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メリルとの出会い

私たちは修道院の応接室のような場所に通され授業が終わるまで待ちます。

暫くすると扉をノックされて、その後に神父と連れられてきたメリルが現れました。

神父とメリルはテーブルを挟んで私たちの向かいの席に座ります。


「さて、先程私の方から少し紹介はさせていただきましたが、改めて自己紹介しなさい」


「メリル・ブラウンです!

初めまして!!」


メリルは立ち上がるとお辞儀をしながら元気よく挨拶します。


「ふふ、初めまして。

神父様にも改めて自己紹介させて頂きますわね。

私の名はエリカ・クロード。

よろしくお願いしますわ」


私が正しく自己紹介すると先程まで笑顔だった神父様の笑顔が凍りつきます。


「クロード様!?」

「エリカ・・・クロード様?

失礼ですが何か証明できるようなものをお持ちでしょうか?」


2人はクロードという名前で私の正体に気付いたのでしょう。

その上で神父様はそれを証明するものを見せてほしいと頼んできました。

貴族によっては無礼だと怒り出す者もいるかもしれませんが、この神父の対応は正しいものです。

貴族を騙るのは重罪です。

そして、それに騙されたものも確認を怠っていたことが判明した場合準ずる罪になることがありますから。

私がジョン爺に目配せするとジョン爺が懐から一枚の手紙を取り出した。

それはクルドア・クロードの名で書かれ、我が家の家紋で封蝋されていた。


「旦那様からこちらを神父様へと」


この時点で私がクロード家の者だというのは証明されました。

そして、神父様は恐る恐る手紙を開けて確認します。


「分かりました・・・。

エリカお嬢様に全面的に協力させて頂きます。

それで一体何をすれば良いのでしょうか?」


神父は神妙な顔つきで頷きます。

一方で状況についていけないメリルは不安そうに私たちと神父様を交互に見ています。


「特に難しいことではありません。

我が家では庶民でも優秀なものは引き立てたいと考えているのです。

そして、そのような方がいないか調査した結果そちらのメリルさんは私より一つ年下ながら非常に優秀で勤勉であるという話を伺いました。

そこで我が家で一から勉強して頂き将来の私の筆頭侍女となってもらいたいのです」


私がそう話すと話の大きさに気付いたメリルが驚きの声をあげます。


「私が・・・エリカ様の筆頭侍女に!?」


「ええ、子供の頃から一緒にいた方が将来的に支えになってくれること。

平民の方なら貴族のしがらみがなく信頼できること。

その2点から私に近しい年代のものを探して貴女にいきついたのです。

どうでしょうか、メリルさん?」


「それは大変嬉しくありがたいです。

でも、私には家族が母しかいません。

その母を置いていくわけには・・・」


「その点についても心配しないで頂戴。

私の隣にいるジョンは我が家の庭師なのですが、見ての通り高齢なのでもうそろそろ仕事をサポート出来る人間を付けたいと思っておりましたの。

貴女の母親さえ良ければその仕事に就いてもらいたいと思っています。

庭園はジョンという男性1人で整えていたので女性の視点が欲しかったのです。

2人がこの話を了承してくれるなら貴方達親子には屋敷に住んでもらうことになるわ」


私の言葉に神父様もメリルも絶句しています。

しかし、何とか気を取り直した神父様が声を絞り出します。


「ブラウン親子を2人とも召抱えて頂けるのですか?」


「ええ、話した通りですわ。

母1人で幼い娘を食べさせるのは大変でしょうし2人の時間もなかなか取れないでしょう。

この話は我が家としてもプラスになり、ブラウン家にも良いお話かと思いますが」


「それは確かに良い話のように思えますが、メリル。

君はどう思うかね?」


神父に言われてようやく気を取り直したメリルだがそれでも状況が飲み込めてはいないようだ。


「急にこんなこと言われても・・・分かりません。

とても良い話だと思うのですが、どうお答えしたらいいのか・・・。


「難しく考えることはなくてよ。

お母様がどう思われるかは別として貴女が直感的に思った答えを聞かせて頂戴」


「私の答え・・・私の気持ちとしてはお受けしたいです。

母を楽にさせてあげたいし、もっと勉強が出来る環境に入ることが出来るのであればこんなに嬉しいことはありません」


私はメリルの答えに満足げに頷く。


「答えは出たようですので、後はブラウン家の話ですわね。

また3日後にこちらに使者を送りますのでその時にお母様とも話し合って答えを頂きます。

神父様」


「は・・・はい!なんでしょうか?」


突然呼ばれて驚きの声をあげますがそれを気にせずに


「メリルさんのお母様への説明をお願いしますね。

貴方には期待しておりますわ」


と声をかけます。


「は、はい。お任せください!」


と返事をする神父様に


「この修道院はとても良い場所ですわね。

お父様には大変結構な報告が出来そうですわ」


と答えて席を立ちます。

ジョン爺もそれに合わせて席を立ちました。


「それでは今日はこれで失礼しますわ。

ああ、私としたことが話忘れていましたわ。

お2人がこの話を受けて頂けるのであれば準備金と、我が家に入られた日からお給金が発生しますのでお金のことは心配なさらないように」


そう言い残して私たちは応接室を後にしたのでした。


ヒロインとの出会いです。

金と力(権力)に物を言わせます。


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