目には目を。秘密には秘密を。
久々の更新で申し訳ありません。
おかしい。課長も納得できる理由だと思うのに、ますます課長の眉間にしわが刻まれた。
「俺は、信頼されてるのか。」
「はい、もちろんです!」
うーん、また頭に手を当てている。何をお悩みなのか、あ、ひょっとしてほんとに頭が痛いのだろうか、病気的な意味で。
「あの、ベッドのある部屋の方がいいですか?」
「田中君!君はほんとに!!!・・はぁ。うん、わかってるさ。・・・特に意味はないんだろ。」
横になった方がいいのかなって思ったんだけど。最後の方はよく聞こえなかったが、どうも私は課長を疲れさせてしまったらしい。ちょっと落ち込む。
「課長のその格好を他の人が見たら大変だと思ったんです。もしストレスとか、そういうのが原因なら、うちの父がそういった相談を受けているので、うちに来ていただいた方がいいと思ったんです。」
うう、やっぱり私なんかが課長の心配をするなんて、迷惑だったんだろうか。だんだんと声が小さくなってきて、最後はぼそぼそつぶやいてるみたいになってしまった。課長の顔を見られない。
「そうか、心配かけて悪かったな、田中君。今日はちょっと事情があって、この、その、女性の服を着ているだけでいつも着ているわけじゃないんだ。」
そんな私に課長はやさしい声で私の頭をポンと叩いてそう言ってくれた。それだけでものすごく浮上して、自分の単純さにあきれる。
「じゃあ、ストレスは大丈夫なんですか?」
「あーうん、その・・・な。」
言葉を濁す課長なんて珍しい。やっぱり部下に弱いところを見せるのは嫌なんだろうか。
「わかりました!課長がストレスに負けそうだって事を秘密にしたいのでしたら、私、絶対に他の人にしゃべりません。もちろん、今日のことも誰にも話しません。ですが、私がしゃべらないかどうか課長は不安に思われるでしょう。そのこともまたストレスになってしまうかもしれません。ですので!!」
ここまで一気にしゃべると私は課長の目を見つめた。真剣なことをわかってもらうためだ。
「私の秘密をお教えします。私が課長の秘密を他の人に漏らさない代わりに、課長は私の秘密を守ってくださいね。」
うん、課長がポカーンとしている。あれ?私の理論はどこかおかしかったのだろうか?
「目には目をって言うじゃないですか。だから秘密には秘密をと思ったんです。」
じっと見つめていると、課長はプッと噴き出した。
「君は面白いことを言うな。君が俺の秘密を知っても吹聴するよな子じゃないって知ってる。だから、別に君の秘密を聞く必要はないんだが。」
「あ、あの、私が一方的に課長の秘密を知っているよりお互いがお互いの秘密を知ってるっていう方が安心するんです。う、結局課長のためじゃなくて自分のためですよね、すみません。」
「なるほど。対等な関係がいいということか。」
課長はしばらく考えているみたいだったけど、私の意見に賛同してくれた。
次回、次回こそファンタジーです。