ボランティアという依頼6 鷹仁
『今日限定で、そこにダンジョンを持ってきて改造した。ダンジョンの強さは通常の160倍である。基本的には他のダンジョンと一緒だが報酬のアイテムや経験値と金額が変わる。アイテムを我々にくれればよい。まー必要に応じてアイテム使ってもいいけどな。わかったか』
ダンジョンの移動できるのは知ってたが、改造までできるとは思わなかった。
『先ずは武器を作れ』武器?僕が作るの?。
『早くしろ、時間がないぞ』そう、今日限定のダンジョンだと、後2時間半程度だ。
「どんな武器がいいですか?」「イヤイヤイヤ竹刀すらさわったことないし」マジか。それでダンジョン攻略とか?
「じゃ想像でいいので、どんな武器がいいですか?出来れば僕のわかる範囲で」「ほ、細いのかな。長さは長くもなく短くもないもの。ほらあの、西洋の剣みたいな」えっとレイピアかな。
「作ってみますね」鉄インゴットを加工して作ってみた。
出来はともかく、出来上がったものをポカンとしている姉さんに持たしてみる。
「これでいいですか?良ければ強化しますが」「う、うんこれで」
僕は、同じ型のレイピアを大量に作ると、一気に結合しちょっとやそっとじゃ壊れないだけの物を造り上げた。
『貸してみ』と取り上げられ、一振りすると海が一瞬割れた。
割れた海は、元に戻ろうとして渦巻いていた。
『まあまあだな』すると、何処からともなく布を取り出すとレイピアを拭い始める。
拭い終わると、レイピアを投げて寄越された。
その時、レイピアから細かい疾風が発生し女性の服を細切れにしてしまう。
僕の服も、かなり強化しているのだが、表面に切り込みが入るほどだ。
女性は、いきなり裸にされたので、一瞬固まったが、次の瞬間僕に背を向けお尻を手で覆いながらしゃがみこんでしまった。
大慌てで布の服を超強化して作り上げ、渡すも動かない女性。
スッと手が出てきたと思ったら、勢いよく着替え終わると「見た?」と聞いてくるので「見てない」と答えるしかない僕であった。
『これで、動きやすくなっただろ』とまで言われてしまう始末である。
僕は、海面に刺さるレイピアを引き抜・・・抜けない。
おもいっきり引き抜くと、液体であるはずの海が1つの塊になってレイピアが刺さったまま持ち上がってしまった。
海の塊は、スルッとレイピアから抜けて渦の真ん中に落ちると、渦と塊が溶け合うようにいつもの海面へと戻っていく。
そんな光景にポカンとしてしまう僕と女性。
『余興は終わり。早くいってこい』と、ダンジョン内に飛ばされてしまった。
「ここどこ?」「ダンジョンの中ですね」
「この服は」「ゲーム序盤に出てくる、布の服というやつですね。ただし防御力はラスボスを倒したときに出てくる鎧並に強いですよ」
「剣は」「ここに」
「で、ここどこ」「だからダンジョンですって?あれ?神経いっちゃってます」
「うん」「・・・」・・・数分後
「あれ?ここどこ?ていうか何この服ダサいていうか何で裸足なのよ。あっそれ私の財布。返しなさいよ」「正気に戻りました?」
「うーんどうだろう。取り合えず返しなさいよ。財布」「いいですけど・・・」
「何?」「この財布、マジックバックになってますよ」
「ハッ?マジッなんだって?」「マジックバックですよ。知りませんか?」
「知ってるよ。あれでしょ。青い狸のポケ」「まあまあまあそのようなみたいな」
「正気なの」「え~といたって」
「ちなみに、どのくらいなの?」「容量ですか?うーんコンテナにして2万個程ですかね。つまり大型貨物船並に入りますよ。って意識持っていかれないでください」
「だっ大丈夫よ」「あーそれに」
「まだ何かあるの」「これは貴女専用ですね」
「当たり前でしょ。私の財布なんだから」「そうなんですけどね、まー自分で確認してください。外出時は必ず付いてきますし、防水防音、熱にも強いですね。簡単に言うと、無くすことも取られることも壊れることもなく、大型貨物船並に入るって事ですね。因みに入らないものは他人の物位ですね。はいどうぞ」
「ど、どうも。成る程。貴方が言った意味わかったような気がする」「えー大事に使いこなしてください。それとー」
