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ボランティアという依頼4 鷹仁

 続いて降り立ったのは、静岡・富士山空港。

 飛行機の中から見ててわかった事だが、迎えが来ていない。

 そしてもう1つ。

 「富士山遠いな」と空港の展望台から富士山を眺めていると、「あのー」と声をかけられる。

 振り向くと、スーツ姿の男性と迷彩服の男性が2人。

 「夜鷹の、いやいや井宮鷹仁さんですか?」「はい、何故か夜鷹と呼ばれてる者です」

 「本日はお越しくださいありがとうございます」「あっあの僕は何をすればいいのですか?」

 「詳しい話しは、この2人から聞いてくださいね」「「「えっ?」」」

 「えっ?」「私たちも詳しくは聞いてませんよ」迷彩服の1人が答える。

 「そうなの?」「はい、私たちは、3箇所の場所を示され、極秘任務としか聞かされてないです」

 「それでいいのだ。その場所に着けば、彼が自ずとわかるから」「えっと、僕ですか?」

 「じゃ、頼んだよ」そういうとスーツの男は足早に去ってしまった。

 ?満載の頭をかかえる3人。

 「あっあの。改めて、井宮鷹仁といいます」「私は自衛隊所属のAだ。」「同じくBだ」

 「えっと」「本日はよろしく頼む。何を頼むのかわからないが。あと、我々は今回名乗らなくて良いことになっているので」「同じく」

 「なんかよくわからないけど。わかりました。行けばわかるということなら行きましょう」「よくわからないが、ご協力感謝する」「よくわからないが、此方です」

 案内された先に置いてあったのは、自動車ではなくヘリコプターであった。

 すでに、ヘリがぐるぐると回っており、すぐにでも飛び出せそうなヘリコプターに乗り込むと、飛行機とは全く違う空の旅となった。

 山を越え、川を越え、街越えて、目指すは富士山の方角のようだ。

 「あのー」「なんでしょう?」

 「砂利が沢山あるあの場所はなんでしょうか?」「えっと、砂利?川の事ですか」

 「あれ?やっぱり川なんですね」「そうですね」

 「川幅大きいですね。水が流れてないように見えるんですが」「流れてないですね」

 ぼんやりとだが、僕の頭の中で、川幅を狭くすればいいのにと思うのであった。

 ヘリコプターは、ズンズンと進んでいき、気が付けば富士山を目の前にしていた。

 遠くから眺める富士山と違い、近くでみる富士山は、ゴツゴツした岩肌を象徴するかのごとく迫力のある山であった。

 自衛隊員のA、Bは地図を照り会わせながら、森林地帯を飛んでいる。

 富士山だけに、樹海という言葉の方がしっくり来るかもしれない。

 「ここですね」とある場所につき言われたのだが、何もないように感じる。

 あるとすれば、ヘリコプターの真下に大量に置かれている何かだ。

 ヘリコプターの高度を下げてみると見えてきたのが、不法投棄の山であった。

 着けばわかる。つまり不法投棄の回収が今回の仕事のようだ。

 「ここは」「知ってるんですか?」

 「あー大々的にやっていた悪徳回収屋の跡地だ」「なるほど。それで不法投棄の山なんですね」

 「あー摘発されてな、確か管理は県がおこなってたような。しかしここに来ても何をすればいいか?」「大体想像つきますよ。もし詳しく知ってるならここの事を教えてください」

 「そんなに俺も詳しいって程じゃないのだが、確か・・・」

 聞く話によると、燃えるごみから燃えないごみと家庭的の物から、電化製品や家の廃材、工場から出るごみや廃油等も捨てられているらしい。

 少なくとも回りの土壌にも影響があるとのことで、よく見ると枯れかけてる木も数本確認できた。

 「あの建物は?」「電気もガスも通ってない掘っ立て小屋だ」

 「わかりました。あの、地面に一番近いところでホバリングして頂けませんか」「いいけど。何をするんだ?」

 「口では説明できないので」「わかった。ここが限界だ」

 丁度全体を見渡せる位置まで降りてきた。

 僕はバリアを展開する。

 シャボン玉のように薄い幕を、全体に覆うと色んな破棄された物の情報が入ってくる。

 冷蔵庫、洗濯機、テレビと定番の大型電化製品からミキサー等の小型電化製品、家具類、本や雑誌、玩具やゲーム類、人形やフィギア、工場から出たであろう廃材や廃油、廃油に侵された土壌や植物、持ち込まれた植物も確認、ありとあらゆる物を包み込み収納する。

