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商売

 《眠くない》

 どんなに頑張っても、5秒おとなしくしていれば全回復してしまう僕に疲れというものが感じない、眠気も同様にほとんど襲ってこないのだ。

 《ここ、日本だよねえ。この時代何があるの?》

 『何と言うと?』

 《大小の集落が点在しているだけだよね。奈良や京に行けば貴族とか居そうだけど》

 『そうね。全く無いといったっら嘘になるけど、商売という意味で面白くなるのは城下町が出来た頃からかな』

 《日本の歴史変える気はないし、これからどうしよう》

 『何もしない』

 《脚下》

 『旅をしながら、ダンジョン攻略と言っても、今のタカちゃんなら砂だけで全て攻略出来そうね』

 《そうなの・・・・・・》

 『日本どころか全世界回れるわね』

 《だろうね。今のところ世界回るつもり無いけど》

 『そう。もったいない』

 《そう言われてもね。今の日本にダンジョンいくつあるの?そして数は増えたり減ったりするの?》

 『まず、増えるか減るかという質問だけど、増えることがあるが減ることはない。しかし、壊すことはできる』

 《壊すメリットあるの?》

 『事実上は無いよ。ただ、利用している人から見れば壊されると困るでしょうね』

 《いるのかな?利用してる人》

 『いるみたいよ。で、数なんだけどダンジョンが出来る時と関係あるの』

 《どんな風に?》

 『ダンジョンは、SSSランク1つに対してSSが2つ、Sが3つと増えていきGクラスが10個あるので全部で55個となり、現日本に100セット存在している』

 《つまり、5500存在しているわけだ》

 『1セットづつ増えるのね、壊すのは?』

 《1セット全て攻略すると壊す事が可能になるそうよ》

 『ふーんそうなんだ』

 僕はステータス画面をきり、ウトウトとしているうちに空が明るくなってくる。

 

