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【Black】Restart  作者: 漉凛/こりん
『月の乙女のティアラ』編
6/16

4

大きな声を久しぶりに出したからか息が苦しくなってその場にしゃがみ込んだ。



「咲!大丈夫?!」

「大丈夫かい?!咲!」



心配して目線を合わせた二人に笑いかけて言う。

「大丈、夫...はぁっ....はぁ。」




しばらくしゃがみ込んでいたらいくらか楽になったので立ち上がる。



「ごめんね、二人共。...もう大丈夫、だよ」



「咲、無茶しないでね。もし辛かったら僕がおばさんに連絡入れるからね。」



「すぐにでも私の主治医を呼ぶからね。いつでも言うんだよ、咲。」



私は二人に「ありがとう。」と一言だけ言った後、溜息をついて呆れた顔で見た。



「とりあえず誰が誰だかしっかりしないとね。」



「「え?もしかして咲じゃない?」」

二人声をそろえて驚いた顔をする。



なんだかんだ仲が良い二人は合わなくていいところで意見が合うようだ。



「私は、咲だよ。変わるわけないでしょ?」



二人はまた揃って安心した顔をした。

「さて、さっきも言ったんだけど、君は朔谷 聖麗で合ってる?」

なぜかようちゃんが勝手に話し出したがまあいいとしよう。



「そうだけども、君は....誰だい?」



「僕は、宮坂 翔馬だよ。覚えてない?高校の時、咲たちと同じ文芸部に入ってた...。」



「え?君、男だったの?私はてっきり女かと...」



「失礼な!僕は正真正銘、男です!」

ちょっとムッとした顔をしているイケメンはやっぱりようちゃんだったらしい。



「だって咲はようちゃんって呼んでるではないか!何々ちゃんって普通は女の子に使うだろう?」



「....ああ、それは、確かにそう、なんだけど.....。」

ようちゃんは私にヘルプを求めていた。



「実はね....」

私はようちゃんと出会った時の話をした。







遡ること私が幼稚園の時の話。

私の横の家に新しい人が引っ越してきた、それがようちゃんだった。



彼の家族が自己紹介するときに最初はお母さんの後ろに隠れてこちらを覗いていたのがようちゃんだった。

お母さんに促されて前に出てきたようちゃんは相当緊張していたのだろう。



「こ、こんにち、は。....えっと...ぼ、僕の名前は....し...よう....ま...です。」

と言っていたのだろうがその頃の私は聞き間違えてこう言ったのを今でも覚えている。



「ようっていうの?じゃあようちゃんって呼ぶね!私は島野 咲、よろしくね!」



「え...あ、うん。よ、よろしく。」

と微妙な顔をしたようちゃんに気付かない当時の私は彼の手を取って、ひっぱって家に連れ込んで「一緒にあそぼ!」と言った覚えがある。



今考えればなんで大人たちはようちゃんというニックネームを訂正しなかったのか未だ謎である。

そして私の中では完全にようちゃんという名前で定着してしまっていたため変えることは無かった。

今の今まで、一度たりとも無かったのだ。








とその話を聞いた聖麗は納得顔で言う。



「なるほど、そういうことがあったのか。」



...というか、なんで私がようちゃんって呼んでただけで女の子だって勘違いしたんだろ...まあ、詮索しないほうがいいかも、ようちゃんのためにも。



私は話を戻してようちゃんに聞いてみた。

「そういえば、髪切ったんだね。どうしたの?」



すると聖麗がいい笑顔で言う。

「失恋とかそういう類なんじゃないかな?」



するとようちゃんが慌てて訂正する。

「違うよ!姉ちゃんが...人前に出るなら、切れっていうから。」



「ようちゃんはシスコンだったのか。」



「....さすがの僕でも怒るよ。」

何に対しても優しいようちゃんが珍しく怒っている。



ようちゃんが起こる時はとびきり笑顔になるのだ。

私は、まだ怒られたことがないがいつも隣の家でようちゃんとようちゃんのお姉ちゃんの怜ちゃんが喧嘩しているところを何度も見かけたが、きっと最初見た人は気付かないだろう。

