第八話・お前なんかだいっきらいだ!
今日は清々しい、いい朝だ。
気温も徐々に上向いて……来てはいないな。相変わらず寒いがこればっかりは仕方がない。
俺は早速、今日のお祈りを創造主と尻神様に捧げる。朝の祈りは下界に住む者たち全ての嗜みだ。
「おはようございますラスティ様……何してるんでしょう」
「宗教上の理由です」
「……それはいいのですが、なぜ私の背面に回り込む必要が?」
「それは最上の尻を拝ませて頂くためです。本来であれば唯一神であらせられる尻神様ではありますが、命のため、二つの神に祈ることにご理解下さい」
ああ、今日も神は慈悲深い。この世の極楽のような笑顔で俺に微笑みかけるのだった。
「セクハラに関する問題を送信しました」
結局俺は昨日一日、尻神様と話し込んだ。
人口知能、もとい魔法知能と一日中話をしていたなんて言うとヤバい人みたいだが、いやいや、もう本当に普通の人? 魔王? ですわ。あれた多分中の人がどっかにいるわ。終いには眠いとか言って先に寝てたし。
「それじゃあ、ちょっくら行くとしますか」
今日はひとまず、狩をしてみる予定だ。
昨日の話によれば、俺は今年中に「功績」なるものをあと800000Pほど溜めなくてはならないらしい。先ほどの創造主への祈りも1Pだ。正直焼け石に水なのは分かっているが、万が一と言うことがある。寿命を迎える日、999999Pでした、では笑えないのだ。1Pを笑う者は1Pになく。鉄則だ。
魔物を倒してもやはり1Pにしかならない。
今までの狩では、多くても一日に12、3Pが関の山だった。だがこれは、獲物を売りに行くことによるロスが大きかった。もし一日で300百匹くらい倒すことができれば、このポイントだって無駄にはならないだろう。かなり無謀な数字ではあるが。
「魔王入門」
俺は手元に、いつもの赤い本を召喚する。
言わずと知れた、俺のメイン武器であり、メイン防具である赤い本。今日からまたしばらくお世話になるつもりだ。よろしく頼みます、先生。
「……?」
なんか尻神様が、体をこわばらせている。何か我慢でもしているかのようだ。トイレは我慢しない方がいい、尿の濃度が上がると、有害物質を体の方に吸収してしまうからだ。魔法知能ってトイレ要るの?
「えーと、大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
顔も赤いし、とても大丈夫そうには見えない。何より、なんというか……全体的に、艶っぽくなってません?? そんな表情され続けると、俺の方が大丈夫じゃなくなりそうなんですが……
しかし今は、そんなことより狩の方が大事だ。尻神様だって大人なのだ、自分の体調くらい自分で管理できるだろう。大丈夫だと言われたら、それ以上の詮索はしてはいけない。それが信頼と言うものだ。喩え「あいつは話を聞かないからなぁ」とか思ったとしても、一度は信頼してやるものなのだ。
俺は今日からお世話になる赤い本の、題字の部分に何気なく触れた。
「ひぁっ!?」
今まで冷静で温かみのある声を俺にかけてくれていた尻神様だったが、突然ネコみたいな声出したぞ!? 大丈夫かと思って振り返っても、尻神様は平然を装うだけ。が、目線だけは恨めしそうに俺の手元を見ている。
俺は指を動かしてみる。クリクリ……
「……っ!!」
わ、絶対コレだ、原因!
「えーっと……?」
「そ、その……「魔王入門」は、わたくしの本体であり、大事な部分なので……」
体中からじとじとと嫌な汗が流れてくる。俺はたまらず、魔王入門を消した。
俺がもう少し成熟してれば「誰がご主人様なのかたっぷり教えてあげよう」みたいな展開も多分いけるんだろうけど、正直ムリですごめんなさい。
魔王入門が消えると、尻神様はふう、と安心してくれたようだ。
だが今度は、俺の方が気が気でならない。だって俺はこの魔王入門、いままで散々武器だの防具だのとして使ってきた。あまつさえ火にくべたことさえあったのだ……!!
