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第一話 厄災の兆し

 ???side


 夕刻のヴィント・シュティーレ村。その付近の草原。

 王都から遠く、過疎化が進むその場所が「大事件」の始まりの地となる。


(…っ!? 何だろう。全身が痛い…頭もくらくらする…。)


 全身ボロボロの状態で目が覚めた少女。


(ここは…どこだろう? なんで地面が黒いんだろう? …熱い。)


 異常事態であることは分かるのだが、上手く頭が回らない様子。そもそも全身に火傷を負っていて意識があることの方がおかしな状態であった。


(ここだけ地面が窪んでる…? 周りは草原みたい。燃えてるけど…。)


 辺り一帯が黒煙に包まれているため、周囲の様子を確かめることもままならない。


 まるで自分が隕石のように、ここに降って来たみたいだな…そんな感想を抱く。


 そして少女は気を失う。最後に…血の様に赤々と燃える夕陽を遠くに見ながら。






 ◇


「ズィーゲル・カタストローフェ」


 それは、とある大魔法使いが「厄災」を封印し、平和をもたらしたことを記念して改められた年号である。


 そして、今日はその記念日。それも100年目の節目にあたる。


 大陸中で盛大に祝われることになるのだが、その中でも特に活気に包まれている場所があった。


 そこは彼の大魔法使い、空鳴が創立した冒険者ギルド「ヴォルケン」である。





「我らがマスターに乾杯~!」


「「乾杯~!」」


 もう何度目の乾杯であるかなど、誰一人気にも留めずにジョッキをぶつけ合う。


 ……いや、一人居た。


 誰あろう、空鳴その人である。


「…てめえら、そろそろお開きにしようぜ?」


「「何言ってんですか、マスター!まだまだ、これからでしょう~?」」


 本人は最初の3回で早々に戦線離脱しているが、別に酒に弱いということはない。


「もう百年も前の話を掘り起こして酒の肴にしてんじゃねえよ、酔っ払い共。埋めとけ、埋めとけ。」


「「え~!!」」


(こんなバカ騒ぎがウチの酒場だけでなく、国中で行われていると考えただけで顔から火が出そうだぜ、全く。)


「じゃあ、酒飲みじゃない俺がマスターの武勇伝聞くよ!」


「ん?…フライハイトじゃねえか。こんなところでガキが遊んじゃいけねえぞ、と…なんでウェイターの制服着てんだ?


 そこには夫婦でギルドに所属しているメンバーの子供、フライハイトが居た。


 ちなみにその両親はこのバカ騒ぎには不参加。母親はギルド図書館の司書。その役職柄、図書室からほとんど出てこない。…いや、役職関係なくあいつは本ばかり読んでいるが。父親の方はギルド専属の鍛冶職人。こっちも鍛冶場に籠って…いや、どうかな。


 と、そんな風に関係ないことにまで思案を広げていると周りの事を忘れてしまう訳で。


「なあ~ぁ、マスター聞いてるか?もうガキじゃねえから!もう父さんや母さんと同じ正式なギルドメンバーだし!…楼蘭さんがさ、ウェイターの人手が足りてねぇってぼやいてたからさ。」


「お、おお~!それで手伝おうってか。偉いじゃねえか。…ん?そうか、お前もギルドに入れる歳になったのか。いや~時が経つのは早いねえ。」


 と、うっかりフライハイトの話を聞き流していたことを悟られない様、目を逸らす。


「たく、もういいよ。仕事に戻る。」


「よっ!働き者!」


「はいはい。」


 不貞腐れて戻っていくフライハイトの背中をバツが悪そうに見送り、ふと窓の外を見ると、丁度流れ星が落ちるところだった。


「おや、流れ星ですか。綺麗ですね、マスター?」


「…楼蘭か。今しがた、フライハイトの奴を怒らせちまってそんなロマンチックな気分じゃねえし、こうも騒がしくちゃ、雰囲気も何もあったもんじゃねえ。」


 いつも気がつくと傍に控えているメイド…もとい、サブマスターの楼蘭。不意に声をかけられるのにも慣れっこである。なにせ、こいつとはギルドが出来る前からの付き合い。いわゆる()()()というやつだ。


「おやおや困りましたね。でもあの子は両親の相手で色々鍛えられてますし心配いりません。ですから問題は騒音の方でしょう。では、騒音の元を息の根から止めてご覧にいれ…」


 メイド服のどこにそんなものを隠し持っていたのか…クナイを取り出し、今にも突撃しそうな気配を漂わせる楼蘭。


「待て待て待て!!」


 流石に祝いの席を血の海に変えるのはまずいと思い、とっさに羽交い絞めにして引き留める。


「…はい。冗談でございます。むしろこんなに情熱的に抱きしめて頂けるなんて…」


「なんだ、お前も酔ってるんじゃねえかよ」


「…はい。ですが明日以降の業務に支障をきたさない程度でございます。しかし他の者は…。これだけ飲んでしまっては、明日は皆使い物にならないでしょう。マスターに不利益をもたらすのであれば、粛清するのがサブマスターたる私の仕事です。」


「…だってよ。お前ら。粛清されねえうちに宿舎に戻っとけ。」


「「了解です。マスター!」」


 さっきまでとは打って変わり、素直に聞き入れるギルドメンバー達。


 楼蘭を怒らせるとヤバいことを、彼らは身をもって知っているのだ。




 ようやく静かになったギルドの中で外の流れ星を眺めながらゆっくりとした時間を楽しむ。


 その流れ星が、後に「厄災の兆し」と呼称されることはまだ知らずに。

見つけて下さりありがとうございます。

自作品「ぼっち亜人」のリメイク?練り直し?になります。

試行錯誤していくつもりですので、少しでも「面白いな」と感じたら

評価・コメント等残して頂きたい!続ける上でのモチベになるのでぜひ!

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