「まだ何かあるの?」「このレイピアなんだけど、草薙のレイピアという名前になってる」
「どういう事?」「んー草薙の剣って知ってる?」
「一応」「このレイピアは、草薙の剣をメッキしてあるんだ」
「つまり?」「僕が作ったレイピアに神様が神器である草薙の剣の力の一部を付与したといったところかな」
「マジ」「マジですよ」
「あと、このレイピアは、ずっと僕に攻撃というか害をあたえてきてます。僕は平気ですけどね。これも貴女専用ですね」「って事は、これを飾っておいたら」
「回りの人は、死にますね。ダンジョン以外で使わないことと、今後他の人とダンジョン探索するときは、他の武器を使うことをお薦めします」「じゃここを出るときはどうすれば?」
「財布にしまっとけばいいですよ」「成る程」
「はい、どうぞ」「う、うん。あっいい感じ。手に馴染む。動きもわかる。でも服はダサいけどまだいいとして、靴が」
「残り少ないけど、布の靴作りますね。あと、服直しますよ。そのまま直しますので、ムズムズしますけど我慢してください」「えっあっアンッアップアッもー何するのって?あらいい感じ」
「見た目は、スーツの女性ですけど、動きやすくなったと思います」「おーありがとう」
「じゃいきますよ」「何処に」
「ダンジョンですよ」「そうでした」
進む先に猫がいた。
「見ててください」「うん。おー手裏剣。おっ1匹貫通し2匹も倒したの」
「逆です。2匹しか倒せませんでした。全て倒すつもりでした。石の武器では限界なんだろな。ちょっとやってみてくれません」「うっ可愛い猫なんだけど、うーーーエイッ」
「残り4匹全て倒した。凄いですね」「いやー」
「剣が」「ですよね」
「僕の武器、変え時かな」「手裏剣ときたら、鎖鎌じゃない」
「いや、別に忍者目指してないし」「いーじゃん。私見てみたい」
と言われたので、残り少ないけど鉄インゴットを鎖鎌にしてみた。
ブンブン振り回し、遠心力を得た分銅は勢いよく猫を貫き2匹目で止まった。
ただ、可笑しいことに鎖がゴムのように伸びたような。
分銅の威力は、今の手裏剣と一緒位のようだ。
鎖の持つ手をクイッと動かし、分銅を引き寄せると同時に猫に接近し鎌を降る。
残り全ての猫が消えていった。
遠距離攻撃から一変、接近戦になるが問題はない。
「それでは、始めますか。今から各階リアルで20分ずつでいきます。Hp、Mpは随時僕と共有されるようにしたので、体力や精神力が減ることはないでしょう。また、疲れも随時取りますので、どんどんやってください。ただ、階を移動するのはやめてくださいね。ひたすら敵を倒しアイテムを財布にしまうというものです。飽きたら神様に文句言ってくださいね」
そう言い残し、僕は攻略を始める。
暫くすると、一気に疲れが流れ込んできた。
続けること、ダンジョンタイムで10時間、次の階へ。
カナブンがいたので、倒してみると鉄インゴットを落とした。
160倍の影響だろう。
ここでは、鎖鎌を強化しながら攻略する僕と、既に単純作業かしたお姉さん。
盗人、女盗人からは、ポーション、Mポーションと収納していく。
5階にいたのは初めてみる魔物ハクビシンだ。
それをお姉さんに伝えると「私にとっては全て初めて。動くヌイグルミ、でかい虫、動くマネキンとしか見てない」と、神経いっちゃってます感じ。
僕は、サイダーに舌鼓を打っていた。
最終ボス、目の前にいるのはゴキブリ。
嫌な予感しかしない。
部屋が広すぎて壁が見えない位だ。
案の定爆発的に増えるゴキブリを退治する。
1匹からでるアイテムは金塊だ。
どの位時間がたったのだろう。
ようやく少なくなり、最後の1匹だ。
「これで終わりだね」「うん。どうぞ」
お姉さんに倒されたゴキブリからは、金鉱石が表れた。
「これは?」「タイムオーバーそれが本来のゴキブリを倒した報酬の金鉱石だよ。記念にもらっておいたら」
「うん。そうするよ」「あっそうだ」
僕は、今得た金塊を大量に出すとレイピアに加工して結合させ、1つの黄金のレイピアを作る。
「はい、プレゼン」「ありがとう」あまり嬉しそうな顔はしていない。
そして、物凄く項垂れるのであった。
「人間卒業、おめでとう」