「ごごごごごごごごめんなさい」
「どうかしましたか?」
尻神様はいつもの笑顔で微笑む。
「その、知らなかったとはいえ、尻神様の大事な部分を今まで乱暴に扱ってきたから……」
「なんのことですか?」
ああ、よかった。尻神様は恨んでいなかった。
おそらく、この機能がオンのときだけ起こる現象なんだろう。俺は心から安堵した。
そして尻神様は続けた。
「毎日毎日私のお尻でカエルの頭潰したり、気持ち悪いカエルに何度も飲み込まれたり、生きたまま日にくべられたり、こぼしたお茶を拭くために体の一部を破られたりしたことなんて、全然恨んでいませんが?」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
やはり物には正しい使い方があったのだ。ここまでの戦いは、俺の好感度とドレードオフだったようだ。
しかし弱った。
いわずもがな、魔王入門は俺のメイン武器だ。同時にメイン防具でもあった。
尻神様にあんな表情をされてまで魔王入門を酷使していけるほど、俺は利己主義ではない。
俺はこの事件で、メイン武器と防具の両方を失ってしまった。
「やっぱり、自分の”力”で戦うものなの?」
ここでいう力とは、生まれ持った魔王としての属性のことだ。俺の場合は【ゴミ】である。
「そうですね。支配的な能力の多くは戦闘に向いていますから、ラスティ様のように別の手段を模索する方が稀ですね」
と、曰く尻神様。
確かに銃魔王の無限銃弾とかがあれば、それを生かすように戦っていくのは自然と言えるだろう。
「……で、俺のスキルってなに?」
「昨日も申し上げた通り、今のわたくしには鑑定機能がありません。戦闘を見せて頂いた限り、少なくとも「支配」「強化」「同化」は持っているようですが……」
判明しているスキルはこの三つ。
【支配】
自分と同じ属性のものを操る。「支配的なスキル」の代表ともいえる。
その命令を遂行するために体を一度だけ強制的に「再生成」させることもある。リリィちゃんをうっかり生み出してしまったのも、この力だ。あと能力も上がるみたい。
ちなみに「支配的なスキル」っていうのは、魔王だけが使え、自分の属性をメチャクチャ有利にできるチートスキルたちのことみたい。
【強化】
自分と同じ属性の相手を強化する。銃魔王は支配下にある相手、と言っていたが、正確には支配可能な相手、ということのようだ。そりゃそうだろう、でなければ【支配】を持っていることが前提になってしまう。とはいえもちろん【支配】とのシナジーもあって、支配中は強化効率が跳ね上がるとのことだ。
普通自分自身が自分の属性など持っていないため、自己強化はできない。
俺も試したが、今はムリだ。どうも相手から【ゴミ】呼ばわりされたことで自分も【ゴミ】属性になったものだとばかり思っていたが、そうではなかったようだ。
強化は必然的に、使いやすい武器や部下が必要になってくるため、使いづらいハズレ能力らしい。えええぇぇぇ。たしかに【星】属性で強化しか持ってなかったら、キラキラさせるくらいしか使い道なさそうだけど……
【同化】
自分自信に、自身の支配的な属性を追加する。周囲に同属性の物体があれば、それを使って強制的に再生する。または、支配的な属性に自信を溶け込ませる。
……何言ってるのか分からないと思うが、たとえば【水】の魔王なら、水のあるところでは無限再生する。んで、体の形を保つだけじゃなくて、自分自身が水に溶け込むこともできる、と。
俺が先の戦いで、自分自身を【強化】できた要因は、どうもコイツのおかげらしい。なんか結構違うこと言ってたような……適当言ってるんじゃねーぞ、無敵モードの俺! まああの時は自分に対して「支配」も使ってたんだから、嘘ではないが。
え、これ最強じゃね……? 少なくともこれがあれば、死にはしないみたい。ありがたい。
が、これの一番のネックは消費魔力量。再生系はケタ違いに魔力を消費するようだ。魔力量が尽きれば当然再生できずに死ぬ。さらに、その状態ではほかの能力も使えなくなることが多く、結局死ぬことがおおいようだ。
あくまで保険程度に考えるのがふつう、とのことらしい。
銃魔王は「生成」とか「創造」とか「再現」とか、その辺の能力を持っていそうだったが、俺にはそれは無いみたいだ。よかった、ゴミ生成の魔王とか嫌すぎる。何もしなくて速攻で「汚物は消毒だぁ」されるところだった。
と言うわけで、アタリ、ハズレ、微妙とより取り見取りの能力を持ったわけだが、この「支配的なスキル」、普通は一つしか持ってないものらしい。多くても二つで、三つと言うのはかなり異常な状態みたいだ。まあ俺はステートが死んでるわけだし、多少はね……?