 「・・・・・・ おに・・・ おにいちゃん」

 声に目覚めた僕は、目の前の女の子に気付く。

 「おにいちゃん、こんなとこで何してるの?」

 「何と言われても、どうしようか悩んでた所だよ」

 「ふーん。じゃ帰るね」

 そう言うと女の子は帰っていくが、その後ろ姿を見ていた僕はここで商売は出来ないと思う。

 なぜかと言うと、服と言えるのかというほどの布を被ってる程度にしか着ていないからだ。

 自給自足程度の生活なら商品を買う余裕はないのではと思う。

 水筒を収納から取り出して水を飲んでると後ろから声がする。

 「おにいちゃん」

 振り向くと先程の女の子と男の子が2人いた。

 「何飲んでるの?」

 「水だよ・・・・・・海の向こうから取ってきた水なんだ」となんとなく嘘をついた。

 女の子は物欲しそうな目で見てくるが、後ろの男の子達は怪しいそうな人がいるという目で見てくる。

 僕は、1つ水筒を収納から取り出すと「重いから気をつけて」といい女の子にあげた。

 両手で受け取った女の子は、重いのか直ぐに地面に水筒を置くと、しゃがみこみ器用に栓を抜くと水を飲み始める。

 「美味しい」

 そう言うと後ろにいた男の子に薦めた。

 「美味しい」という言葉を連続でいただいた僕は、ここに用事は無いかなと思い神社を後にし、海岸の方へ歩き出す。

 しばらく歩いていると、昨日収納をランク上げ等のために掘った穴の近くまで来た。

 穴はほとんど埋まりかけていて、その中に海草が乾燥したようなものが大量にあった。

 「海苔だ」と僕は言った。

 おそらく、満潮を迎えたときになだれ込んできた並みに混じって海苔が入り込みここで乾燥したのだろうと推測をたててると、さっきの子供たちが近づいてきた。

 しゃがみこんだ僕は、海苔を掴むと砂がついてないかを確認して海苔を口に含む。

 塩加減のいい海苔が、口の中でパリッと言ったかと思うとフニャッっとなった。

 「美味しい」と思い、ダンジョンでも岩のりをゲットしていたことを思いだしアイテム岩のりの特上を出し食べた。

 「大差無い。美味しい」

 追いついてきた子供達が「それ美味しいの?」と聞いてくるので「美味しいよ。こうして砂を払って食べてみな」と言うと、女の子は海苔を口に含み蔓延の笑みを浮かべた。

 男の子達は、砂ごと食べたのかペッぺとしている。

 (やっぱり器用だなこの子)と思っていると後ろから大きな声がした。

 振り向くと男の人たちが数名走ってきた。いや追いかけてきた。なんか殺気立ってるように感じる。

 「こっ子供たちをどうするきだ」「人さらいか」等と言ってくる。

 僕は、首を横に降って全力で否定したが、興奮している人には通じなく殴られそうになる。

 その瞬間ストップがかかる。

 「やめなさい!」っと後ろから来た初老の人が声を上げ、そして話しかけてきた。

 「ワシはこの島の長老じゃ。お主は?」

 「僕は、い・・・・・・たっ鷹之助で行商人です」

 「ほー。売る物が無いようだが?」

 「あっ、さっきの所に忘れてきた」

 「まーいい。しかし、この島では売れるものはないと思うぞ。いや、欲しいものがあったとしても交換したり出来るものがないということじゃ」

 「何なら交換できるの?」

 「魚の干物くらいかの。そっちは何を持っているのだ?」

 「えーと」・・・《何が売れそう?というか、何を売っていいと思う?》

 『そうね。水筒、麻糸、麻布、大根、青じそ、大根の種、青じその種かな』

 《わかった。ありがと》

 「麻糸と麻布、大根と大根の種、青じそと青じその種、かな。買ってくれた人に水筒を上げるというのはどうかな」

 「いいじゃろ」

 「ところで、これは取ってかないの?」

 「これは、何じゃ?」

 「これは海苔・・・ほら、あの岩にベッタリくっついているのを乾燥させたやつ」

 「ほー知らなかった。どれどれ・・・おー旨い」

 「では僕は先に神社にもどって準備しますんで、村人全員声かけてくださいね」

  そう言うと、神社に戻って来て準備する。

 ござはないから、麻布を敷くと右から順に麻布、麻糸、大根と大根の種、青じそと青じその種を置く。

 青じその束が枯れる気がしたので、水筒の蓋を加工で取り、青じその束を入れる。

 水筒を自分が座る後ろに並べたところで、村長が海苔を持ってきて何か交換してくれといってきた。

 水筒と売り物を2つずつわたし、場所代とした。

 この後に続くお客さんには、干物1つに対し麻布か麻糸1つ、大根と青じそどれか2つ、種は3つと破格だが交換していった。

 夕方近くまで開いていて、全村民が来てくれたようだ。

 干物が結構な量になる。

 種類もそこそこあり、鰯に鯵、鯖にカマス、鯛などもあった。

 流石に、鯛の干物は多目に交換したよ。

 アイテム化にすることが出来たので、持ち物に入れる。

 片付けと言っても収納にしまうだけだがね。

 「幸先いいなー」と呟いたら『そんなこと無い』と突っ込まれたけど僕にとって始めての事だし、普通の行商人ならともかく、ステータス上げの副産物をばら蒔いただけにすぎないからね。

 片付けも終わったしどうしようかと思っていたら、さっきの女の子がやって来た。

 「どうしたの・・・その顔」

 泣き出した女の子の顔は明らかに殴られた痕がある。

 「村長、理由だけでも聞いていいかな?」

 女の子がビックリして後ろを振り向くとそこにはいつの間にか村長がいた。

 「この子の両親はいない。海で亡くなっていて死体が上がっているので間違いない。この村では自分達の食い扶持で精一杯なのだ。ワシですら面倒はみきれないのが現状だ。中には殴るのもいるのだ」

 よくある虚しい話である。

 「海苔を上手く作れるようになれば、この村も少し余裕出るだろうが、厳しいだろうな。この子の両親の船はまだあるんだろ?」

 「有りますが」

 「だったらその船とこの子をもらう。今日はこの社に休ませるし僕もここに泊まる。こっちおいで・・・この中でっ待っててね」

 女の子は、うなずいて社に入る。

 村長と一緒に船のところまでいくと、麻糸30束と麻布30反と交換した。

 ふと、空をみると死神が社の方に向かっているのが見えた。

 嫌な予感がして、慌てて船を担ぐと村長に一礼して社に向かう。

 社の中では、頭を抱えて苦しむ女の子とそれを静かに見届ける死神がいた。

 


 

 

 

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