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設定世界の宿屋  作者: 藤島白兎
不思議な宿屋と主人と付き人
1/7

その手で扉を開けました

では案内しましょう、設定の世界へ。

「おう、誰か来たようだな?」


 そのようですね、ご主人様。


「だったらまずは、最初にお前さんに説明しなきゃならん事がある」


 私の事ですね?


「お前さんには、見えているか聞こえているはずだ『描写さん』がな」


 お初にお目にかかります、描写でございます。

 皆様に出来事を伝え、状況を説明する事を仕事としています、以後お見知りおきを。


「んじゃ次な?」


 ご主人、多分お客様は困惑しているかと思われます。


「何で描写が喋っているかか?」


 はい、普通描写は喋りません。


「ところがすっとこどっこいでな?『この世界』じゃ有るのさ」


 ご主人どうしましょう?

 何処から話せばいいのやら……


「俺が話してやるよ」


 ありがとうございます。


「ある所に心に聖剣を持った作家が居た、そいつは設定を考えるのが好きだったのさ」


 そうですね、私が生まれたのも『描写が喋って何が悪い!』ですから。


「ま、その作品が出来上がる事は無かったのさ」


 ですが、ここに来るお客様を案内出来ると思うと、主人公にならなくても良かったと思えます。


「確かタイトルは『頑張って描写さん!』だったかな?」


 懐かしいです。


「まあ、そういう訳でよろしくな」


 よろしくお願いいたします。


「お前さんの反応は俺達にはわからないんだよ、悪いな」


 ポップコーンと飲み物を持ってきていただいて、映画を見てるように干渉して頂ければ。


「イントネーションが違うな、文字間違ってないか?」


 はて? お客様は私達の世界に干渉なさっているのでは?


「誰が上手い事言えと」


 恐れ入ります。


「まあそんな訳でだ、世の中には喋る描写も居るんだよ」


 喋るのが存在意義でございます。


「おっと、否定しても無駄だぜ? 既に存在しているモノを否定するのは可笑しいよな?」


 ご主人様、喧嘩腰はよろしくありませぬぞ?


「ああ、そうだな」


 私事ばかりではなく、この世界について説明をしてはいかがです?


「そうだな、ここは簡単に言えば『設定の墓場』だな」


 ご主人様その語りだと、ご主人様がその墓場から抜け出して、主人公になるストーリーになります。


「ああ、俺はこの世界で生まれた設定だからな、抜け出すもなにも、スポットが当たれば主人公だ」


 そうですね、ご主人様はどちらかと言えば、お客様にこの世界を案内役です。

 

「いや、俺の本職はちょいとボロい宿屋の主人だぜ?」


 ある日、宿泊部屋が異世界に通じてしまい、お客様のような来客が増えましてな。


「ってもな、金払って貰える訳じゃないから、ただ働きだけどな」


 ご主人様も好きでやってるのでは?


「それを言ったらおしめぇよ」


 では、この世界をご説明しましょう。


「頼むわ」


 この世界は人によってはゴミ捨て場、人によっては可能性の場所でございます。


「さっき墓場って言ったのはそういう事だな」


 流行った設定、流行らなかった設定、生きた設定、死んだ設定、言い出したらきりがありませんな。


「そうだな、作家の取捨選択で消えた設定、流行りに乗って捨てられたら設定、時代に殺された設定、言ったらきりないな」


 ご主人様、喧嘩腰です。


「仕方ないだろ、そういう性格……」


 ご主人様、優雅に座っている椅子を半回転させて、悪役のポーズをします。


「いや……『設定』と言うべきかな?」


 ご主人様、その説明でこのまま話を続くと、作者にマウントストーリーが始まりそうです。


「ははは、これは失礼」


 しかし、この世界は平和なものですね。


「ああ、ベラベラ喋っているより、実際に外に出た方がこの世界を知ってもらえるだろう」


 見る人によって感想は千差万別ですからな。


「ああ、じゃあ出掛けるか」


 ではお客様、この世界をご案内いたしましょう。


「あ、着替えるから宿屋の前で待っててや」


 わかりましたご主人様。


「直ぐに着替えるから」


 ではお客様、宿屋前までやってきました。

 はて? ちゃんと描写しろと?

 何をおっしゃるウサギさん、描写がこうだと言ったらそうなるに決まってるじゃないですか。

 それとも、お客様を操作してもよろしいのですかな?


 例えばこんな風にです。


 あなたは宿屋の主人公の言われるままに、宿屋の前へと移動しようと、今居る部屋からようとする。

 いったい何なんだ? このよくわからん世界は。

 あなたは軽い頭痛がした、頭痛が痛いくらいに混乱している。

 くらい部屋を出ると、まず目に入ったのは……



 ここまでにしておきましょう。

 ツッコミ所がありますよね?

 お客様は頭痛がしたという私の描写は、私がそう言っただけでお客様が実際に頭痛はなされていないかと。

 もしかすると、頭痛に悩まされているかもしれませぬが。


 ふむ、ご主人様はまだかかりそうですね。

 よくご主人様がおっしゃるのですが『考察は勝手だがそれを押し付けるな』と言っています。

 それはそうですね、お客様もよく知らない他者に、お客様自身をどうのこうのと評価をされるのは嫌でございましょう?

 この世界にも勝手な考察により、本来の設定から外された者達も居ます。

 先程も言いましたが、この世界は墓場であり可能性の場所なのです。


「うぉーい、お待たせ」


 ご主人様、きらびやかで爽やかな物言いで宿屋から出てきました。


「またせたな」


 凄く渋い声で言いましたね、そんなご主人様の服装はジャージです。


「近所を散歩するんだ、この位でいいだろ?描写さんの説明減らせるしな」


 お気遣い感謝いたします。


「んじゃ、この世界を散歩しようじゃないか」


 はい、歩いていれば何かしらに出会えるでしょう。


「さ、出掛けようか」


 ご主人様とお客様はどんなものに出会うのでしょうな?

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