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旅の準備

 旅をするに辺り、今一番気がかりな存在がソラである。

 僕やリンが死ぬことは、おそらくあり得ないだろう。

 しかし、ソラは普通の人である。

 だったら、いつどこで襲われても、無事にここに帰ってこれるようにしておきたい。

 とはいえ、自由に行き来出来るのも正直どうかと思う。

 ここの空間は家みたいなものだから、何時でも帰ってきていいのだけどもね。

 となると、やっぱり自由に行き来できる方がいいのか。

 リンに相談してみたところ、自由でいいんじゃないということになり、Mpを使わなくても利用できる魔道具を作ることになった。

 もちろんソラ専用である。

 念のためこんなものもつけてみた。人前で利用できないと、ただし緊急時は別と。

 ソラに説明し渡すと、大喜びされた。

 唐突に「ねえ、このカードなんだけど」と、リンが1枚のカードを見せてよこす。

 この時代ではそぐわないカードの言葉に首をかしげる僕。

 白いそのカードは、ダンジョン適用者が所有できるものだとわかる。

 特徴としては、時代に反映され機能がつけれること、だそうだ。

 そして、Gクラスのダンジョンをクリアーしている人で、最初の人間だけがカードを量産しダンジョンを攻略できる力を持った人に配ることが出来るらしい。

 つまり、今の僕である。

 ちなみに、僕が死ぬと次にGクラスダンジョンをクリアーした人にその権限が移るのだそうだ。

 今の時代に機能と言われても困るので、機能についてはスルーしかない。

 リンに言われなければ、いつのまにか持ち物に入っていたカードの存在を知らずにいただろう。

 なぜ、リンはカードの存在を知って持っているかというと、ダンジョンをクリアーしたときに、僕の中に何かが入ったような違和感を覚えたので、調べたりいじっていたら、カードをもらえたとの事。

