6件目 僕の妹が唯一真面目な件について!
「ただいまー」
午後の授業も終わり家に帰ってきた僕。
茜を待っていると少し遅くなってしまった。
扉を開けるとまたしても、朝のように怒声が聞こえてくる。
「だーかーら、結衣さん服着てって言ってますよね! あと、牛乳飲む時、コップ使ってください! 毎日毎日言わせないでください!」
「そんなこと言われてもふわぁ〜」
結衣さんは全く気にもせずにあくびをする。
それに対して、真冬はまたしても、怒声を上げる。
「人が怒ってる時に、なんであくびをするんですか!」
「だって眠いんだもん」
「とにかく服着てください! お兄ちゃんが帰ってくる前に早く!」
もうすでに帰ってきてるんだけどなぁと真冬にツッコミつつ、僕はリビングの扉を開ける。
「ただいま、真冬と結衣さん」
「あ、お兄ちゃんおかえり」
「一輝くんおかえり〜」
「また結衣さん、下着姿で……」
はぁと僕は溜息をつく。
本当に目のやり場に困ります。
「ほら、結衣さん! お兄ちゃんも困ってるんですから! 早く服着てください!」
「そんなことないよねぇ、いっくん」
「いや、普通に困りますから……」
やはり目のやり場に困ってしまい真冬の方ばかり見てしまう。
すると真冬はそんな僕を見てため息をつく。
「とりあえず服着に行きますよ」
「ふわぁい」
「真冬頑張ってね……」
僕もため息をついて、ソファに腰掛ける。
真冬は頑張り屋さんだから、結衣さんを矯正しようと頑張ってるんだけどどうにもいかないのが現状なんです。
柊真冬、中学三年生。
僕の妹で今年受験。
身長は僕より頭一つ分小さい。
黒目で、黒髪ショート、いつも赤色のシンプルなカチューシャをつけている。
なにより僕よりも頭が良い。
そして兄と妹の一番の違いは妹のほうがダントツでモテるということ。
唯一の欠点としては、怒ってるときと、普通のときの差が激しい。
まぁ、僕の周りの女の子は基本モテるんですけどね。
その中でも段違いです。
なんでも、真冬の友達から話を聞くと、ほぼ毎日の放課後が告白で潰れているそうです。
なんで付き合わないんでしょうか? 不思議に思います。
「お兄ちゃん、結衣さんの着替え終わったよ」
そう言って、結衣さんをひきずって出てくる真冬。
てか結衣さん寝ちゃってます……
「うん。これで目のやり場に困らないよ。ありがとう真冬」
「別にお礼言われるほどじゃないよ。何か飲む?」
「牛乳かな」
「あ、牛乳は結衣さんが口つけたから、また買ってくるね。お茶でもいい?」
「いや、別に口つけててもいいよ?」
「いやいや! だめでしょ! お兄ちゃんには、茜さんっていう彼女がいるんだから!」
「そ、そうだね。ごめん」
「謝るなら、茜さんにでしょ!」
「いやそれは死ぬから。僕じゃなくて結衣さんが」
僕は真顔でそう言う。
「え?」
「い、いやなんでもない」
真冬は茜がヤンデレということを知らない。
というより、知っていれば付き合っていることに大反対するだろう。
真冬は僕には、普通の人生で、普通の幸せを送ってほしいそうなんです。
なんでかは知らないですけど。
「ふーん? なんか怪しいけど……まぁいいや。てことで、お茶でいいよね?」
「う、うん」
危ない危ないと冷汗をかく僕。
真冬は油断なりませんから気を抜くことができません。
「はい。お茶」
真冬はそう言うとお茶をテーブルの上に置く。
「ありがとう真冬」
「ううん。じゃあ買い物行ってくるね」
そう言うと、真冬は買い物カバンを持つ。
「じゃあ言ってくるねお兄ちゃん」
「うん、行ってらっしゃい。あまり遅くなるなよ」
「うん!」
僕は真冬を見送ると、寝ている結衣さんに毛布をかけた。
次回は真冬視点です!