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お茶請けは七不思議 6

「さて、いい時間になってきたしそろそろ帰ろう。考察なら家でもできるだろ」

「え? 華篠先輩、待ってくださいよ。そこまで時間も経ってないし、七不思議なのに六しか話してくれてないじゃないですか。確かに、最後の不思議を話すとまずい事になるみたいな話はありますが、私としては途中で話を中断されて、生殺しもいいとこですよ」


 鞄を持ち、帰ろうと準備をしていたのだが、花見技に呼び止められてしまった。まあ、僕も『六』しかないのを指摘されるとは思っていた。が、最後の話をするには一つ問題があった。


「花見技よ。僕も話してやりたいのはやまやまだが、問題があってな。この問題は、僕としても話す事を躊躇うレベルなんだ。だから、お前は何も言わずに僕を送り出してくれ」

「いや、納得いきませんよ。何ですか、送り出してくれって。華篠先輩は絶対逃げる気だったでしょ。なんか事情がある風を装って、話をはぐらかそうとしてるだけですよね? 絶対に逃しませんからね」

「おいおい、お前の先輩はそんな薄情なやつだと思っているのか? お前のためを思って言ってやっているんだ。あんまり先輩を困らせないでくれ」


 出来れば聞かずにこのまま帰らせてくれれば話が丸く収まるのだが、理不尽後輩には僕の言葉は届かなかった。


「華篠先輩、ここまでの話でどれだけホラーを台無しのしてきたのか分かってますか。その責任を取って、ちゃんと最後まで話すべきです。それとも何ですか? 最後の話が本当で、話すととてもまずいのですか? それならそれで聞いてみたいです」

「訂正しておくけど、僕が台無しにした訳じゃないぞ。元々の話が残念だっただけだ。あと、そのまずい事になる理論で言うと僕も危ないだろ。お前の知的好奇心で僕を巻き込むな」

「何をおっしゃいますか。先輩と私、一連托生なのですから、何も気にせず話してください。あなたの後輩は、華篠先輩が思っているよりも強かですから」

「言葉だけ聞くと胸が熱くなる様なセリフを言ってる所悪いが、自分の好奇心を抑えられてないだけだからな。何でいい話風のセリフをそんなにパッと思いつくんだ。絶対、僕よりも口が回るだろ」


 小説家を目指しているだけあってよく口が回る。僕の事を『口八丁の詐欺師』とか言っていたが、花見技の方が合っているんじゃないか。確かに、まずい事になった場合、一連托生なのは間違いないのだが、そもそも話さなければいいだけの話。


「このまま帰れればよかったんだけど仕方ない。僕としてもこの事を話したくなかったよ、きっと花見技はがっかりするのが分かりきっているんだから。何も聞かずに帰してくれた方がまだいい感じの終わりじゃないか? 最後の七不思議を知ってはならない、それでホラーとして完結でもいいだろ?」

「先輩にしては珍しく弱気ですね、確かにそう言うのもありですけど参考にしたいので教えてもらいたいです。どうせだったら最後までがっかりたっぷりで終わらせるのが語り部兼主人公である先輩の役目ではないのですか。先輩にがっかりする事はありませんから、どうぞ最後までお話し下さい」


 そう言って話すように促す花見技。出来れば話したくはなかったんだが、ここまで言われれば話さなければいけないだろう。


「そこまで言われたら仕方ないが、本当に僕にがっかりしないか? 今まで通り尊敬していてくれるか?」

「何を心配していますか、華篠先輩。私が今まで嘘を言った事がありますか? その様な薄情を言う後輩ではないのは先輩もご存知でしょ? 先輩は安心して話してくれれば良いのです」


 色々舐めた態度をとられていたけど、どうやらちゃんと慕われていたらしい。胸が少し熱くなるのを感じながら、我が親愛なる後輩に言葉を向ける。

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