ツヴァイの正体
「ハハハ、まさか断られるとは思わなかったよ。
ところでエリカ嬢。
いまこの教室には誰もいないのは何故だと思う」
言われて辺りを見回して気がつきます。
教室にはユリアン皇子以外誰もいません。
いえ、教室の後ろに一人・・・あれは確か、
「シャルロットさんに付いていた・・・」
そう、彼女は確か最初にシャルロットさんに付いていた5人の中の一人。
あれ?でも、最初の日以降にシャルロットさんに付いていたのは4人に減っていたような・・・まさか!?
「そう、彼女は私の協力者だよ。
長年戦争が無く同盟を結んでいたから油断していたのかね?
我々はいつでもこの国を狙っている。
この豊かな国を。
そのためにどれだけの人間を送り込んでいるか知らないだろう?
君が素直に頷けば手荒な真似はしなかった。
だが、断れては仕方ないな・・・」
不味い・・・逃げないと・・・
そう思いましたが身体が金縛りのようになって動きません。
その間に女性が後ろからゆっくりと近づいてくるのが分かります。
「やっと・・・やっとだ。
貴様のせいで散々邪魔されたがようやくこの国を滅ぼせる」
女性の口から呪詛のような言葉が紡がれます。
不思議なことにその声は一人では無く男女の声が混じったような声でした。
「この腐った国を!
私たちの結婚を認めなかった王国を!
私たちは絶対に許さない・・・必ず滅ぼしてみせる」
「ああ、君の言う通りだよ。
君の願いは私が叶えよう。
エリディス王国は滅ぼし、この地をラズアーレ帝国が支配する」
ユリアン皇子がそう言って動かない私の身体に触れようとした時でした!
「そうはさせんぞ。
忌むべき呪いよ!!」
部屋の中に誰かが入ってきました。
その瞬間に私にかかっていた金縛りは解けます。
私は顔を動かして入ってきた人影を見ました。
「ツヴァイ先生?」
その方は王族と同じ髪の色をした教師、ツヴァイ・ドライブ先生でした。
「ツヴァイ先生?
これは一体どう言うことですか?」
「話は後だ!
先ずはこの部屋にかけられた結界を解く!」
そう言うとツヴァイ先生の体から眩い光が放たれます。
その直後に教室の扉が勢いよく開かれいつもの見慣れた仲間達が次々と飛び込んできました。
「お姉様、ご無事ですか?」
「姉上、大丈夫ですか!」
真っ先に飛び込んできたメリルが私を抱え込み、エミリオ様が私とユリアン様の前に立ちます。
「エリカっち、怪我してない?」
「エリカさん、こちらの方へ」
「エリカ嬢が無事でよかった」
「エリカ様、ご無事で何よりですわ」
「ひめねえさま、無事でよかった」
カチュア、マーク、シグルド様、シャルロット、パメラも私の身を案じて前に立ってくれます。
そして・・・
「てめーは一番やってはいけない事をやってくれたな!
無事に国に帰れると思うなよ!」
と鋭い目つきでユリアン皇子を睨みつけながら抜き身の剣を構えてビリーもやってきてくれました。
「おい、これは一体どう言う事だ?
この部屋には誰も入れないんじゃなかったのか?」
この状況に慌てたようユリアンが女性に詰め寄ります。
しかし、女性の方はそれを無視してツヴァイ先生を睨みつけます。
「なぜ貴様がここにいるんだ、アイン・エリディス!」
女性の言葉に皆の視線がツヴァイ先生に向きます。
その瞬間に女性から黒い煙のようなものが吹き出すと
「退くぞ、ユリアン」
「しかし、エリカ嬢が!?」
「この状況では無理だ!
彼女は諦めてこの国を支配する事を考えろ!」
そのような問答の後に黒い霧が晴れ、そこには誰もいなくなっておりました。
後には何も状況の分からない私達だけが残されておりました。
ドイツ語に詳しい人にはバレバレだったと思います。
アイン・ツヴァイ・ドライは1、2、3という意味ですね。




