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お茶請けは七不思議 8

 この大学はとても広い事で有名ですよね。七不思議になる以前に見たら分かるくらいには、とても広い。何処からどこまでが大学の敷地なのか分からないくらい広い。そして、この大学の施設はとても充実している。もしも、世界がゾンビに埋め尽くされてしまっても、この大学のみで生活できるくらいには充実しています。そんな大学にも、実は無いと言われている施設があるんです。学校である筈なのに、無い施設があるんです。先輩は何処か分かりますか? 選択肢が多い? 確かにその通りですね。回りくどいのは先輩だけで十分ですし、もう答えを言っちゃいましょう。

 答えは図書室。本の置かれているイメージが強い、あの図書室です。図書室って勉強するにはうってつけじゃないですか。それで探す人がいたらしいんですけど見つからない。長くいる講師でも知らないらしいんです。誰も知らないのであれば、それは無いのと同じ。


 まあ、実際には図書室自体はあるんですよ。『本の無い図書室』ですが。


 本が無いのだから図書室と言えないんじゃないか? そんな疑問もありますが、その図書室にはありとあらゆる知識があるらしいんです。私も聞いた話です、本当かどうかは分かりません。

 その図書室ですが、大学の廊下を隅々まで探しても見つからない。しかし、図書室は存在しています。ただ見つけられないだけ。昔、その図書室の知識を求め、学生達が血眼となって探していたらしいんです。中には暴力沙汰にまで発展してしまったとか。困った講師達はその図書室の噂を秘密裏に処理したらしいです。

 これが七不思議、『本の無い図書室』です。



「僕の話した七不思議と違って整っている気がする」

「聞いて第一声がそれですか。出来れば感想とか内容に触れて欲しいのですが」

「感想も何も、話は整っているけど、内容はガバガバじゃないか。図書室自体は今だに存在するのに、噂だけ処理しても意味が無いじゃないか。しかも、広まった噂って秘密裏に処理出来ないと思うんだが」

「相変わらず揚げ足を取るのが上手ですね。まあ、こう言う噂って少しくらい隙があるもんですよ」


 花見技が言いたい事は分かるが、この噂の問題はそこではない。


「とりあえず、僕から言わせてもらいたい事は一つだ、花見技。ここの事だろ」


 得意気に七不思議を話していたが、この話は花見技の創作だ。


「おや、どうしてそう思ったんですか? 参考までに先輩の推理を聞きたいのですが」

「廊下から隅々まで探しても見つからないのは、別の部屋を経由してここに入るからだろ。ここは廊下からの入り口は無いからな。ただ、入り口はあるだろう。ほら、そこに証拠の扉があるだろ」

「先輩、図書室側からしたら、その扉は出口です。そして、経由する部屋から見たら出口です。つまり、入り口は無いのです」

「小説を書いているだけあって言葉遊びがうまいな。とても素敵な屁理屈を言っているとこ失礼するが、お前は馬鹿だ」


 ご機嫌に話す花見技。僕が推理してるのを楽しんでる様に見える。まあ、主人公になって欲しいと言っていたから喜んでるのかもしれない。推理なんて、主人公っぽい事をしたから。


「あと、ここの本棚に本が無いだろ。前から気になっていたが、元図書室だったら納得出来る」

「本が無いのは電子化の影響ですね。嵩張る本よりタブレット端末を使った方が少なく済みますし。ある意味タブレット端末は知識の倉庫ですから。とりあえず、御名答です、華篠先輩。ちょっと興がノってしまったって、途中で余計な文を足してしまいましたが、確かに私が作った話です。講師達の話は余計でしたね」

 

 まあ、わざとなんですが。あっさりと楽しそうに種明かしをする花見技。もう少し粘るかと思っていたんだが。


「こう言う噂を本当に信じちゃったら、変な広がり方をしてしまうので、むしろ気づいてもらった方が助かります」

「そう思うなら、先に創作だと言っておいてくれ。それはそうと、もし僕が七不思議を全部知っていたらどうするつもりだったんだ? その七不思議を披露する機会がなくなるだろ」

「甘いですね。七不思議だからと言って、全てが決まっている訳ではありません。言ってましたよね、有力候補だって。一つぐらい混ぜても、分からないじゃないですか」


 四天王が五人いてもいい理論みたいな事言い始めた。いや、猫の中にこっそり子虎を入れる感じか? まあ、七不思議を全て知っていたとしても、有力候補があると言われれば信じてしまう気がする。

 

「華篠先輩はこれから、噂を集めつつ推理をしていかないといけない。私の様な創作に騙されていては駄目だと思う訳です。私の理想とする主人公は」

「言っただろ、花見技。僕には主人公なんて大それた肩書は向いてないって」

「いいんですよ、華篠先輩はそのままで。私が主人公にしてあげます。だから、これから先輩はそのまま推理してください」


 意味深な事を言っているが、そこまで考えていないだろう。花見技はただ小説を書きたいだけ。その主人公が僕でなくてもいい。だけど、僕の事を主人公しようとしているのは、多少なりとも仲がいいからだと思う。その期待は少し重たいが、協力してあげたいと思っている。


「期待には答えられそうにないがさっきも言った通り、暇つぶし程度には付き合ってやる」


 嬉しいと思う本音を語らず、照れ隠しに余計な言葉を付け加えて。それでも、信頼してくれている後輩には応えたいと思う。

 満足そうに笑う花見技を見ながら、噂を探すところから始めないといけないのを思い出し、僕はため息を漏らした。

ここで一旦完結です。続きは未定です。


この物語は、化物◯、流行◯神、四十八(◯)を足した後にニで割ったイメージで書きました。

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