スクールカースト最底辺の俺、実は元テニス全日本チャンピオンです!~辞めたはずなのに、スカウトやファン(大人気アイドル)に付きまとわれて迷惑してます~
「ムフフ~、楽しみだよな、まさかあの雪柳坂46がこの学校でliveしてくれるなんて、僕、いまだに信じられないよ!!」
「ほんとだよな!生歌を聞けるなんて..俺、もう、どうなってもいいよ!」
公演が決まってから、クラスは彼女らの話題で持ちきりだ。
そう、今日の五六限は、何やら有名アイドルグループがうちの学校に来てくれるそうだ。紅白にも出たことがあるグループらしいが、いったいこの学校とどんなつながりがあるんだろうか?
<ワアアアアアアアアッッッ!!>
歓声とともにライブが始まり、グループのメンバーがステージに現れた。
体育館異様な熱気に包まれるなか、センターの女の子が喋り出す。
「みんな~、今日は私たちのために集まってくれて、ありがと~!」
瞬間、俺の中の謎が全て解けた。
ショートヘア、綺麗な黒髪に、くりっとして、何でも飲み込んでしまいそうな瞳。整った顔立ちに加え、何よりあの声…!俺は彼女を知っている。美甘桜…。テニスをやっていた頃、試合に毎回足を運んでくれていた女の子だ、美形とは思ってたが、まさかアイドルだったとは。
しかし、問題はそこじゃない。俺がテニスを辞めることにしてから、どこで手に入れたか分からないがこの子は、俺の連絡先に「最近どうしてるの?」とか連絡をくれていた。
テニスから距離を取りたくて、無視していたが、最近メッセージがエスカレートしてきていた。
「返事くれないと死んじゃう。」とか、普通に怖いだろ。
まずい、もともと、目立つのが苦手で、高校に入ってからは、念願の隅っこ生活を謳歌していたのに、元テニス全国一なんて知られたら、面倒なことになる。
あれこれ考えてるうちに、舞台はもう終盤。焦った俺はトイレと偽って外に行き、様子を伺うことにした。
最後の曲が始まった。「Bud Confidence」と言う曲だ。旋律に夢中になっていたためか、センターが不在なことに気づくのが遅れてしまった。
「る☆い☆くん、やっと会えたね!」
そう言うと美甘は、後ろから俺に飛び付いた。やはり俺を探しに来てたのか、しかし、見つかったものは仕方がない。
「あなた、どなたですか?僕はルイなんて名前じゃないですけど?」
大嘘である。俺の名前は鳴海涙だ。昔と違って眼鏡をかけているし、ごまかせるかとも思ったが、
「えー、うそだぁ~!ルイ君が私のこと忘れるわけないよ!」
「......え?それ、本気で言ってるんだったら怒るよ??」
俺がしらを切り続けたからか、彼女の表情が笑えなくなってきたので、俺は別の作戦に出る。
「う、嘘だよ、ちゃんと覚えてる。美甘さんだよね、いつも試合を見に来てくれてた。ホントにありがとう、でも、俺はもうテニス辞めたんだ。ごめんね。」
「大丈夫!そんなこと、とっくに知ってるよ。」
彼女は言う。だったらなんで?もう一度テニスを、なんて言い出すだろうか。
「そ、それは..もちろん、きっかけはテニスしてるルイ君だったけど..ずっと見てるうちに、ルイ君のことしか考えられなくなっちゃったから..かな//?きゃっ、言っちゃったっ//」
恥ずかしそうに顔を隠しながら、彼女は言った。
「途中からは、テニスじゃなくて、..ずっと、ルイ君を見てたの..!アイドルを始めたのだって、ルイ君に少しでも近づこうと思ったからなんだよ?」
彼女がそう話終わったころ、ちょうど公演も終わりを迎えたようだ、体育館からひと際大きな歓声が沸き起こる。
「ルイ君が見られないんじゃ、私、生きていけないよ。
..だから、お願い、そばにいて?」
クソ、重い…そして断りずらい..。
「と、とりあえず戻りなよ。センターがいないんじゃ、締まらないでしょ..。」
俺はそう言うと、彼女は舞台へと戻っていった。
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帰り道、俺は彼女への断り文句を考えていた。別に彼女のことが嫌いってわけじゃない。可愛いし、テニスに関しても熱心に応援してくれたいい子だと思ってる。
しかし、今やあの子はトップアイドルだ。変に一緒にいるところを撮られでもしたら、一躍時の人。最悪だ。
そうなると断るのが一番だが、彼女は何をするかわからない。どうしたものか..。
「おっかえりー!」
家に入った途端、声が聞こえてきた。まさかとは思ったが、そこには美甘さんの姿があった。
「なっ、美甘さん?!どうやって入ったの!?」
戸締りはしっかりとしておいたはずだが。
「こんなちっぽけなカギで、私たちの愛は妨げられないよっ!
