婚約破棄
思いつきで始めた趣味程度の話です。
楽しんで頂けたら幸いです。
私の名はエリカ・クロード。
エリディス王国に仕える四大貴族の一つクロード公爵の一人娘であり、王太子殿下と婚約させていただき時期王妃として育てられてきました。
父は国の為、また国の根幹をなす民の為に働く事を常としており私を捨てて公の人間となりなさいと幼い頃から教え込まれてまいりました。
私もそんな父を尊敬し常々そうありたいと思い行動しておりました。
婚約して許嫁となってからは王太子殿下には父のように、またその父が心からお仕えする王のように立派な人物になってほしいと思い少々行き過ぎとは思いつつも普段の素行について指導させて頂きました。
それがいけなかったのでしょうか?
いま王太子殿下は私を憎悪の篭った眼差しで睨みつけながら宣言されました。
「エリカ、君との婚約を破棄させてもらおう!
私はこのメリル・ブラウン嬢と新たに婚約する事をここに宣言する!」
殿下の宣言に周りはもちろんのこと、殿下の隣にいたメリルさんも呆気にとられております。
「心配しなくていいよ、メリル。
僕には君が必要なんだ。
だから安心して王位を継ぐ私の隣で支えてほしい。」
公爵令嬢として、王太子殿下として相応しい教養を身につけ常に公の人であり続けた私の仮面が外れた気がします。
その時の私は心の中でこう思っておりました。
(このバカの頭の中はどうなっているんだ?)
一つハッキリとさせておきたいことですが、私は殿下の婚約者として何ら恥じる行いはしておりません。
殿下に対して諌めていたのは事実ですが、それは殿下が公の人として相応しくない行いをしていたからです。
にも関わらず一方的な婚約破棄をしておきながらまだ王位を継げると考えているおめでたい頭の中に辟易してまいります。
今回の私達の婚姻は国のための政治的な判断です。
これを一方的に破棄するならば父は元より王もお怒りになられるでしょう。
まして、新たに婚姻するといった女性は王妃としての教育を何一つとして受けていない平民です。
彼女はこの貴族学校に特待生として入ってきました。
しかし、それは貴族の社会のことを学ぶためではなく学業を学び修めて国の重要な機関に勤めるためです。
貴族としての礼儀を何一つとして修めていない彼女を今から王妃になるための教育を施しても形になるまで何年かかるでしょうか。
これは国に限りなく大きく、しかし不要な混乱を呼ぶことでしょう。
国の上が混乱すればその騒動は下の民に伝わり、更なる大きな被害を呼ぶに違いありません。
そこまで考えた私はどうやって殿下を説得しようか考えます。
しかし、そんな簡単に名案が出るわけもないので話しながら糸口を掴もうと声を上げようとしました。
ですが、それは叶いませんでした。
私が声を上げようとした時に私の決してほどけず、裏でドリルというよく分からない言葉で呼ばれていた左右の髪が、真っ直ぐになっていたのです。
それだけではありません。
その私の元ドリルのあった場所が発光し強い光を撒き散らし始めました。
光源が非常に近かったこともあり、私は咄嗟に目をつぶってしまいます。
まぶたの裏からでもハッキリとわかるほどに光はドンドンと強くなり更に強力になって点滅したかと思うと
私は意識を手放してしまったのでした。