僕と君の待ち合わせ(ショートショート)
春の日差しが、傘を思わせる緑の隙間から木漏れ日となって降り注ぐ。
君はそのカーテンにも思える光を潜って僕の所まで歩いてきた。
僕は君と待ち合わせをする。
僕はいつもここで君を待つ。
この銀杏並木の下で。
ああ、それともう一人。
いつも遅刻ギリギリのそいつ。
僕と、君と、もう一人。
三人の待ち合わせ。
毎日の待ち合わせ。
そいつは僕の友達で、君の彼氏だ。
最初は僕とそいつだけの待ち合わせだった。
それから君が来て、三人の待ち合わせになって、遅刻ばかりのそいつを置いて不思議と君を待つようになった。
僕と君はなんなのだろう。
友達とは少し違う気がする。
風が吹いた。
春の強い風は何故か新入生達の笑い声へと変わる。
僕も去年は同じように笑っていただろうか。
覚えてない。
その頃はまだ君は居なかった。
緑の隙間から注ぐ光が風に揺れ、君の髪が揺れた。
小鳥が数羽、揃えるように鳴いた。
何の種類かはわからない。
でも新入生達の笑い声に合わせたようだった。
普段居るはずの平和の象徴、というより平和ボケの象徴は今日は居ないようだ。
縄張り争いにでも負けたのだろうか。
平和ボケだからかな。仕方ないな。
僕は君とおしゃべりをして、もう一人を待つ。
夢のような時間だ。
何もふわふわと良い意味ではなく、夢のように現実感が無いと言うことだ。
何をしているんだろう、僕は。
ここで。友達とも言えない君を。
僕が何かを言うと君は鈴のような声で笑う。
君と小鳥と新入生達と、笑い声が三つに増えた。
君が鈴のような声を出すと僕は少し変な顔で笑う。
なんだか気を使っている。
嫌な訳ではないけれど、何がしたいのかもよくわからない。
遅いね、と君は笑った。
もう一人は遅い。いつも通りに遅い。
そろそろ良い時間なのにまだ来ない。
ということは遅刻なのだろう。いつものように。
まったく困った奴だ。
少しだけ待って、それでも来ないようなら僕は君と学校へ行く事になる。
先程まで笑っていた新入生達はもう行ったようだ。
僕たちもそろそろ行かないと。
いつか誰かが、二人仲いいね。と言った。
別に良くはないと思う。
ここで待ち合わせをして、学校に行く。それだけの付き合い。
学校で合えば会釈位はするし、少し位の言葉は交わす。
かっと言って長々とお喋りをするでもなく、世間話に花を咲かすようなこともない。
一緒に遊んだことも遊びに行くこともない。
そんな程度の間柄。
ああ、もう、ほんと遅いな。
秒速5cmを見て、ふっと思い立って、がーっと書いた山なし、オチなし、意味なしって奴です。
そうか、これが文学なのか。みたいな。
前に書いたものとかを思うと、私はこういう雰囲気が好きなのかもしれません。いえ、好きです。




