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Umbrella Love Story (仮)  作者: 治崎 龍也
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episode 00「プロローグ」

episode 00 「プロローグ」

雨。

唐突に訪れて、人に倦怠感や憂鬱感を味合わせるもの。

ほとんどの人は雨を嫌うけれど。

一部の人は雨を好きという人もいる。

私もその一人。私は雨が好きだ。あの人に会えるから。



雨。

ある程度予測はできるけれど、それでも嫌悪感を感じるもの。

ほとんどの人は雨を嫌う。もちろん僕も雨は嫌いだ。

会社に行くのも疲れるし、何をするにも気力が湧かない。

僕も雨を嫌いな人。そのはずだった。彼女と出会うまでは。


これは

僕が雨に出会う物語。

私が雨に出会う物語。





−カーンコーンカーンコーン−

「それでは本日の授業はここまでです。皆さん外は雨が降っているので下校の際は気をつけてくださいね」


その雨は唐突に降り出し、空を暗く染めていった。

「え〜最悪〜。」

「帰るのだるくない〜?」


雨か。ラッキー。

そんなこと思うのは多分この学校で私だけだろう。

私は池田 蓮華(いけだ れんか)

都内の女子校に通う雨が大好きな高校2年生。

私が雨を好きなのは誕生日が梅雨真っ只中の6月半ばだから。

小さい頃から私の誕生日はいつも雨で一度も晴れたことがない。

(雨の日にやることと言ったら、あれしかない!)

私は荷物もまとめて学校を飛び出した。



「はい、みんなお疲れ〜。定時だから全員帰れ帰れ〜。」

部長はいつも平社員の僕たちを定時に帰らせようとしてくれる。

さすが自称ホワイト企業だ。でも僕はいつも残っている。

「金子〜、お前今日も残るのか?残るなら鍵番任せていいか?」

「あ、はい。大丈夫です。やっておきます。ありがとうございます」

部長はいつも定時でみんなを帰らせた後、少し点検をしてから帰っている。その為、部長より帰るのが遅い僕が基本的に鍵番をしている。


「いつも悪いな。たまには彼女とでもハメ外せよ〜」

(気を遣ってもらってるんだろうけど...。僕彼女いないんだよな。)

「僕、彼女いません。すみません。」

少し申し訳なさそうに僕は部長に頭を下げる。


「あー、いや。謝ることじゃない。彼女は平林だったか?すまんすまん。」

「あ、いえいえ、全然大丈夫です。」

ちなみに、僕と平林さんは同期だけれど全く顔が似ていない。

どこで間違うのだろうか。やはり気遣いなのだろうか。


「とにかくだ。雨も降ってるし、帰る時は気をつけるんだぞ。」

「あ、はい。わかりました。お疲れ様です。」

「はい、お疲れ〜。」

部長の足取りが少し早かった。

(奥さんと子供3人もいるから家に帰るのが楽しんだろうな。)

僕は少しの皮肉と曖昧な痛みを自分にぶつけた。


僕は金子 有希(かねこ  ゆうき)。都内の大手企業の下請けの下請けの会社で働く末端限界平社員。26歳。給料は手取り25万。

他の26歳と比べると少し少ない気がするけれど、ミニマリストなので基本的にお金は使わない。その為、問題なく生活ができている。

(午後19時。そろそろ帰るか。)

僕は荷物をまとめ、鍵を閉めて、会社を後にした。



(雨の日にやること!それはたった一つ!!!!

傘をささずに雨を浴びること〜!!)

池田 蓮華は学校で不思議な子と言われている。

それは彼女に謎が多いからである。

容姿端麗、秀でた学力、しかし、それらを上回るアホ力。

彼女はつかみどころのないアホ。謎の美少女と言われている。


(はぁ〜!あめきもっちぃ〜!!!!)

たくさん雨を浴びた彼女は小屋があるバス停で雨宿りをしていた。

彼女が雨を浴びる理由にはいくつかあるようだが、その中の一つが心が洗われるから、らしい。やはり、この少女。謎である。

(私は小さな頃から、雨と生きてきた。雨が好き。雨と結婚したい。雨を旦那さんにしたい。雨と一生一緒がいい。)


池田蓮華。16歳。雨に恋をし雨に生涯を捧げたい女子高生。

雨と生まれ雨と生き雨と死ぬことを望む。ただの変人。




会社を出たら案の定雨が強くなった。僕は雨が嫌いだ。

しかし、どうやら人生を振り返ってみると僕は雨男らしい。

学校行事などは一度も晴れたことがない。

そのため周囲から少し嫌われた時期もあった。

それのせいもあってか、僕は雨が嫌いだし、好きになれずにいる。

どうしても倦怠感、憂鬱感を感じてしまう。


それはまるで、空から

「お前は不必要な人間だ。」

そう言われている気分だった。


少し歩いているとバス停に全身ずぶ濡れの女子高生がいた。

「あの、大丈夫ですか?風邪ひきますよ。」

思わず声をかけていた。


少し休んでいるとスーツ姿の

明らか平社員のようなに人に声をかけられた。

「あ、はい。大丈夫です。好きで浴びたので」

私はそれを言ったあと、変な人扱いされるだろうなと思った。


「え?はい?」

ん?僕の聞き間違いだろうか。こんな忌み嫌われる雨に?

自分から濡れる?自分から雨を浴びたということだろうか。

これは俗にいう変人というやつなのでは。


女子高生の思惑通り。平社員は女子高生を変人だと思った。

こうして限界末端平社員と変人女子高生はこの日初めて出会った。


「あ、それじゃあ、これをどうぞ。僕はもうすぐ家に着くので。」

そう言って彼は彼女に自分の使っていた傘を差し出した。

「いえいえ!お構いなく!好きで浴びてるので!!」

彼女はそれを受け取らなかったが、彼は続けてこう言った。

「そうかもしれませんが。風邪をひいては好きに浴びることもできなくなりますよ。なので、ぜひ使ってください。どうぞ。」


彼なりの優しさが彼女の胸を温めた。

暗い、寒い世界で、そこの一点だけはなぜだか温かく、そして明るく見えた。彼女はそう思った。

「じゃあ、ありがとうございます。」

彼女は傘を受け取って、そのまま、帰路についた。


平社員は傘を渡したあと迷っていた。それは一つ、嘘をついたからだ。

平社員の家はここからあと五キロはある。そこまでタクシーで帰るか

バスに乗るか。この雨の中傘もささず歩いて帰るか。

(どうしようか。家も別に近いわけではないし。どうやって帰ろうか。)

彼は数分悩んだが一つ影響されてしまったようだった。

「歩いて帰るか。」

彼は自分でもわかるほど無謀だったが、歩いて帰ることにした。

スーツの男が雨に濡れながら帰る姿はきっと側から見れば、

哀れだとか。きっとマイナスな事を思われるだろう。


けれど本人は違ったようだ。

(たまには、雨に濡れながら歩いて帰るのも悪くないな)


これは。

雨が嫌いな平社員と。

雨が大好きな女子高生が。

雨を知る物語。


episode 00

「プロローグ」Fin.

読者の皆様。治崎龍也と申します。

不定期にはなりますが、これから小説を連載していく者です。

すでにある作品は過去に書いた物です。そちらも連載を再開していきますのでよろしければそちらもお楽しみください。

それでは。今回はプロローグですので、これで失礼します。


ちざきりゅうやでした!!

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