19/288
恋の関数
本郷院隆は理系だった。そうはいっても数学者や物理学者というほど極端なものではない。普通にサラリーマンをしている。
既存の宗教には興味がなく、確率論で考えるので賭け事もしなければ宝くじを買うことも無い。
崇拝しているのは量子力学だ。この世界の全ては、波動関数で成り立っていると信じている。彼の中では全ての物理現象は、波動関数を元に観測時に事象が決定されているに過ぎないのだ。
しかしそんな彼が、ある時突然恋をした。それがどんな意味と合理性をもつ現象なのか分からず彼は戸惑う。己の意志とは違う部分で、感情が動くというのがどうにも納得が行かない。
そうしてその現象も、裏には関数が存在しているのだろうと考えた。本郷院隆が、その関数を分析する日々が始まった。




