表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/16

この世界は機械に犯されました【ボツ、打ち切り】4/5

サブタイトル:神様は攻略本

「え? じゃあその"豚くん"って人が願ったからゲームの世界になったんですか?」


「ボクが世界の不満に共感したからだね」


 どうやらこの神1人がこの世界を改変したわけじゃないらしい。

 そういや風の噂でも、誰かが悟りを開いたとかで神に逢って願った、とか言っていた。

 おそらく機械への不満か、アスファルトへの不満でこの神と共感したのだろう。


 考えてみれば、この神には改変するにしても、ゲームみたいな世界にする理由がない。


「で、なんで豚? まさか本当に豚って名前だったんじゃないんだろ?」


啄豚たくとって名前の男だよ。やたらとブヒブヒ言う人だったんだ」


「あたし、知ってる。それオタクってやつだよね」


「豚ってからには、やっぱり太ってたんですか? ピザとか好きそうな体型だったんですか?」


「丸みを帯びた体型ではあったよ」


「あたしのクラスにも太ってるオタクの人いるよ」


「何を悟ってしまったんでしょうね、その豚くんって人は」


「言いたい放題だな、お前ら」


 ローテーブルを囲んで、応接間に今は4人。

 先ほどまでの空気は一変し、何故か談話室みたいな空気になっている。


 おれと妹、金髪の家出娘に、真っ白な神。

 つい二時間程前まではおれと妹の2人だったのに、賑やかになったもんだ。




「で、このゲームのラスボスってどこに居るんですか? まだ、誰にも見つかってないようですし、地下とかですか?」


 談話し始めたと思ったら急に話が戻った。

 あっち行ったり、こっち行ったり大変だ。

 しかし一度はさんだ談話のおかげで空気は軽い。


「どこにも居ないよ」


「え?」


 ゲームのクリアはあるのに、ラスボスは居ない?

 じゃあどうやったらクリアなんだよ。

 なんかのイベントを達成するとクリアになるのか?


「一箇所に配置すると、その配置された場所だけが有利になるからってことで、別の方法を取ることにしたんだ」


「ここが有利じゃダメなの?」


 さすが那由。

 中々に自分本位だ。

 話がこじれるから、しばらく味噌っかす扱いでいいだろう。

 でも無視すると可哀想だから、とりあえず頭だけ撫でておく。

 これでは褒めてるみたいだ。


「その別の方法ってなんだ?」


「君達の言うところのボスを何体か倒してコアを集めるんだ。そして自分達で作る」


「えっ? ラスボスを自分たちで作るんですか? 自分たちで倒すのに?」


「奇抜なゲームだね」


「ホントだよ」


 まさかラスボスを自分達で用意するゲームとか見たことないわ。

 探せばどっかにはあるかもしれないけど。


 それにしてもボスの存在といい、コアを集めるとか本当にゲームそのものだな。

 っていうかボスなんているんだな、やっぱり。

 今までゲームをやり込んでる連中からは、それらしい情報すらなかったけど。


「それで、ラスボスを倒すとどうなるんだ?」


 普通のゲームならラスボスを倒して終わりだが、これは現実だ。

 終わった後にも世界は続く。

 となると、ゲーム要素とかその他もろもろはどうなるのか。

 やはりゲーム要素から何から全部元に戻るのだろうか。


「ボクに逢える」


「はい、かいさーん」


 どうでもいい話だった。


「ちょちょ、ちょっと。ケイさん……。もうちょっと聞きましょうよ。絶対なんかありますから。きっと。おそらく」


「あたしたち、クリアしてないのにあってるよ?」


 神に遭ったからなんだよ。

 幸楽苑遊園地でボクと握手ってか?

 帰れ。


「忘れてるみたいだけど、ボクは豚くんの願いを叶えたんだよ? 共感したからと言う理由はあるけど」


「おい、者共。ちゃんと話を聞け」


「こ、この人……」


「おにーちゃんは意外とこういう人だよ?」


「あんまり意外、ではないですけどね。いえ、見た目とのギャップはありますけど」


 つまり何か? ゲームをクリアすると悟りを開かなくても神様に逢って、願いを叶えてもらえるってことか?