さて、ここまでの情報によると「同化」を使えば「強化」も使えるはずだ。やたらと身体能力が上がっていたので自分に強化が使えれば、素手でも戦えるかもしれない。
……と思ったのだが。
「あれー? 同化、できなくね?」
同化が発動する気配がないのだ。
強化なら、たとえばその辺の枝を対象にしている感じがするし、支配なら「あ、これ以上魔力込めると発動しちゃうな」っていうのがなんとなく分かるんだが、同化に関してはそれが全くない。
「俺、本当に同化できるの……?」
「もしかすると、どれかのステートがキーになっているのかもしれません。可能性が高いのは魔操作でしょうか」
つまりこういうことだ。
前回の戦いでは、まず「支配」が発動。その発動によって俺の基本能力が上がり、「同化」の条件を満たす。そして「同化」が発動し、自分自身「強化」できるようになった……。
なにこの芋蔓式!?
「てことは結局「支配」使わないとダメってこと……?」
「ご自分を強化されたい場合、そうなりますね」
流石は「魔力量 激高」「魔法適正 なし」の俺だ。かゆいところに手が届かない! また宝の持ち腐れモードに入っているようだ。
くそー、俺もあの体がカサカサーって崩れたりするやつ、楽しみたかったのに!
自分自身にかける系は論外であることがわかった。なので次に、外にかける系を試すことにする。
無敵モードの時は、折れた剣でさえ魔剣に生まれ変わっていたのだ、これはいけるはず……
と思っていた時期が私にもありました。
「ん~?」
今先ほどの枝を手に取って、強化を試している。
確かに強化がかかっている感じはするのだが、何とも頼りない。試しにこの枝で木を叩くと、ペキッといい音をたてて折れた。
「これも能力不足?」
「その可能性もありますが、その枝に適正が足りないのではないでしょうか……?」
曰く、同じ【火】属性でも、蝋燭の火と大量の溶岩ではその適正は大きく違う。
同じように、森に落ちている木の枝は【ゴミ】属性ではあるものの、森の養分であり、虫たちの隠れ家になったりと様々な役になっているため【ゴミ】としての適性が下がっているのではないか、と言うことだった。
属性さえついていれば弱くとも強化や支配はできるみたいなので、今度はもう少し魔力を込めてみる。
「はぁ、はあーっ……」
ものすごい無理やり魔力を押し込むイメージになるので、これはかなりしんどい。
が、その成果もあって、俺の「支配」によって再生成された枝は見事にペーパーナイフ変化した。……こんだけ頑張ってペーパーナイフって……
支配している対象は飛ばしたりもできるので、2m先の木に刺さるように命令する。
するとナイフは酔っ払いのようにふらふらと飛んでゆき、ぶつかったところでカランとかわいい音をたてて落ちた。
「これ、どう思う……?」
「工芸屋さんが開けると思います」
そういうことを聞いてるんじゃないんだなぁ……。
ここまでの実験で分かったことから考えられること。
俺の適性。工芸品店。お土産屋さん。リサイクルショップ。etc
どう考えても戦闘に向いてないんだなぁ……!
