも堀部よりは強靭だった。
「負けるわけにはいかない」
そう自らに言い聞かせ、会社には毎日出勤を続けていた。
*
ある日、田村が家を留守にしている間、街中にビラが貼られた。
「田村誠子の性交動画が見られる」――QRコード付きの虚偽広告。実際は風俗店の宣伝に過ぎないが、通行人の目には彼女の名が刻まれてしまう。
その夜。
いつものように三軒茶屋駅を降りた田村は、改札を抜けた瞬間、黒い影に取り囲まれた。帽子、サングラス、マスクで顔を隠し、黒のダウンジャケットに黒ジーンズを穿いた十人の男たち。無言の圧力が田村を包み込み、逃げ場はなかった。
「……!」
田村の心臓が跳ねる。恐怖で足がすくみ、息が詰まる。
その時――。
駅前の雑踏を切り裂くように、二人の影が現れた。
伊田裕美とドラゴン。
二人とも空手の達人であり、社獣ハンターの精鋭だった。
裕美は一瞬で間合いを詰め、飛燕回し蹴りを放つ。鋭い蹴りが男の顎を捉え、黒い影が地面に崩れ落ちた。
続けざまにドラゴンが正拳突きを繰り出す。拳が鳩尾にめり込み、別の男が呻き声を上げて倒れる。
次々と黒い影が打ち負かされ、取り囲んでいた輪が崩れていく。
電柱の影に潜んでいたこじりんは、事態の急変に気づき、慌てて逃げ出そうとした。だがその腕を、背後から鋭く掴む者がいた。
いづみ――社獣ハンターのもう一人の仲間だ。
「逃がすと思った?」
冷たい声とともに、こじりんは完全に拘束された。
*
田村はその場に立ち尽くし、震える肩を押さえながら、ようやく息を整えた。
「……助かった……」
闇の中で蠢く悪意は、確かに彼女を追い詰めていた。だが、社獣ハンターの存在が、その闇を切り裂いたのだった。
第六章:断崖の幻影
片倉が目を覚ますと、頭には重たい3Dゴーグルが装着されていた。
両腕は背中で固く縛られ、天井から吊るされている。隣にはこじりんも同じように吊るされ、身動きが取れない。
突如、空間に伊田裕美の声が響いた。
「君たちは断崖絶壁の上に吊るされている。君たちを支えているロープには傷がつけられていて、重みで徐々に切れかかっている。切れれば、30メートル下の渓谷に真っ逆さまだ。助かりたければ、今までしてきたことを自白しなさい」
ゴーグルの映像には、足元に広がる深い渓谷が映し出されていた。風が吹き抜ける音までリアルに再現され、二人の心臓を締め付ける。ロープは軋み、繊維が裂ける音が耳に届く。
「こんなのインチキだ!こじりん、何も話すな!」
片倉が怒鳴る、束ねられたロープは徐々に切れかかり、緊張が極限に達する。
耐えきれなくなったこじりんが叫んだ。
「俺は片倉に命令されてやったんだ!逆らえば殺すって脅されたんだ!」
片倉が憤慨して身をよじると、さらにロープが切れかかる。
「嘘をつくな!」
伊田の声が鋭く響く。
「今までやったことを、一つ残らず話せ!」
不安に駆られた片倉は、ついに耐えきれずにわめき出した。
「全部、熊本紀子が悪いんだ!俺は依頼を受けただけだ!」
その瞬間、ロープが完全に切れ、二人は地面へと落下した。
衝撃でゴーグルがずれ、片倉が片目で覗くと――そこに広がっていた渓谷は幻影だった。実際にはわずか30センチの高さから落ちただけで、場所は牛久片倉屋の東京事務所の内部だった。
*
暗号屋は即座にこの映像をSNSに拡散した。
瞬く間に反応が寄せられる。
• 「これ、リアル脱出ゲームかと思ったらガチの自白劇じゃん…怖すぎる」
• 「熊本紀子の名前が出たぞ。社内の闇、ついに暴かれたか」
• 「片倉とこじりん、完全に追い詰められてる。ロープの演出がえげつない」
• 「30メートルの渓谷が幻影だったってオチ、でも心臓止まるわ」
• 「これ、映画化できるレベル。SNSで拡散されたらもう逃げられないな」
映像は瞬く間に拡散し、社内の闇は世間の光にさらされていった。
第七章:崩壊の瞬間
大窪商事の社内。
熊本は田村部長の前にスマホを突きつけた。
「昨日、三軒茶屋の駅で“田村誠子さん、お金を返してください”という貼り紙がありましてね。QRコードを読み込んだら、こんな動画に行き着いたんですよ」
熊本が再生ボタンを押す。
画面を覗き込む田村の眉がひそめられる。
「これは……何?」
熊本は口元に笑みを浮かべた。
「ふふふ、あたしにそれを言わせるんですか?」
田村は冷ややかに返す。
「あなたの自慢なの?」
「えっ……?」
慌ててスマホを見直した熊本の顔が凍りついた。
そこに映し出されていたのは――熊本自身と片倉の淫らな映像だった。
「そんな……馬鹿な……」
その瞬間、社内放送が鳴り響いた。
スピーカーから流れてきたのは、片倉とこじりんの自白の声。
「嘘よ!嘘!」
熊本は叫んだが、誰も耳を貸さない。
SNSではすでに熊本の顔と動画が拡散されていた。
社内の視線が一斉に突き刺さり、熊本は力なくその場に座り込んだ。
エピローグ
大窪商事のビルを見渡せるスターバックス。
窓際の席で、裕美といづみがラテを片手に微笑み合っていた。
「これで牛久片倉屋も、熊本紀子もおしまいね」
「同じ手にひっかかるなんて、浅はかだわ」
外には雲ひとつない日本晴れ。
青空の下、長き闇の物語は終わりを告げた。
(完)
今回の物語では、社獣ハンターたちの戦い方をこれまでとは異なる形で描いてみました。断崖絶壁の幻影やSNS拡散の仕掛けなど、新しい演出を取り入れることで、従来の展開に陥りがちなマンネリを避ける試みをしています。
読者の皆さまにとって、この物語が単なる娯楽にとどまらず、現代社会に潜む危うさを考えるきっかけとなれば幸いです。社獣ハンターの物語はまだ続きます。次なる戦いにどう挑むのか、ぜひ期待していただければと思います。