あっ、でも、毎回お風呂の窓から入るのは面倒だから、合いかぎ作っておいてね?」
そんな侵入方法を..ってか合いかぎってなんだ?!
「へへっ、私も今日からここに住むことにしたから!」
はぁ!?
----数分後出てきた彼女の料理は、確かにおいしかった。久しぶりに誰かと食べたってのも、あるんだろうが。
「どう?私と住めば、毎日こんな料理が食べられるよ??」
にやけながら彼女は語り掛けてくる。さっきから断ってはいるが、せめてこっちでの用事が終わるまでは、と言って聞かない。ここはきっぱりと言うべきだが、彼女の真っ直ぐな瞳に、俺は昔のことを思い出してしまった。
どんな超人でも、スポーツをやっている以上、スランプと言うものはある。俺の場合、それは四年くらい前の事だった。順調に勝っていたのが一転、敗けが続き、こいつはもうだめだと、誰もに見捨てられたとき、この子だけはこの真っ直ぐな瞳で応援し続けてくれた。今でこそこんな感じだが、俺はしばしば救われていたのも事実だ。
「分かったよ、その代わり、用事が終わるまでな…」
こうして、彼女の居候が決定したわけだが、俺はこの時しっかりとした期間を儲けなかったことを、長く後悔することとなる。
その夜は、一晩中、あれほど言ったのに、俺の寝ている布団に入ろうとしてくる美甘さんを追い出していた。
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そして翌日、ある男女が学校内の注目を独占することとなった。
アイドル転校生と、そして、なぜか彼女と仲の良いメガネ陰キャだ。
そう、なんと彼女は転校してきたのだ。そしてそうなると、用事と言うのは学校のこと。そしてそれが終わるのは…。
完全に騙された。
朝、人気者の彼女が俺の名前を呼ぶたびに、「何であいつが?!」というような雰囲気が俺に刺さる。
そして、
「おい、お前、話によるとテニス上手いらしいじゃねえか?ちょと相手してくれよ。」
昼休みに、俺にそう話してきたのはテニス部集団だった。
美甘さんがテニスの話をしていたのを聞いたのか?
勝って変な噂をされても仕方ない。しかし、こいつらに負けるのもそれはそれで嫌だ。
やれやれ、いっちょ相手にしてやるか。
俺は絶妙に初心者っぽいショットで、奴らを軽くひねってやった。我ながら完璧だ。
「クソ!なんで勝てねぇんだ?!」
そう言って悔しがる彼らをしり目に、俺はコートから出る。早く片付けたつもりだったが、そろそろみんなが来る頃だ。
そんな俺に声をかける一人の少女。
「あの…、もしかして、鳴海涙さんですか..?私、ファンなんです!」
彼女は目を輝かせていたが、俺は、プレーを似せているだけだ、と言って逃げだした。
やれやれ、美甘さんには絶対に邪魔をしないように言っておいたが、こんな感じで、俺が正真正銘の窓際生活を送るには、もう少しかかりそうだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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それでは!