 なにげに凄いよね、リンって。

 さて、本題に入ろう。

 今回の旅は京までである。

 道順を確認するために、地図を開いた。

 日本地図は僕の知る時代のもの。

 伊豆半島をぐるッと回ったところだけ色がついている。

 名称は各地2つずつある。今の時代と後の時代、僕がいた時代の2つだ。

 あまり僕が混乱しないよう、後の時代つまりは現代の時代の呼び名を中心に今後は話すようにしよう。

 ちなみに、ソラの村では京に行ったことがあるようだから、ソラ自信行ったことがあるか聞いてみたが、行ったことはないようだ。

 小娘を連れて大事な商談にいくこともないから当然かとも思う。

 改めて地図を見る。

 今いるところは、ぶっちゃけると静岡県伊豆は伊東である。

 ここからスタートでもいいが、ちょっとずらして伊豆は韮山からスタートしよう。

 三島経由で静岡ー浜松ー愛知県の豊橋ー名古屋ー岐阜県大垣ー滋賀県の琵琶湖を経由して京都にはいる。

 ざっくりとだがこんな感じで、いいかなと。

 何日かかるか、しかし気にしてない。目的がないからね。

 韮山近くにある集落を通りすぎてひたすら歩く。

 道はあるものの、木々に覆われ獣道に毛が生えた程度の道である。

 一応街道を歩いているつもりだが、誰とも会わない。

 人も妖怪もだ。

 この時代、旅のような事をする人は限られていたから無理もない。

 ただ、ひたすら歩き、2日目のお昼頃ようやく三嶋大社と思われる場所につく。というのも、地図ほど大きくないからだ。

 取り合えず、鳥居をくぐり手を合わせご挨拶。

 さて、ここから西に向かい街道にそって歩いていこうとしたそのとき、声がした。

 男の野太い声である。『待たれい、そこの者待つがいい』

 「えっと、誰?」と軽く聞いているが、目の前には足の親指しか見えない。

 親指だけで既に僕よりでかいのだが。

 見上げると大きな男が社を椅子がわりに座り込んでいた。

 手には朱色の平たい皿のようなものでなにかを飲んでいた。

 『我か?我はおお・・・大山という』「大山さんで、良いですか」

 『良いぞ。しかし、本当に我の姿も声もわかるのだな』「えー一応」

 『どうだ、我の話を聞いてってくれんか?』これは、長くなる。直感がそういう。

 「リン、ソラどうする?」「「遊んでくる」」早いなオイッ。

 『まっまっ一杯』「これ、お酒ですか?まだ未成年な者で」

 『お主はかまわぬだろう』そう言うので、お皿を出して注いでもらう。

 透明の液体にアルコールの匂い。心地よくなりそうな日本酒である。

 料理酒として使っていた日本酒も、最高級の物だったはずだが、次元の違いを見せつけられた感じだ。

 おまけに、注いだ後の酒は、黄金のオーロラのように輝いていた。

 一口飲むたび、心地よさが沸き上がる思いになる。

 「リン、ちょっといいかな」「いいよーオツマミってやつでしょ。いいよー。ソラねぇはどうする?」「よくわからないけど、お手伝いするよ」と言い残し2人は姿を消す。

 しばらく沈黙が続き、ただ酒を飲んでいた。

 料理が出来上がり、届いたのは刺身盛り合わせだった。

 しかも、活け作り。鯛や鯵ならわかるが、鮪や鰹も活け作り。鮪なんてサクのまんまじゃん。

 まーそれでも目の前の大男もとい大山さんに比べたら砂粒のようなものだが。

 「大山さん、体の大きさって小さくできます?」『良いぞ』とシュルシュル小さくなり、2メートルくらいにまでなった。でかいけど人間サイズだ。

 流石にサクは、サクッと切り身の大きさにした。

 「どうぞ、召し上がりください」・・・・・・・・・『うまい』

 ニコッとするリンとソラ。

 「いこっ」と消えていった。

 『元気な娘ちゃんじゃのー。我もな、娘がおるんじゃ。まーなにずいぶん昔のはなしになるがの』

 「うーん一人っ子なんですか?」

 『いいや、2・・・二人だな』

 「へー僕も欲しかったな。姉とか妹とか。姉はしっかり者で、おしとやか的な。妹はキャッキャッしてるわりに真の強い子的な感じで」

 『ハハハ。人間もそんなようなものかの』

 「というと?」

 『我の娘がそんなようなものでの。妹が華やかで、姉がおしとやかなのじゃよ。でな、ある時男がな妹の方に恋をしたのじゃ』

 「めでたいじゃないですか」

 『そうじゃ。そこで我は姉も一緒に嫁入りさせようとしたのじゃがな』

 「一夫多妻ですか。大丈夫だったんですか?」

 『駄目だった。姉は身を引いてしまったのじゃ。あっちにの』と言い左手を伊豆方面に指した。

 『妹はあっちにいるがの』と右手で指す方角にあるのは、富士山である。

 『それでも妹は愛されたのだろう。身籠ったんじゃ。我も嬉しかった』

 「よかったじゃないですか。無事生まれたのですよね」

 『あーうん。無事生まれたぞ。その時に嬉しくてこれを作ったのじゃ。ホラ飲め』

 「トットトトト。いただきます」

 『だがの、その子達が生まれるとき、義息子がな、ホントに俺の子か?と疑ってな火を放ったんじゃ。おまけにの、妹の方だけが子供を生んでしまったことによっての人間の寿命も短くなっての。今じゃ40から50程度しかないんじゃよ』

 「へーそーなんだ」もし、姉の方にも子供が生まれていたらどうなったのだろうと聞いてみたくなったが、やめとこう。

 それに、富士山がモクモクと煙をあげているのは、噴火の関係では?というのも、グッと我慢だ。

 さらに、人間の寿命は・・・やめよう。

 『火は消えるかのー?人の寿命も倍くらいは延びるといいのー』と心配の声をあげる。

 僕の時代では、少なくとも富士山は静かである。

 加えて人の寿命も、80はあると思う。

 「あの山の火が消える頃には、人の寿命も延びていますよ。時間が解決してくれるのではないかとおもいますよ」

 『そうか、なら我はここから娘達を見守ろう。御馳走様。あの娘たちに礼を云っておいてくれ』

 静かに消えていく大山さん。

 完全に消えるのを待って、皿をまとめると家へと帰る。

 「ただいま」「お帰りーどうだった」

 「美味しかったよ。ありがとう」「どういたしまして」

 僕は、この笑顔をいつまで見守れるのだろうかと、思うのだった。

 

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