 その瞬間、今まで廃棄場所を棲みかにしていた小動物や虫が一目散に逃げ惑いしながら去っていく。

 直後、ヘリコプターがグラグラと揺れ始める。

 運転手のメンテが崩れたようだ。無理もない。

 「ちょっと、落ち着いてください」「落ち着けって言われてもだな」

 「いいから、冷静に。じゃないと墜落しますよ」「墜落だけは。でも」

 「でもも案山子(かかし)もないですよ。君もなにか言ってくれ」

 良いのかなー?じゃ遠慮なく「これは、極秘任務ですよ」

 「そうですよ。これは極秘任務ですよ」「なんのフォローにもならん」

 等と数分たちようやく鎮まったヘリコプターは次の場所へと移動を開始する。

 「さっきのはどうなったか聞いても?」「良いですけど、特殊任務ですよ」

 「極秘任務な。もういい、聞かぬが仏のようだ」「そうですね」

 説明しづらい僕は助かりました。

 その後2件の回収が終わり、ヘリコプターは近くの自衛隊の基地へ着き、そのまま自動車に乗り込み最寄りの駅へ着くと「我々はここまでです。ご協力感謝します」と言い1つのメモを渡された。

 僕はメモを読まず、「ありがとう」と、車を降りる。

 降りたあとで、運転席の扉を叩くと、窓を開けた運転手が「まだなにか」というので、「今日のお礼」とバックを2つ運転席に放り込んで駅へと向かった。

 メモに従い、切符を買い西方面に向かう電車に乗る。

 電車の中で、不法投棄されていた物を修理しながら、例の川の上を通りすぎる。

 やはり、近くでみてもほとんど水流れてないじゃんと思ってると、「今年は一段とやる気ないな。この川は」「だねー」という声が。

 川にやる気って、と思ってるーーその頃ーー


 バックを2つ運転席に放り込まれて、2人は固まった。

 2人の頭の中に、お礼=口封じ=死=バックの中は爆弾、となったからだ。

 バックはそこそこ重いし、開ければ爆発するとも思う。

 彼が、駅に入ったのを確認すると、そーっとバックを後ろの席に移動するつもりが、手を滑らせ落としてしまう。

 咄嗟に車から出て、地面に伏せ頭を手でガードする。のだが、一向に静かなままだ。

 「ママー見てあれ」「シッ見ちゃいけません」・・・

 何も起きないなと思い、顔をあげるとそこには制服警官がいた。

 「何かあったのですか?」「いや、あの、そのバックが」

 「バック?」「ばっばか」

 「怪しいですね。バック調べさせてもらいますよ」「よせ、いや、あの頼む」

 「いいのですね。オイッ」

 制服警官が、若い警官に指示をだし、バックを調べさせると、バックを開けた警官が一瞬動きを止めたが、メモを見つけメモを手に戻ってくる。

 「警部、これを」「ん?ナニナニ。今日回収分の中にあるタンス預金と思われる分を山分けしましょうー夜鷹の宮遊びー」だと。

 「警部、大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ」

 我に返った警部と呼ばれた警官は、無造作にメモをバックに戻すとバックを閉め投げるように後部座席に置き、自衛隊2人を無理矢理車に押し込んで、出発させると、何事もなかったかのようにパトカーに乗り込む。

 慌てて若い警官がパトカーに乗り込むと「怪しいですよ。さっきの大金といい夜鷹の宮遊びでしたっけ。すぐに調べましょう」と。

 警部の顔が深刻になり、若い警官は息を飲む。

 「ニード・ナットウ・ノウ」

 若い警官は、何も言えなくなった。くわえて、警部が単語を間違えてることも指摘できないままであった。


 その後、自衛隊2人は上司に任務終了の報告とバックを渡す。

 バックを渡された上司は、苦虫をかじるような顔をしてバックの中を確認しメモを見つけるや叩き返されてしまった。

 訳がわからず、上司の部屋を出る。

 少し廊下を移動し、2人でバックをどうしようか悩んでいると、勢いよく上司の部屋の扉が開くので咄嗟に物陰に身を隠す。

 ぶつぶつ言って近づいてくる上司の声がはっきりと耳に入ってくる。

 「くそッあんな大金見せられたら気分悪い。金は欲しい。欲しいが触らぬ神に祟り無しじゃ」と通りすぎていった。

 完全に通りすぎていくのを見送り、「た、大金なの」「てっきり爆弾か何かだと」「そういえば」「中確認してませんでしたね」

 2人は、自分が使っている部屋に戻る。

 この部屋を使ってるのは、今居る2人だけだ。

 ここでならバックの中を誰にも見られず確認出来る。

 バックの中は、新券帯び付きだった。

 つまり、1万円札100枚束になり紙で出来た帯が巻かれている状態のが、30個入っていた。

 何気に手に取る。

 ぺらぺらとめくってしまう。

 静かな部屋の中で、何時までも新券のパキパキという音だけが響きわたっているのだった。

 

 

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