「いっそ、何もしなくても功績が貯まる方法とかないかなぁー」
「何ダメ人間みたいなことを……あ。そういえばありますね」
「え!?」
俺だって楽したいってわけじゃないけど、戦う手段がない。
それが以外でポイントが稼げるとなればありがたい。
「というか、すでに来てますね。121Pですが、ラスティ様の功績に統合しますか?」
これは何のポイントなんだろう。
「所有者は”リリィちゃん”さんとあります」
「リリィちゃん!」
懐かしい名前に思わず声を上げた。
俺が初めて力を使った、相手だ、よく覚えている。
彼女は俺を殴り、けとばし、地面に突き刺し、罵倒して勝手に出て行って……あれ、いい思い出がひとつもないな、おかしいぞ?
彼女は俺のうっかりミスで自由を手に入れ、俺の支配下に居るのにまったく言うこと聞いてくれないのだ。
だが彼女はいまだに無事で、がんばっているらしい。すこしほっとする。
「そっか、リリィちゃん、頑張ってるんだな。あ、あと敬称は”ちゃん”か”さん”のどっちかでいいと思うぞ」
「分かりました。あ、またリリィさんのポイントが増えましたね」
「へぇ、何ポイント?」
「200000P増えて、200121Pですね」
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
それ絶対魔王撃破してるよね!!?? 何してんの!
「相手は毒の新人魔王、テトロドンですね」
あー、毒で新人っていうと、スクールで俺に絡んできたあいつかあ。まあ、因果応報だよね。ご愁傷様。
でもそれだけの功績値となると、勝手にもらっちゃうのはどうなんだろう……? リリィちゃんだって魔王と戦ったってことは、苦労して手に入れたポイントだろうし……
「支配下の相手のポイントは基本的には魔王様のものですが」
と尻神様は言って下さるのだけど、断りもなしにってのはちょっとなぁ気が引ける。
「では、断りを入れればいいのではないでしょうか」
いや、だって相手がどこに居るかも分からないんだし……ん?
「もしかして、尻神様にそういう機能あるの?」
「いえ、わたくしにはありません」
なんだやっぱりそうか。ポイントの受け渡しができるのであれば、通信くらいできてもおかしくないとは思ったのだが、残念だ。
「ですが、支配下の相手とは遠隔での通信ができるはずです」
おぉ!? 流石に支配というだけのことはある。さすがの多機能っぷりだ。
早速俺はリリィちゃんに通信を試みる。
プルルルルル プルルルルル
「な、なんか頭の中で聞きなれない音が響いてるんだけど」
「通信音です。そのまま相手が着信拒否しなければ、通信が開始されます」
あ、拒否できるんだ。
そういうことは先に言っておいてほしいな。拒否されたらどうしよう。なんかショックを受けてしまいそうだ。
だがそんな心配をよそに、頭の中では「接続されました。通信を開始します」という声が流れ、目の前に半透明のスクリーンが出現。通信が開始されたようだ。
「ちょっと! あたし今忙しいのよ。何の用」
相変わらずの高飛車な声に、なぜか安心感すら覚え……え!?
俺はその光景に目を疑った。
リリィちゃんは相変わらず面積の少ない鎧で、禍々しいデザインの椅子に座っている。おそらくテトロドンが使っていたものだろう。その椅子に遠慮もなく深々と座る姿は、完全に魔王の風格だ。
カメラ目線がローアングルなのも威圧感を増している。ていうかかなりドキドキするアングルだ。このカメラの位置って誰の趣味なんだ? 俺の? それともリリィちゃん……?
が、そんなことはどうでもいい。問題は、その周りの光景。
そこには背の高い男たちが!
肩をもみ! 足をもみ! 胸を……や、流石にそれはない。優雅にリリィちゃんを扇いでいる。より取り見取りの男たちで囲まれているのだ……! 完全に逆ハーレム状態。こっちは森の中で一人耐え忍んでいるというときに、なんて奴!!
「おっ、お前、何してんだぁぁぁぁぁ!!??」
「何よ! 人がどうしてようと勝手でしょう。あーんただって、女侍らせてるじゃない!!! 何してんのよ!!!」
なんか向うの方が怒っている。理不尽だ。
それに、それは心外な勘違いだ。まずはそれを正す。
「彼女は神だ」
見れば分かるだろう全く。
「いえ、私は魔王入門のガイド機能ですが」
尻神様は、俺の女と言われたことに納得がいかないらしい。珍しく露骨に嫌な顔をしている。
なんで?