 世界規模のゲームとはいえ、特典がでかすぎる。


「ゲームをクリアすると願いを叶えてもらえるんですか? 七つの玉を集めた時みたいな感じで」


「なんでも、では無いよ。そういう手筈だから」


「じゃあ、今頼むわ。この狂った世界を元通りにしてくれ」


「今は無理だ。そういう力がない」


 ちっ、既定路線か。

 そんなことだろうとは思ったけど。


「後でならいいの?」


「豚くんの時に少しやり過ぎたみたいでね。他の神々に怒られてしまったんだ。だから今は"ほとんど"神力がない」


「つまりだ」


 話を総合すると――。

 この神が、豚くんと協調して世界を変えたら、やりすぎだったと他の神に怒られて力を取られてしまった。

 でも、ゲームをクリアした時に力が戻って願いを叶えてくれると。


 いまいち腑に落ちないけどそういうことか。


 正直な話、おれはゲームの攻略に興味なんて一切なかったのだが。

 こうやって他にない情報をこれでもかと仕入れると、少しだけやる気が出てくるから現金なものだ。

 いや、現金はない。



「…………」


 会話が途切れ、不意に沈黙が降りる。

 金髪が来てから休み無しだったし、ここらで一旦休憩を入れるか。


「那由、そこ金髪を二階の方の客間に案内しておいてくれ。おれはその間にお茶を入れてくる」


 そもそもこいつらを客と言っていいかわからんが、お茶を出すのを忘れていた。


「そこの金髪じゃないです。レファって呼んでください、レファって。レファちゃんでもいいですよ?」


 そういや自己紹介されたんだから名前で呼ぶべきか。

 なんか金色の印象が強すぎたな。


「レファちゃん……?」


「なゆちゃん……」


「…………」


「…………」


「「きゃっきゃウフフ」」


 なんだこいつら。

 っていうかどんなノリだ。


「おれはメヌエットって呼ばせてもらうわ。なんか響きが好きだ」


 普通にレファって呼んでもいいんだが、メヌエットの響きがいい。

 ソラシドって語感も捨てがたい。


「あ、は、はい。ではそれで。………………えへっ」


 顔を見ながら名前を呼ぶと、何やら照れた様子の金髪あらためメヌエット。

 さっきもそうだったが、どうやらこいつはおれの顔に照れるタイプのようだ。


 学生の頃からそうだったが、おれの女顔に対する反応はだいたい4つ位に分けられる。


 ひとつは男の癖にって嫌悪を示すタイプ。

 ひとつはかわいいかわいいってやたら持て囃すタイプ。

 ひとつはメヌエットみたいに照れるタイプ。

 ひとつは特に何も無いタイプ。


 照れるタイプは割りとすぐ慣れるので放置しよう。



「ボクの呼称は難しいからサクリって呼んでくれて良い。それとボクは睡眠も食事も必要ないから、部屋は要らないよ」


 は? 何言ってんの?

 もしかして、こいつも滞在する気か?


「いや、帰れよ」


「おにーちゃん、そんなこと言っちゃダメだよ」


 そうは言ってもこいつをここに置く理由がないだろ。

 必要な時はまた呼び出せばいい。

 ただでさえおれとこいつには微妙にわだかまりがあるし。


「ボクもそうしたいけどね。早くお宮を直してくれないと、この土地の敷地から出られない」


 お宮ってのは神棚のことだよな?

 ああ、だから最初の時に帰して欲しいって言ってたのか。

 え? 何その設定。


「なんならボクは野ざらしでもいいけど」


「じゃあそれで」


「おにーちゃん」


「いや、外で飼う犬や猫みたいなもんだろ。オラにゃあにゃあ言ってみろオラ」


「おにーちゃんっ!!」


「あわわわ、修羅場です」


 神様の扱いが悪いと妹は激怒した。

 そしてメヌエットはあわあわしていた。


 それでもこの神はすまし顔で。

 おれは、「まあしょうがないか」と頭を掻いた。



◆◆◆



「とりあえずそっちのを部屋に案内しておいてくれ。その辺の話は後でしよう」


 妹に言いつけると二人は仲良さそうに部屋を出て、階段を登っていった。

 随分簡単に仲良くなったとは思うが、仲良きことはいいことだ。


 おれもお茶を入れに、席を立つ。

 すると何故か神がついてきた。


「なんだ?」


「少し気になることがあってね」


 気になること?

 どうやらこの神ってのは全知ってわけではないようだ。


「先ほどなぜ怒られたのかがわからない」


「は?」


 先ほど、って言うと蹴ろうとして投げられた時だよな?

 なぜわからない。はっきり言葉にもしたのに。もう一回蹴るぞ。


「世界中が迷惑している。と言った時、君はたしかに怒っていた。でも、その言葉には怒りが乗っていなかったように思う」


 なのに怒っていた。だから訳がわからない。

 そう神は言った。


 この神はどうやら言葉の嘘がわかるらしい。


 言われてみると、世界の迷惑とかどうでもいいな。

 ということは、この神が言っているのはあっちの方か。


「うちの親が帰ってこないんだよ」


「帰ってこない? 二年も?」


 そう、二年も。


「お前が変なフィールドを作っただろ。その所為で帰る方向がわからなくなったんだよ、うちの親は」


 普通ならちょっと位フィールドが発生しようがどうとでもなるもんだが、うちの親は極度の方向音痴だ。

 道路は途切れているし、地図は微妙にズレるからあの親からしてみれば世界が反転したようなものだろう。

 普段からカーナビなんかを頼りにしてたのも悪いのかもしれない。


「成る程、そう言う事なら相分かった」


「まだ9歳だった妹の両親がいきなり消えたんだ。怒る理由として十分だろ」


「ああ、妹の事で怒っていたのか。ようやく納得がいったよ」


「別に那由の事だけで怒ってるわけじゃないけどな」


 家事とか給付金とか税金とか面倒事が増えたし。


「なら両親には帰ってきてもらおう」


「は? どうやって?」


「それは追々」


「おい」


 結局、どうやるかは聞けなかったが心配ないらしい。

 しかし、そう上手く話は進まないんだろうな。とおれは予感していた。


 ちなみにお茶は2年近く前に賞味期限が切れていたので無しになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