13件目 僕の帰り道が修羅場すぎる件について!
授業も終わって帰り道。
今は僕、茜、そして転校してきた従妹こと陽菜、の三人で一緒に帰っている。
ちなみに、茜と陽菜の間に僕がいる。
二人ともニコニコ笑ってて怖いんですけど……
「…………」
「…………」
「…………」
学校を出てから、早くも5分ほどが経過する中で誰一人とも喋らない。
き、気まずいです……
「…………」
「…………」
「…………」
10分経過。
挟まれてる僕の身にもなって欲しいんですけど……
「…………」
「…………」
「……ねぇ一輝くん?」
15分が経過しそうになった時、ついに沈黙から解かれる。
や、やっとです………
茜が立ち止まり僕と、陽菜も立ち止まる。
「うん? どうかした?」
「どうかした、じゃなくてそろそろ説明してほしいんだけど」
茜はニコニコしながらそう言う。
しかし言葉の裏には、「そろそろ我慢の限界なんだけど」というのが隠れていそうだ。
なんかヤンデレモードっぽいです……
「う、うん。じゃあ紹介するね。僕の従妹で陽菜」
「陽菜です」
ペコリとお辞儀をする陽菜。
陽菜が礼儀正しいなんて珍しいです。
「従妹?」
「うん」
「てことは将来私の親族になる人?」
一気に脳内お花畑になる茜。
「う、うん……そ、そうなるんじゃないかな?」
「…………」
照れながら言う僕と、無言で顔が真っ赤になる茜。
それを脇で見ている陽菜はどこか不満そうだ。
「茜さんってお兄さんと付き合ってるんですよね?」
「うん。そうだよ? あ、私のことはお姉さんって呼んでね?」
やはり脳内お花畑な茜。
全く気が早い茜です。
まぁそこが可愛いところなんですけどね。
そんな中、陽菜は一気に茜を現実に突き飛ばす。
「唐突で悪いんですけど、お兄さんと別れてくれませんか?」
陽菜は微笑みながらそう言う。
「…………」
「…………」
もちろん僕と茜は無言だ。
「……もうなんて冗談言うの? 陽菜ちゃんは可愛いね」
怒りを抑えて笑顔で陽菜の頭を撫でる茜。
茜が我慢するなんて、珍しいどころじゃないんですけど。
先生にも突っかかる茜が我慢するなんて……ほんとにすごいです。
しかし陽菜はそんなこともお構いなしに、茜の手をどける。
「冗談じゃないですよ? 私はお兄さんのことが好きなんです」
そう言って僕の腕に胸を押し付け抱きついてくる。
「ひ、陽菜!?」
「…………」
茜さんはまだ、笑顔を保てている。
しかし、ほぼ我慢の限界といったところだろう。
「ふふ、陽菜ちゃんったら。一輝くんとは、いとこ同士なんだから、もし私と一輝くんが別れて付き合ったとしても結婚できないでしょ?」
「いえいえ? 知っていますか茜さん。いとこ同士なら日本の法律上は結婚できるんですよ?」
「…………」
「…………」
二人とも一歩も引かない。
僕のことなのに、何故か僕蚊帳の外なんですけど……
「それに私、茜さんじゃ、お兄さんと釣り合わない気がするんですよね」
いやいや。僕が茜さんと釣り合わないって感じですよ。
「なんで陽菜ちゃんにそこまで言われないと、いけないの? 大体一輝くんも私のことが好きなんだから今こうして付き合ってるんだし。そもそも関係ないよね? ただの従妹なんだから」
ついに我慢の限界がきた茜。
ぶ、ブチギレのようです。
「ま、まぁまぁ茜落ち着いて?」
「う、うん」
僕は少しヒートアップしている茜をなだめる。
このままじゃ、陽菜が危ないっていうか、殺されちゃいそうですし、ヤンデレってバレたら、余計たちが悪くなりますからね。
「ふむ。そうですね……じゃあこうしましょう!」
何やら思いついたようで陽菜は茜を指差す。
「私と今度の日曜日勝負してください! 茜さん! もし茜さんが勝てたら、その時は、嫌ですがお兄さんのお嫁さんとして認めます!」
「お、お嫁さん!!」
茜はボンっと一気に顔が赤くなる。
てか反応する場所そこじゃないですよね……
「お、お嫁さん……」
ニヤける茜。
「……聞いてますか? 茜さん」
「き、聞いてるよ?」
かろうじて正気に戻ったらしく返事をする。
「ならわかりましたね?」
「う、うんお嫁さんになるため……えへへ」
「……と、とにかく今は帰りますよ」
「う、うん。茜行くよ」
「お嫁さん……」
ニヤける茜の手を引いて僕達は歩き出した。
(結局茜が正気に戻らないので家まで送り届けました)
読んでいただきありがとうございました!




