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父の提案

父、登場。

「お父さん!?何で、ここ、防音なのに。」

「お前、ばっかだなあ。ここは、オレの魔力を使って、防音にしてんの。つまり、この相談室はオレの支配下に置かれてるわけ。ここでの話や行動はオレには筒抜けなんだよ。」

「知らなかった!」


気分も実際の私もorzである。


清水皐月しみずさつきと申します。お嬢さんと同じ会社で働いています。ご挨拶が遅れて誠に申し訳ございません。しかもお嬢さんと二人きりで一室にこもるなど」

「あー、いい。いい。オレはこいつの父親だけど、君と同じ獲物を求めるハンターでもある。鈍いのは母親譲りだが、援護は任せとけ!」


意味がわからない。なに?ハンターって巷で噂のゲームの話か?二人で同じゲームやってるとか?話についていけない私を余所に、父は絶好調だ。


ひなの兄も姉も家を出ていっちまってるからな、雛も出ていくとなると、オレと妻の二人きり。いいな、それ。」


何で父の希望を聞くことになってるんだろ。しかもうちの家族事情とか、私追い出す話とか。ゲームの話だったんでしょ?あ、ちなみに雛は私の名前なんだが、課長はご存じだろうか?というか、父の何の脈絡もない話に課長もついていけてないのではないだろうか?


「まあ、その話はいいや。雛がついて来てねぇし。皐月と雛の双方に利益のある話をしてやろう。」


非常に上から目線でのたまう父、すみません、課長、うちの父こういう人なんです。腕はいいんです、やり手なんです。性格がちょっとアレなだけで!


「お父さん、ナチュラルに課長の名前を呼び捨てするのやめて。しかも何で苗字じゃなくて名前で呼ぶの。」

「え?何?皐月、嫌なの?」

「いえ、嫌ではないです。」

「あ、オレはじんだ。仁さんでいいぞ。」

「はい、仁さん。」


嫌かって聞かれたら嫌だって答えられないでしょ!!しかもなんで自分に『さん』をつけて呼ばせるのよ!強制じゃない。


「あ、雛のことは雛って呼べよ。田中家で『田中君』は紛らわしいからな。」

「ありがとうございます。仁さん。じゃあ、雛ちゃんでいいかな。」

「え!?あ、はい。いや」

「雛、それどっちだよ。」

「あ、あの『ちゃん』はいらないです。あまりそう呼ばれたことがないので。なんとなく気恥ずかしいというか。」

「そうなのか。じゃあ、雛と呼ばせてもらう。俺のことも皐月と呼んでくれ。『対等』がいいだろ?」

「ぜ、善処します・・」


何故だ!この短時間で何で名前で呼び合うことに?恥ずかしい。むっちゃくちゃ恥ずかしい。


「よし、話がまとまったところでオレからの有難い提案を聞け。」


あー、もうほんとにこの父は。課長は父の言葉に怒りもせずに聞いてくれるらしい。心が広いな、課長。


「雛は、魔法協会に提出するレポートを皐月に手伝ってもらえ。雛はレポートが終わるし、皐月はストレス発散に別人になってみればいい。」

「ちょっと!お父さん!!課長に迷惑でしょ!!」

「何で?双方の利益になるって言ったろ?」

「すみません、仁さん。そのレポートって何ですか?こちらに魔法協会なんてないですよね?そう考えると、仁さんたちが引っ越してきた前の世界のものだとは思うんですが。前の世界とのやり取りは残っているんですか?」


さすが課長、冷静だ。この父に対して、普通の反応ができるのもすごい。


「あー、オレたちが引っ越すのにいろいろ条件があってな。そのうちの一つに、魔法使いの義務を引っ越した後でも継続するってのがあるんだ。向こうの世界では魔法が使える奴と使えない奴がいて、使える奴は使えないやつに利益を還元しなければならないってさ。」

「利益を還元ですか。こちらの世界に魔法はないのに?」

「そ。魔法の使えない地球人に魔法で施しをするのは魔法使いの義務だってな。それができてるかどうか、5年に1回レポートを提出させて確認するんだ。」

「地球で魔法を使ったら大変な騒動になると伝えればいいんじゃないですか?」

「言ってもわかんねーんだわ、魔法協会の連中。頭が固すぎ。魔法を使うことにこだわるもんだから、気付かれないように魔法を使えばいいとか。そのくせ、利益があったことを実感させろとか意味わかんねー。」


ほんとに向こうの世界、というか魔法協会はめんどくさい。ただでさえ、私の魔法は微妙で利益を還元してるリポートなんて言われても困る。いくら故郷とはいえ、実際見たこともない世界のために何で苦労しなくちゃいけないんだろう。


「ちなみに、仁さんはどうしてるんですか?」

「オレ?オレは賢者だからな。向こうの世界にも年に1回くらいは顔出さなきゃなんなくて、その時に向こうの世界に貢献してるからレポート提出はしてない。」

「レポートを出さないとどうなるんですか?」

「義務が果たせてないということで魔法協会で講習を受ける。魔法使いの義務について延々グチグチ言われるんだ。雛の場合、オレが向こうの世界から雛を召還することになるのかな。でもな、雛の魔法は珍しいから、そのまま研究対象にされて帰ってこられなくなったり」

「レポートし上げましょう。協力でも何でもするぞ、雛。」


あれ?また『帰る』に反応してますか?課長。


「そうと決まれば、雛の部屋に行くぞ。」

「はぁ?ちょっとお父さん!!」

「だって部屋に行かなきゃ雛の魔法、説明できないだろ?」

「そ、そうだけど。」

「あー、散らかりすぎてて皐月に入ってもらえないか。」

「散らかってないもん!!・・・もう!いいっていうまで部屋に来ちゃだめだからね!!」


実際、私の魔法は部屋に来てもらわないと説明しづらい。私の変な魔法を見れば、課長だって協力するのをためらうと思う。とりあえず、気合を入れて速攻で部屋を片付けなければ!!


うう、おかしい。何で憧れの上司を自分の部屋に招き入れるなんて事態に陥ってるんだろう。

仁さんはちょい悪オヤジ、もしくは不良中年をイメージしております。

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