これは私の夢物語 〜星夢〜
猫様のしもべです。
今回は短めにまとめてみました。
深く考えず、気楽に読んでください。
「なぜ、僕なんかと一緒にいてくれるのですか?」
城の一室で、そんな言葉が、小さくこだました。
そんな言葉を聞き、フリーズする女の子。
シル・ルナスティアは神の子である。
淡い碧に輝く星、ルナスティアを統治する、神の子。
青みがかった白銀の髪に、薄い青から白へ変わるグラデーションの瞳。16歳だ。
そんなシルが、今こうして城にいる理由は、3年前にある。
◇
3年前の7月7日のことであった。
シルは森の中の、小さな家で暮らしていた。
人と関わることもなく、そばにいるのは神の獣。
青く燃える翼に、大きな体。
冷たい眼差しと、力強い瞳を持つ。
月の神獣、不死鳥だ。
神の子であるシルと、神の獣ベンヌ。
そんな2人を、お偉いさんが見過ごすわけなかった。
「・・・は?」
「そ、そういうことです・・・」
その日、シル達の家を訪れた者がいた。
その名もフォルス・シャール・セレジェイラ。
ここ、セレジェイラ王国の、王子である。
肩まで伸びた金髪に、煌めく碧眼。
けれど細くて小さな体。まだ12歳だった。
彼はシルに、あるお願いをしに来た。
それは、城に来て欲しい。ベンヌも共に。
とのこと。
「城に来いってこと?ボクに?」
「ひぇっ」
お願いしに来た割には、震えているフォルス。
シルは思わず、つぶやいた。
「犬だ・・・」
「ふえ?」
心から思った。
大人しそうな姿に対し、気の強い性格。
そんなシルだが、実はちょっとしたショタコン。
ショタが好きなのだ。無自覚にも。
そして、目の前には王子でありながら、ビクビクする、まるで子犬のような男の子。
犬の耳と鼻と尻尾の幻覚が見えるほど、あどけない。
「うーん。ベンヌ、行くでもよい?」
「なんでもいい。勝手にしろ」
ぶっきらぼうな回答をしているのが、ベンヌ。
昔っからずっとこの調子。
シルはフォルスに言う。
「いいよ、行ってあげる。でも待遇によっては、君を残して城を焼くからね」
「は、はい!ありがとうございますっ!」
尻尾をぶんぶん振っているように、見えた。
「君を残して」の部分は聞こえなかったようだ。
そんなフォルスであったからこそ、シルは了承した。
◇
そうしてシルは今、城の一室、シル専用の部屋にいるのである。
丁寧に整えられた、青基調の部屋。
大きなベッドと、机やソファなど。
今はもう外が暗くなっている。
フォルスは昼間、学校に行っているので、夜しか2人で話す時間がない。
シルはソファに座り、返答をする。
目の前には、あの子犬。
怯えながら、聞いている。
「どういうこと?君が来て欲しいって言ったからここにいるんじゃん」
「そ、それはそうですが、なぜ僕といてくれるのかと思いました・・・。その、最近ロストルム家の者とよく話しておられるようだったので・・・」
「ああ、それね・・・」
シルは優雅にお茶を飲む。
最高級の待遇を受け、それなりに満足している。
ちなみにベンヌはデカすぎるため、別の場所。
そして最近シルは、ロストルム公爵家の嫡男である、アウィス・ロストルムに話しかけられている。
成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗。
アウィスは多くの女の子の、憧れなのだ。
「神子様は、アウィス殿をどう思っておられるのですか?」
「よく喋る鳥だな、とは思ってる」
「え、と、とり・・・。神子様らしい・・・」
フォルスは出会った時から今まで、ずっとシルのことを「神子様」と呼ぶ。
一般的に見れば、神の子なんだから、そう呼ぶのが正しい。
だが、シルにとっては、あまり嬉しくない。
「ねぇ、いつになったらボクのことを、名前で呼んでくれるの?」
「えっ。そ、その・・・貴女様は神の子で、僕は普通の人です・・・。名前で呼ぶなんて、とても・・・」
「でも、ボクの婚約者でしょ?」
「そ、それは父上がお取り決めなさったことで、形式上というか・・・」
シルがフォルスの可愛さに釣られて、この城に来た時から、セレジェイラ王国は、星の中での地位が一気に上がった。
なんせ国王がフォルスとシルの婚約を取り決め、それをシルが受け入れたからだ。
神の子なんて存在が、常に城にいるとなれば、周りはこの国に口出しできなくなる。
弱小国だったセレジェイラも、今やトップになった。
シルは自分を利用されていることに、不満はない。
フォルスといられるなら、なんでもいい。
だがフォルスは、シルを利用することに、罪悪感を覚えているらしい。
「あのね、ボクはフォルスと一緒にいたいから、いるんだよ?あのよく喋る鳥なんか眼中にもない」
「で、でも、その鳥さんはすごい人じゃないですか」
「フォルスの方がすごいから」
「そ、そんなことないですっ・・・」
フォルスはとても気弱だ。
でもその分、頑張り屋で努力を惜しまない。
日々勉強に時間を費やし、通っている学園では、成績No.1。
そこもまた、シルがフォルスを好きなポイントだ。
謙遜するフォルスに、シルは好感を覚える。
そしてフォルスの顔を両手で包み込み、優しく囁く。
「フォルス、ボクは君と一緒にいたいんだ。ダメか?」
「ひゃっ!あ、あの、えっと・・・ダ、ダメじゃないです・・・」
フォルスは顔を真っ赤にして、視線を逸らす。
追い討ちをかけるように、シルは言う。
「フォルス、名前で呼んで?」
「で、でも・・・」
「さ、呼んでみて」
シルは視線で圧をかけながら、そう言った。
3年も経って、なお名前で呼ばないフォルス。
もうこれ以上、待つつもりはない。
フォルスは小さく、呟く。
「シ、シル・・・様・・・」
「・・・まぁ、今はこれで許してあげよう」
シルはフォルスの顔から手を離した。
そしてまた、座る。
フォルスは真っ赤になって、顔を手で覆った。
シルはまた、そんなフォルスを可愛いと思うのだ。
フォルスと2人の時間は、シルにとって、夢のよう。
「絶対に、逃がさないからね、フォルス」
これからゆっくり、堕とす予定だ。
シルとの会話を終え、部屋に戻る。
誰もいない廊下で、フォルスが、呟いた。
「やっとか。もっと僕に溺れるよう、仕向けなきゃ」
最後までお読みくださりありがとうございます。
拙い文章でしたが、書き上げられてよかったです。
お互いがお互いを捕えるという奇妙な関係です。
気に入っていただけたら、幸いです。
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〜追記〜
アウィスはフォルスに雇われ、シルに話しかけました。
シルがもっとフォルスを意識するには、別の男の存在も必要だと、アウィスに頼みました。
アウィスは躊躇いましたが、王子の頼みということなので引き受けます。
それからアウィスはフォルスの期待通りの活躍を見せました。
シルがフォルスのいいところに、もっと目が行くよう、いろんな話しをしました。
おかげで、今日こんなことになったわけです。
ちなみに、フォルスはベンヌも、懐柔済みです。
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アウィスは初め、悪役令息にしようと思っていました。
そのため、名前が、ちょっとアレになってます。
アウィスの名前の意味は、ラテン語で
アウィス=鳥 ロストルム=くちばし
になっています。
なんかごめんね。
これから長編に挑もうかと思っています。
応援よろしくお願いします。