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【書籍化・コミカライズ化】逆行した元悪役令嬢、性格の悪さは直さず処刑エンド回避します!  作者: 清澄 セイ


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アリスティーノの決意

チャイ王女は全身を捩らせ、金切声を上げる。髪を引っ張られても顔を爪で掻かれても、それでも私は彼女を離さない。


「何よ!聖女にでもなったつもりなの!?あんたなんか、自分勝手で中身最悪の悪役のくせに!」

「私は変わったの。もう前のアリスティーノじゃないわ」

「人間の本質なんて、そう簡単には変わらないわよ!」


確かに、彼女の言う通りかもしれない。時を逆行しても、私は何度も何度も間違えてきた。その度に絶望し諦め、いつか来る未来に怯えた。私は所詮私でしなかないのだと、そう思っていた。


実際、きっとそうなのだろう。己自身の、力だけでは。


「私はもう、ひとりじゃないの。だから絶対、争うことを諦めたりしないわ」


小さな子供に聞かせるように、私は穏やかな口調を崩さない。嫌がる彼女の背中を、ただ撫で続ける。


急にふと、チャイ王女の身体から力が抜けた。


「…私は、ひとりなの。だからもう、頑張れないわ」


彼女の哀しみを、私が量ることはできない。きっと胸の奥が焼き切れてしまいそうなほどに、辛いのだと思う。


もしかしたらもうとっくに、彼女の心の火種は燃え尽きてしまったのかもしれない。


もしも、ユリアン様が助かっていなければ。私はチャイ王女のことを憎み、殺したいと願っただろう。


自分が消えてしまうよりも、愛する人が自分の世界からいなくなることの方が、ずっとずっと辛いのだ。


「よかったわね、アリスティーノ。貴女の勝ちよ。私は処刑され、貴女は殿下と仲睦まじく幸せに暮らすのね。せいぜい酷い後遺症が残りますようにって、悪魔にでもお願いするわ」


私の肩に頭を預けたまま、彼女は嘲笑する。瞬間ふわりと、花のような甘い香りが鼻をくすぐった。


「上手くいこうといくまいと、貴女は最初から死ぬつもりだったんでしょう?」

「…さぁ、どうだかね」


瞳を閉じると、チャイ王女の鼓動が伝わってくる。このまま、彼女を死なせていいはずがない。


「チャイ王女」


目を開き、まっすぐに彼女を見つめた。


「もう一度、力を使ってください」


瞬間、彼女の身体がびくりと震える。まるで人外のものでも見るように、彼女の表情は驚愕の色に染まった。


「貴女、一体何を言って…」

「チャイ王女の持つ力で、もう一度時を戻すんです」


私の瞳には、一分(いちぶ)の揺らぎもなかった。

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