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怪盗美少女ピンクちゃん現る

今回は文章の書き方がちょっと違います。読みづらかったらごめんなさい。


電気の消えた部屋に男は戻ってきた。この部屋は男の経営する会社の社長室である。とはいえ、昼間は社長室として使われているが、夜は違う。夜はこの男が違法に手に入れた芸術品、その宝物庫としての役割を果たしている。


夜の2時にならなければ開かない扉。その扉は社長の使う机の引き出しの奥にスイッチがあり、それを押すことによって開く。あと数分で2時。この男はいつものように芸術品の中から裏マーケットの競売にかける物を選びに来た。


「誰だ!」


部屋に入った途端、人の気配を感じてそう言った。その相手を探すため、明かりをつける。


「はぁ~い!怪盗美少女ピンクちゃんで~す♡」


緊張した空気をぶち壊す間延びした可愛らしい声が聞こえた。セーラー服を着たピンクの髪の少女が、社長の机の上に座り、にこやかに男に手を振っている。


「どこから入ってきた!!ここは強固なセキュリティに守られてるんだぞ!」


驚いた男は声を荒げる。しかし、少女はそのツインテールにした髪を振り、首を傾げ、


「あっちかなぁ?こっちかなぁ?どっちだと思う~?」


右手と左手の人差指で全然別の方向を示しながらそう言う。少女の自分を馬鹿にした態度に男はさらに怒鳴り、この様子をモニターで見ている警備員に指示を出す。


「ふざけやがって!侵入者だ!捕まえろ!!」


ここの警備員は男の息のかかったもので、侵入者などは警察に突き出されるのではなく、より男の利益となるよう様々な方法で使われる。男にそう言われても、少女は笑顔のままだ。



「ピンクちゃんは~お買い物をしに来たのよ~?お客様を追い払うのはいけないことだと思いま~す。」


右手の人差指をあごの下につけ、小首をかしげる。とても可愛い仕草で、普通の状況ならこの男も魅了されてしまうだろうが、今は別だ。むしろ異様にしかうつらない。


「何を考えてるか知らんが、買いに来た?怪盗と自分で言ったのは誰だったのか。」


男が馬鹿にしたように笑うと、彼女は笑顔のまま左手で指をパチンと鳴らす。すると、彼女と男の間にスーツケースが現れた。


「怪盗だってぇ、お買い物もするのよ?開けてみて?」


男は恐る恐るスーツケースに近づき中身を見て驚いた。端から端までぎっしりとお札が詰められていたのである。


「ピンクちゃんは~『豊穣の女神』ってゆー絵画がほしいの~。それってぇ、まだマーケットに出せないでしょ?ほとぼりが冷めてぇ、マーケットに出したとしても~、こんなに高いお金では売れないと思うの~。」


にこにこと笑いながら、男にそういうと、社長の机の引き出しの奥のスイッチを押した。


「だから~ピンクちゃんに今売るのが、断然お得よ~?」


扉があいた。2時になったのだ。隠し部屋(宝物庫)の秘密も知られている。


「ねえ、どうするの?ピンクちゃん、あんまり・・・・気が長い方じゃないのよ?」


それまでニコニコと無邪気に笑っていた顔を一遍させ、鋭い目と薄い笑いで男を見る。背筋がヒヤリとした。少女の迫力に押されてしまったのだ。


「その絵だけを買いに来たのか?他のものを奪っていくんじゃ」

「気が長い方じゃないと言ったわ。イエスかノーか、それでいいの。」

「・・・イエス・・だ。」


にっこりと少女は笑うと隠し部屋に入り一枚の絵を手に戻ってきた。


「うふふ。じゃあ、この絵、買っていくね?」

「止まれ。命が惜しければ、その絵も、金も置いていけ。」


男は少女が隠し部屋に入った隙に銃を手にしていた。銃口を少女に向け、そう言ったが、少女を逃がすつもりもなかった。侵入者も自分の領域に入ってきたなら、自分のもの。自分の役に立つために使うのだ。


「え~?嫌~~。」


くすくすと笑うと少女は男にそう言う。まるで銃など目に入っていないようだ。脅しと思われているのかと、少女の足元を狙い、男は引き金を引く。だが、少女は銃で自分の足の近くが撃たれても気にせず続ける。


「命令されるのきら~い。ピンクちゃんはぁ、いい子だからぁ、お買い物が終わったからまっすぐおうちに帰るのよぉ~?」

「少し痛い目を見ないと分からないらしいな。」


男は少女の肩を狙って銃を打つ。笑顔のままの少女。おかしい、当たったはずだ。男は続けて少女に向かい引き金を引くが、何も変わらない。恐怖に駆られ弾が終わったにもかかわらず、引き金を引き続ける。


「あれ~?もう終わりぃ?ピンクちゃん全然痛くないのにぃ。じゃあ帰るね~ばいば~い♡」


少女が男に手を振ると、部屋の明かりが消えた。男は得体の知れない少女の恐ろしさにまだ体が動かず、声だけを出す。


「誰か!明かりをつけろ!!」


すると、パッと電気がついた。てっきり警備員の誰かが明かりをつけたと思った男は辺りを見回したが、誰もいなかった。そういえば、この部屋に入ってきたときと同じく静かなまま。警備員が来るのが遅すぎる。ひとまずスーツケースの金を隠し部屋にしまい、モニター室に行くとすべての警備員が眠らされていた。


(どういうことだ?こんな芸当ができるならば、絵画を手に入れるために自分も眠らせればいいだけの話。本当に買い物に来ただけなのだろうか。まあ、いい。絵画以上の利益を手に入れたのだから)


男はそう考えることにした。これから先の自分の運命も知らずに束の間の幸運に浸るのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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