PHASE-1 平和とその裏で
「はるー! 急がないと遅れるよー!」
「わかってる! ちょっと待って!」
少女――吉田玲奈と少年――八坂陽翔が陽翔の寮の部屋から出る。
ここは、国立魔術学園栃木校。
人々の魔力から生まれる、異型の怪物――魔獣を狩る、魔術師を育て、支援する学校だ。
そして、僕たちは、高等部一年生だ。
全寮制の国立で、日本に4校(札幌校、栃木校、京都校、大分校)あり、表向きは私立の宗教系学校とされている。
「おっはよう! ふたりとも」
「「おはようございます、先生」」
眼の前にいる金髪碧眼の男こそ、僕たちの担任の自称最強の魔術師、惣名晃だ。
なお、一応、最強な方の部類なのだが、最強なのは彼の持つ術式【流体操術】の方で、先生の階級は1級止まりである(僕たちより低い)。
「そうそう、ふたりとも任務だ」
先生が軽く言う。
「とある、廃墟を調査してきてほしい。今回は玲奈と相性がいいはずだ」
「わかりました」
「目撃情報によると、その魔獣は術式を使うらしい」
「だから、【改変術式】の使える私が適任なんですか」
「そういうこと。だから、今回は玲奈がメインで陽翔が補助でよろしく!」
「「はい!」」
「急ぎの任務だから、このまま行ってね! みんなには言ってあるから!」
***
――数十分後
「ここが目的地?」
意外な広さに思わず声が出る。
「はい。廃墟というより、廃虚群ですね」
監督官の佐々木さんが答える。
そこには、――