少女たちの5年間の話(後編)
「じゃあ、今度は私達が卒業して冒険者になった後の話だね」
総合学校時代の話が終わり、いよいよルゥリ達が卒業後の話に入る。
冒険者になって、どうやって1年で今の高ランクに上り詰めたのか、興味はある。
「ボク達は、総合学校を卒業後、故郷の【アローウィル】の街に戻って、そこの冒険者ギルドに登録して冒険者になったんだよ」
「故郷で冒険者を始めたのか」
「うん。 あたし達でパーティーを組んでね。 そこから【ホワイトリリー】という名前でデビューしたんだよ」
「始めたての時は王都のクラフトギルドから依頼された素材の採取や街近辺の魔物の討伐とかで、数か月間はやってきたの。 時には分担して多くの依頼をこなしたりしてね」
「大変だったんだな」
「ん……。 でも、おかげで、ルゥ達は数か月で初期のFランクからCランクまで上がった」
卒業直後の話は、カレン、エリス、セリナ、ルゥリが順番に話をしてくれた。
彼女達は、卒業後は故郷に戻り、そこにあった冒険者ギルドに属したようだ。
それからは、王都のクラフトギルドからの採取依頼や街付近に潜む魔物を狩って生計を立てていた。
6人いるため、パーティーを二つに分けて依頼をこなす日もあったようだ。
それもあってか、初期のFランクから始まって、数か月でCランクまでランクアップしたという。
流石だなぁ。
なおアルマ曰く、その間は孤児院の寝室を使わせてもらったらしい。
「そして、私達が急上昇したきっかけは、採取依頼をこなしている最中に、ある公爵家が乗った馬車が襲われていたのを目撃した事です」
「公爵家が?」
「視察に来たんだと思います。 アローウィルの街は件の公爵家が治める領地の一つですから。 護衛の騎士もいたのですが、不利な状況だったようで加勢しました」
「そこから、その家の公爵令嬢と仲良くなって、公爵家からの護衛依頼も受けるようになったの」
フィーネが言うには、Cランクに上がった後、採取依頼の最中に視察に来た公爵家が乗る馬車が何者かに襲撃されているのを目撃し、加勢した事が分岐点となったようだ。
護衛の騎士も何人かいたのだが、あまりにも敵の数が多くて不利だったようで、見ちゃいられなかったのだろう。
これがきっかけで公爵家の令嬢と仲良くなり、公爵家から冒険者ギルドを通じて護衛依頼を受ける事となったようだ。
「ちなみに襲撃側の奴らは、スタンピードで滅びたゲズランドの生き残りだったみたい」
「錬金術師や聖女を殺して回っているらしく、公爵令嬢は聖女の力を持ってましたからね」
「あの滅びた国の生き残りがか……」
そして、アルマは襲撃側には、錬金術師の置き去りやなぶり殺しなどの事件を起こし、スタンピードで滅びたゲズランド王国の生き残りだったと告げる。
相変わらず、その生き残りたちは錬金術師や聖女を殺して回っているらしく、彼女達が助けた公爵令嬢も聖女の力を持っていたと言う。
「あの国、当時の国王やその国民たちはこぞって背教者だったそうですね」
「ああ、向こうに引きこもってる時にその話で持ち切りだったな」
「錬金術師や聖女は、女神様の加護をふんだんに受けた存在ですからね。 あの国は女神様を恨んでたようで……」
「何も言えないな……」
今になって少しずつ分かってくるゲズランドの情報だが、どうも女神様を恨んでいる節があったようだ。
だから、当時の国王が女神の加護をふんだんに受けた錬金術師や聖女を皆殺しにするという政策をとっていたのだろう。
流石に国自体が背教者じゃ救いようがないけどね。
「話を戻しますね。 私達は何度かの護衛依頼とスタンピードの解決も行ったおかげでホワイトリリーは1年でAAランクになったんですよ」
「スタンピードも解決したのか!?」
「丁度別の視察に向かった町で、それが発生しまして。 主にルゥちゃんの魔法で一網打尽になったのですが」
「マジですごいな、ルゥは……」
「ぶいっ!」
そして、公爵家の護衛依頼とある視察に来た町でのスタンピードの解決をした事で、ホワイトリリーは1年でAAランクになったという。
特にスタンピードは、ルゥの魔法数発で一網打尽にしたという……。
僕の膝に乗って、ドヤ顔をしながらピースをするルゥリ。
下手に怒らせたらいけない子になったのかも知れないな、ルゥリは。
「急なランクアップに驚いたけど、これで私達が優先的に錬金術師のスカウトを申請できるし、パーティーハウスも大きめのが建造できるからね」
「スカウトって、ランクで優先度が違うのか?」
「うん。 AA ランク以上を優先して面談するみたい。 下に行くほど優先度が落ちるかな」
「高ランクの冒険者ならある程度信頼はできるって事でしょうね。 冒険者同士でもトラブルはありますが、CかDランク以下が多いですし」
「だから、頑張ってそこまでランクを上げたって事か」
「そうですね。 兄様に早く会いたい一心で」
セリナとエリスが言うには、AAランクまで目指したのも、錬金術師のスカウトに関して最優先で面談が出来るかららしい。
スカウトに関して、ランクによる優先度があるのは初耳だった。
だから、この子達はそこまでして、僕に会いたがっていたという事だろう。
そして、パーティーハウスの件も含めて、そのために頑張っていたと思うと、目頭が熱くなる。
「ありがとう、みんな。 こんな僕でいいならよろしく頼むよ」
「ん!」
「「「「もちろん!」」」」
「こちらこそ、改めてよろしくお願いします」
僕はここまでの話を聞いたうえで、改めて彼女達のパーティー【ホワイトリリー】に入る事を受け入れた。
僕は錬金術師だから弱いが、それでも一緒に居たいという彼女達の思いを無下にはしたくないからね。
一通り話した後、少しの間みんなでひと眠りすることにした。
僕の隣にはルゥリとセリナがいたが、彼女達の温かさでぐっすりと眠れそうだ。
これからの生活に期待を寄せながら、僕は二人の温もりに包まれて眠りについた……。
明日は可能なら1話のみ更新しますが、休み公算が大きいです。
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