だって、見た目は笑いあっている仲の良い姉弟のようにしか、見えないのだから。



私は聖麗を止めようとする。

「聖麗、これ以上はやめようよ。ほら、ゲームの続きでしょ?」



「ゲームの続き?もしかして、この時間に聖麗は仕事をさぼって咲とゲームしてたの?」



「いや?もう私はやるべき仕事は終わらせたよ。君こそ仕事は大丈夫なのかい?」



「....僕は家でできるからいいんだよ。あ、そうだ。咲、昼ごはん食べた?」



「ああ、今私が作っているところだよ。」



「君には聞いてないんだけど...まあ、いいや。僕もここで食べていい?あ、聖麗には聞いてないよ?」

ようちゃんはまださっきのことに怒っているらしく笑顔で聖麗の意見は聞かない宣言をしていた。



私は気にしないで答えることにした。

「いいよ。聖麗が作ってるのは聖麗に許可取ってね?それ以外なら大丈夫だよ。」






そうして、なんとか昼食を終えた。

そしてなぜかようちゃんも一緒に乙女ゲームをすることになった。





「さてと、空腹も満たされたところで始めようか。」

となぜか聖麗が仕切ってゲーム機を持って始める。



「それ、咲のでしょ?咲に許可は取ったの?」



私は今にも喧嘩を始めそうなようちゃんの手を抑えた。

「私はいつでもできるから、ね?」



ようちゃんは渋々了承した。



そしてまたアンバーの最初の分岐点に戻ってきた。




ーーーーーーーーーーーーーー



1.こんにちは、何をしているんですか?



②.何かありましたか?私でよければ聞きますよ?



3.貴方は、アンバー様ですか?探していたんです!



ーーーーーーーーーーーーーー




「さっきは2を選んだから1か3のどっちかだね。どっちにしよっか?」



「そうだね、あえて3を選んでみるのはどうだい?」



「僕もそれがいいと思う。...聖麗と同じの選んでたのは少し気にくわないけど。」



「じゃあそうしよっか。」




二人の意見通りに2を選択することにした。

どんどんストーリーを進めていく。





ーゲームをやること5時間後






ー好感度99



アンバー「ルーナトルテ、まっていてくれてありがとう。そして、ごめんね。私のせいで私たちは生き別れてしまった。でも、こうして君に出会えたことが何より幸せだよ。これからもよろしくね。....永遠に。」



彼が主人公を抱きしめて再会に涙するスチルがでる。






そこまではいいのだが、主人公たちは死んでいる。

いや、元は生きていたけど不運な事故によって主人公が命を落としてしまい天国で二人は再会するという話だ。

実際の話は主人公は不運な事故ではなく、主人公を妬む貴族が起こした事件に巻き込まれて命を落とす。

そして、その話をアンバーは永遠に教えない、主人公は話さないで終わるというエンド。






アンバーの声でナレーションが入る。



ーそして、二人は幸せに天国で永遠に暮らしましたー




ーMerry bad endー






▽『ゲームをやり直しますか?』






「メリーバッドエンドは全部同じなんだね。好感度関係なくこの他のメリーバッドエンドでも行く付くようになってたよね。」

とようちゃんがこぼす。



「そうだね、どうやってもメリーバッドエンドは製作者側が変えたくなかったのかもね。」

と私は言う。



「確かに彼女らはハッピーかもしれないけど、彼をずっと天国で待っていた主人公はどんな気持ちでまっていたんだろうね。」

聖麗が一番疑問に思ったことを言う。



「...深いね。」

と私、



「いや、深いというか、そこまで考えてなかったんじゃない?」

とようちゃんが言う。



「そうかな?主人公がどれくらい好きかによるけど、きっと一途待っていたんじゃないかな?」

私は思ったことを言う。



「そうだとしたら彼らはどうやって余生を過ごしたんだろうね。もしかしたら浮気していたかもしれないのに。」



「....いや、それはないみたいだよ。だってほらこれ見て。」

とようちゃんが図鑑を指さした。



newと表示が付いたところをタップする。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アンバールート Merry bad end



実は彼は主人公が亡くなったと知らせを聞いた後にすぐに自分も後を追うように死のうとするが、ロストワールや、ライアーに散々止められた後にせめて自分のすることだけをしてから死のうと決意する。

そして彼が50歳を迎えた時に分家の中から選んだ優秀な子をデルタゴン家の当主にしてから自害して主人公の隣の墓に埋まることになった。

彼は彼女のいない約34年間独身をつらぬき、デルタゴン家の当主として優秀な功績を残して世を去った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それを見た私たちはそれぞれの感想を持った。



「なんか、重いね。...いろいろと。」



「僕だったら絶対自害はできない、気がする。」



「私もさすがに自分では死のうとは思わないね。」



少し重い空気になってしまったところに下の階からお母さんの声が聞こえた。



「みんな~、夜ご飯でできたわよ~」



私たちは急いでセーブして夜ご飯へ向かうのであった。





その日ようちゃんと聖麗は夜ご飯を食べた後、それぞれの家に帰っていった。


次回の投稿は明日の20時です。

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