影の正体
私は疑問に思ったことを口にすることにしました。
「あの、もう既に知られていることはわかっていますが自己紹介をさせてください。
私の名はエリカ・クロード。
エリディス王国で公爵を務めるクルドア・クロードを父に持ちシグルド王子のこん・・・元婚約者です」
王子の婚約者と言いそうになり慌てて訂正をします。
私は婚約破棄を宣言されたのでもう殿下の婚約者ではありませんからね。
「ああ、エリカ嬢の事はよく知っているよ。
そう言えばまだ私のことを話していなかったね。
アイン・エリディスと言えば知っているかな?」
「アイン・・・エリディス様!?」
私はその名を聞いて愕然としてしまいました。
それは聞いたことの無い名前だったからではありません。
寧ろ、その逆。
この国に住んでいてこの名前を知らない者はおりません。
なぜならその名は我が国エリディス王国の建国者であり初代国王の名前なのですから。
「もちろん存じております。
こんな所で初代国王様であるアイン様に御目通りできたことに心から喜びを感じていますわ」
それは私の偽らざる本心であった。
この影の言う事は何故か疑いようの無い真実だと感じてしまった。
「私の紹介を終えたところで改めて謝罪をさせてくれないか?
この度は私の子孫であるシグルドがバカな真似をしてエリカ嬢を深く傷つけた事を謝らせてもらいたい」
そう言ってアイン様は私に頭を下げる。
「そんな・・・アイン様が頭を下げるような事ではありません。
むしろ謝るのは私の方です。
私が殿下の気持ちをもっと察してあげれば良かったのですが・・・」
私もアイン様に頭を下げる。
アイン様は困ったような声色で
「いや、あれは完全に我が子孫が悪い。
政治的な婚姻を自分の意思で破棄するとは・・・とても王族のする行為とは思えん」
どうやら初代国王であるアイン様にすら見限られる程に現在の殿下のありさまは酷く見えたのでしょう。