「フン……で、要件は何よ。ポイントなら上げないわよ、私弱い男に興味ないから」
流石にこの言葉にはカチーンと来た。
「いや、お前のポイントなんぞいらん。見てみろ、俺のポイントを!」
そうして、画面に二人分のポイントが表示される。
ラスティ:200218P
リリィちゃん:200121P
ドヤァァァァァァ!
そう、ポイントだけなら俺は勝っている。毎日狩をしていたおかげだ。
俺に負けたことがよっぽど悔しかったようだ。リリィちゃんは身を乗り出して目を見開いている。この体制、すごくよくおっぱいが映……いや、そんなことより、俺は弱くない! 決して弱くないのだ!
明日から戦う方法にすらこまっちゃいるが、この場で頭なんか下げられない。守ったら負ける、攻めろぉ、なのだ。
「ウ、ウソよ! こんなの何かの間違いだわ……」
あ、ヤバイ。これ、なんか気持ちいい。
人間、もとい魔王、いつもいい魔王でいる必要なんかないのだ。たまにはイヤなやつにならなきゃやってられないのだこの世界は。
「さて、何か言いたいことはあるかね……」
こちら先ほどの態度に負けじと、尊大な態度をとる。今のリリィちゃんには効果絶大なはずだ。周りが大森林で、小鳥がチュンチュン言ってたりして木漏れ日がさわやかだが、俺の威厳の前には関係だろう。多分。あ、蝶々かわいい。
「勝負よ!」
意外な言葉が飛び出した。
「勝負?」
「どっちが多くポイントを稼げるか勝負するのよ。期限は……6月いっぱいでどうかしら?」
おいおい、勝手に決めるなよ……
「いや、勝負なんて……」
「そう。自信がないのね。そうよね、そのポイントだって偶然手に入れたのよね。これからポイントを稼げる自信がない、そうなんでしょ。認めるんなら勘弁してあげるわ」
なんて奴だ。
「ざっけんな! 分かった、その勝負受けてやる。おまえに1000000P以上差をつけて圧勝してやる!!」
「なによ! だったらこっちは100000000000000Pの差をつけてギッタンギッタンにしてやるわ!」
ぐっ!? なんだその子供みたいなポイント!? 文字で書かれてたら絶対読めないぞ!? 言葉だからよかったものを。
「だったら、俺が勝ったら今度こそお前俺の嫁だからな! 今度は逃げんなよ! でもって俺のことは「アナタ」って呼んでもらう!!」
「だったら!!!」
と言うとリリィちゃんは、周りのハーレムからとびっきりのイケメンの顔に艶めかしく抱き付いて、見せつけるように
「あんたが負けたら、私の奴隷よ、ドレイ! 一生惨めな思いさせてあげるから覚悟しなさい!」
と、いやらしく笑うのだった。
俺たちは互いに「フンッ!」と言うと、一斉に通信を切った。
なんだか体中にやる気が満ち溢れてる。絶対負けねー、叩き潰してやる!!
「お見事です、ラスティ様」
途中から通信を傍観していた尻神様が、頭を下げている。
「子供じみた喧嘩だと思っていましたが、これでリリィさんが動けばポイントを稼ぐことができる。ポイントはこちらから一方的に奪うこともできますし、さらにその後についても勝っても負けても結局は同じ状況……流石です」
「え……? いや、ポイント奪うつもりもないし、普通に喧嘩してただけだよ……??」
「えっ」
尻神様は何を勘違いされているのか。そんな悪魔みたいな所業するわけがないじゃないですか、全く。いや魔王なんだけど。
「……あれ? 勝っても負けても同じ状況っていうのはどういう意味?」
「言葉通りの意味ですが」
んー、神様の言葉は難しい。もう少し下界の言葉を学んでいただかなくては。
2/7日
功績 200218P 残り799782P