高ランク冒険者からのスカウト要請
「カイト・ファーレンスです」
「どうぞ、入っていいわよー」
「はい、失礼します」
マスタールームというギルド長がいる部屋の前まで来た僕は、ノックをしてから自分の名前を名乗る。
すると、ドアの奥から入るように促す声が聞こえたので、ドアを開けて一言断りをいれてから入る。
「仕事終わりの後に呼びだしてごめんなさいね」
「いえ、僕は大丈夫ですから」
僕の目の前には、綺麗な容姿の女性がいた。
この女性こそ、アーネスト王国のクラフトギルドのギルド長のクラリス・エルフィーナ。
錬金術師だけでなく、建築士や鍛冶師としての実力も高い事で、若くしてクラフトギルドのギルド長になったという。
また、錬金術師の総合アトリエに訪れては、僕達に声を掛けてくれたりもしている。
あの置き去り事件などでショックを受けたり、自信を喪失してたりしないかをギルド長自らカウンセリングをしているのだ。
僕は特に思う事はないが、他の錬金術師は冒険者と会う事すら怖がっている節があるようだ。
で、そんな人が僕を呼んだ理由を聞こうとしたが、真っ先にクラリス様が口を開いた。
「早速本題なんだけど、あるAAランクの冒険者パーティーがカイト君をスカウトしたいという要請がきたの」
「え!? 僕を!?」
可能性としては僅かに考えていたが、実際にそれを言われる事には予想しなかった。
しかもAAランクの冒険者パーティー。
世界を見て回っても数少ない高ランクの冒険者パーティーから僕へのスカウト要請だ。
驚かないわけがない。
「そのパーティーの名前は【ホワイトリリー】。 総合学校を上位で卒業した6人の少女が作ったパーティーでたった1年でAAランクにのし上がったって話ね」
これにはさらに僕も驚く。
たった1年でAAランクにのし上がるとか、そのパーティーはどんだけ高い実力の持ち主なんだよ。
しかも、女の子だけのパーティーと来た。
だけど、そこに僕が入るのは色々と不味いんじゃないだろうか?
なので、クラリス様に少し疑問を投げかけてみた。
「女の子だけのパーティーが、何故僕を?」
「王都の冒険者ギルドのギルド長曰く、君の顔写真を見てスカウトする事を決めたみたい。 向こうはカイト君のことを知ってるみたいよ」
「僕を知ってる?」
「うん。 王都の冒険者ギルドの長はそんな彼女達を見て大丈夫だろうと言う事で一次面接は合格して、さっきクラフトギルドでの二次面接を終えたの」
ホワイトリリーのメンバーが僕を知っていると聞いて、少し疑念が発生した。
僕は中規模の町に構えるファーレンス孤児院で幼いころから育った身だ。
そんな中、確かに少し離れた年下の幼い女の子6人の面倒を見たり遊んであげたりしていた。
総合学校に入学してからも、長期休暇には孤児院を訪れたりできたが、クラフトギルドに入ってからは仕送りに紛れた手紙を送るなどで何とか生存報告はしたけど……。
あの子達がどうなっているかとかは、あの置き去り事件の後で不本意にクラフトギルドに籠るようになってからは全く知らない状態なのだ。
アーネスト国王が、連絡する際にその可否を厳しく審査するように命じられており、殆どが【否】判定にされているからだ。
一応、クラリス様の提案で仕送りする際にこっそりと手紙を仕込んでおくことを薦めてくれたので、半年に一度はその手段を講じてはいるが……。
長くなったが、僕が知っているのは、孤児院で面倒を見たあの幼い女の子なのだ。
だから、疑念が生じたわけだ。
「私の方でも面談を行い、大丈夫と判定したの。 後はカイト君次第だからね。 はい、これがホワイトリリーのメンバー表よ」
そんな事を考えていた僕に、クラリス様はホワイトリリーのメンバーの名前と顔写真付きの紙を渡してきた。
「え……!?」
渡されたメンバー表を見て、僕は固まった。
それもそのはず。
何とホワイトリリーのメンバーは、かつて孤児院で僕が面倒を見ていたあの6人の少女たちだったのだ。
名前や顔写真をを何度も見返してみたが、間違いはなかった。
メンバー構成は、魔法使いとなっているルゥリ、防御タンカーとして活躍している騎士のカレン。
そして、パーティーのリーダーで剣士のセリナに、回復術士のフィーネ。
さらには斥侯ポジションのエリスに、魔法戦士のアルマ。
一部顔写真からより美少女に成長しているが、雰囲気から見てこの子達は、確かに僕が孤児院にいた頃に面倒を見ていた少女たちだ。
かなりの空白があってもなお、僕の事を忘れないでいてくれたのだろうか?
一目会いたい。
そういう感情が芽生えてくる。
「どうかな? 面談する?」
「はい。 彼女達に一目会いたいです」
「分かった。 じゃあ、会議室へ行きましょう。 そこで待たせているからね」
「はい」
彼女達に一目会いたい。
そうクラリス様に伝えると、すぐに会議室へと案内してくれた。
いつ振りかは忘れたが、あの子達との久しぶりの再会がすぐそこに迫っていた。
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