2種類の呪い
「さて、盛り上がっているところに悪いが本題に入ってもいいかな?」
アイン様が盛り上がっている私たちに声をかけられました。
「そうでした。
アイン様は何故こちらに?
それに先ほどのユリアン皇子と一緒にいた女性はシャルロットさんのお付きだったのでは?」
「私のお付き・・・いえ、知らない方でしたが」
私の言葉にシャルロットは首を傾げました。
「そこについても私が話をしよう。
まず先ほどの呪いの件だが、私も同じものだと認識していたのだが実は2種類の呪いがかかっていたことに気づいたのだ」
「2種類ですか?」
「1つは先程言ったように生まれ変わった2人が惹かれ合う呪いだ。
もう1つはこの国を恨んだ結果、国を滅ぼそうとする怨念が生まれる呪いだった」
「国を・・・滅す!?」
私は先程の女性を思い出します。
確かにこの国を恨み必ず滅すという怨念が込められておりました。
「君たちが運命の相手であるにもかかわらず王子と平民という、本来結ばれるはずのない立場で産まれたのもそのせいだ。
滅びの呪いはそれで上手くいくはずだった。
しかし、想定外の邪魔が入ったのだ」
「時間逆行してきた私ですわね」
「エリカ嬢がメリル嬢を平民から公爵令嬢に押し上げ王妃教育を施したことにより、この方向での滅びの呪いは発動しなくなってしまった。
更にエリカ嬢が神と私の信仰を広めた結果、この国は更に豊かになっていった。
国が万全になり付け入る隙がなくなった呪いは帝国を利用することにしたのだ。
この国の情報を集め帝国に明け渡した。
さらに先程エリカ嬢が受けたような超常的な力を使い様々な裏工作を行なった。
シャルロット嬢が覚えていないのも認識阻害の力を使ったのだろう。
そして、最後の仕上げに全ての要になっている君を奪いさらおうとしたのだろう」
アイン様の言葉に驚きが隠せません。
まさか、そんなに深い呪いがこの国にかかっていて、滅ぼそうと今も活動しているなんて・・・しかも、その人知を超えたものが私を狙っているなんて。
「エリカ嬢が行なった信仰を広める活動は神と私に力を与えてくれた。
その力の一端を使いこうして地上まで降りてきたのだ。
エリカ嬢を呪いから守るためにな」
「アイン様・・・私のためにありがとうございます」
「君には茨の道を歩ませてしまったからな。
だが、私の奇跡もここまでのようだ。
だから最後に伝えておくことがある。
王国と帝国を繋ぐ関所は呪いの裏工作もあり既に押さえられている。
このままでは関所を帝国軍は素通りして攻めてくるだろう。
そして、仮に関所を取り返したとしても戦争は避けられまい」
アイン様の言葉に全員が衝撃を受けます。
「戦争が・・・始まる?」
「それに関所が既に押さえられているなんて」
慌てそうになる私たちでしたがアイン様は私達に手をかざして落ち着かせます。
「落ち着いて聞いて欲しい。
戦争を防ぎたいなら今すぐに関所に向かい奪い返すのだ。
そして、両軍が対峙した時に関所の上でエリカ嬢に祈りを捧げてもらいたい。
これが戦争を止め、この国の滅びの呪いを消す唯一の方法だ」
その事を伝えるとアイン様の姿が段々と薄くなっていきます。
「アイン様・・・必ず、必ず関所を押さえて祈りを捧げてみせます。
ですからどうぞご安心ください」
「その言葉信じているぞ。
皆もどうかエリカ嬢を守り導いて欲しい。
私はいつでもこの国を見守っているからな」
そう言い終えるとアイン様の身体は消えてしまいました。
・・・感傷に浸る時間はありません。
「今の話を早速お爺様に相談して関所の奪還に向かいます!」




