お茶請けは七不思議 7
「実は最後の七不思議、僕知らないんだ」
「がっかりだ! あんなに御膳立てしておいて知らないとかがっかりだ! 何でこの人が先輩なんだ! 引き伸ばさずにすぐ話せば軽傷だったのに、自分で傷口を広げてるし! こんな事なら帰ってくれていた方がよかった! なんでそのまま帰ってくれなかったんですか、先輩! いえ、もう帰っていいですよ」
「いくらなんでも言い過ぎじゃあないですかね、花見技さん。いや、僕も悪いとは思っているんだ。でも、知らないものは知らないし、花見技さんならわかってくれますよね。そもそも、七不思議を六つ知っているだけでもすごい事だと思うんだけど、その辺どう思う?」
「なら見栄を張らずに先に言ってください! この人の後輩をやっている事自体が恥だ! こうなったら華篠先輩を留年させて同じ学年にさせてやる!」
「大学を辞めさせようとしないのは優しさかもしれないが、やろうとしている事は普通にえげつないな。学費もただじゃないんだぞ?」
そんなキャラ崩壊を起こした茶番は、そろそろ終わらせることにする。多分だけど花見技は途中で気づいてたと思う。僕が花見技に対して配慮をすると思ってないだろうから、その辺りで勘づいているはずだ。それにぼくが説明した七不思議は後半になるほど、内容が曖昧になっている。この情報の薄さは、あまり調べられてない証拠。最後の七不思議がない可能性も考えていたと思う。
まあ、後半になるほど薄くなっていく理由は、そもそも七不思議を知っている人が少ないため、情報が曖昧になっている事が大きい。何だったら、後半二つは七不思議ですらないかもしれない。だって、その話を言っている人が、一人の先生のみだから。白無の噂集めに付き合って、先生から教えてもらったから知っているだけで、本来なら僕は知りもしない噂だったはずなのだから。
「ともかく、知らない事は教えられないし聞かれても答えられない。もし、知りたいなら自分で調べたらいい。ただ、僕も気になって調べたが、全然噂になってないから見つけるのは難しいと思うぞ。悪いが僕から言えるのはここまでだ」
「途中から悪ノリしてたからあれですけど、先輩はもっと早めに言った方がいいですよ。ずるずる言うのを先延ばしにすると、話がこじれるかもしれませんから。後々、大変なことになりますよ」
「今後は気をつけるよ。それよりも、七不思議はどうする?調べても分からなかったし、情報が途切れた状態だ。探すにしても手がかりがないぞ」
僕も聞いた話ばかりだからどうも言えないが、知っている人がいないんじゃどうしようもない。
「それならご安心ください。先輩に向かってあれだけ責める様な事を言っておいてなんですが、実は最後の七不思議、その有力候補を知っているんです。と言うより、私が二つ目に知ったのがこの噂だったので、全く出てこないのが不思議だったのですけど」
「確かにそれなら安心だ。最後の七不思議を僕に聞く前にその事を言ってくれれば、もっと安心出来たんだけど、それについてどう思う? 僕としては、膝と手のひら、額を地面につけて一言貰えるといいんじゃないかと思っているんだ」
「私は気にしてませんから、やらなくてもいいと思います。華篠先輩がしたいのであれば止めませんが」
いつの間にか僕が土下座する流れになっている。このまま話を伸ばしても進む未来が見えないので、続きを促す。
「それで? 無知な僕に最後の七不思議を教えてくれないか。友達の付き合いで探してみたが、全然見つからなかったその噂、どんなのか気になるじゃないか」
「まあ、見つからないのもは無理ないかもしれませんね。この七不思議は“無い”ことが関係しているのですから」
「先輩、こんな噂を知っていますか?」