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第一章 第八話 冬の終わり

 宿屋の主人から話を聞き終え、北のはずれにある英雄の生家へと足を向ける。

 この家を冬の間過ごせるように改造しなければならない。

 道具袋に手を伸ばし、引っ張りあげると出てきたのは薪ストーブだった。


 薪小屋から薪を拾い集め、ストーブに放り込み着火剤を振りかけマッチで火をつける。

 ボンッっという音をさせあっという間に火がついた。


 ストーブの上にやかんをのせ水を沸騰させる。これで乾燥しすぎることもなく快適に過ごせるようになる。

 台所で野菜と肉を切り分け鍋に入れ具材を放り込み塩とコショウを振りストーブの上に置く。

 鍋に小麦粉にバターを合わせて炒め牛乳を入れストーブの上に置く。

 あとはこの二つの鍋をあわせて簡易なクリームシチューの出来上がりだ。


 暖をとり、食事をすればあとは寝るだけ。その前に今までの旅のまとめをすることにする。


 この世界のルールとしては服装・所持品は異世界からの持込は無理なようだ。つまり、マッチはあるがライターはないということなのだろう。

 

 この世界におけるクエストとしては英雄の軌跡を追うということのようだ。

 いままでに聞いた英雄についての情報をまとめていくことにする。

 「英雄の父親はラインフォール王国で不名誉な死を遂げ、母親と幼い子どもはアムラン王国へと落ち延びこの村でひっそりと暮らしていた」

 「数年後母親が死去、少年時代の英雄は冬の間の出稼ぎにバーナム王国へ傭兵見習いとして参加、実戦経験を積んでいたと思われる」

 「青年となった頃、ダイクス村にゴブリンの出現があり、討伐か防衛かで村長と意見が対立、村人数人とともに討伐に出かけるも村にはいられなくなり、4人の仲間とともに村を出た」

 

 ここまでが、英雄誕生の軌跡ということのようだ。しかし、英雄は一度里帰りをしていると言う。

 「数年後、内乱が激化し多くの難民で島があふれていた頃、ダイクス村へ氷竜の縄張りを越えるルートで現れた英雄はかつての仲間であった村の相談役を迎えにきた、その後南へ村を作る手配をし、そこに家を建てしばらくの間拠点にしていた」


 ということらしい。

 断片的な情報も多かったが、気になる点はいくつかある。

 まず、この村に来た理由は間違いはなさそうだ、村長からの過去の調書にもそう書かれているし、女でひとつで子どもを育てるにはそれ相応の理由もあるだろう。

 少年時代から剣を嗜んでいたようだから、実戦経験を積むために傭兵になるなんてちょっと信じがたいが、そういうこともあるのかもしれない。

 将来は騎士になるつもりだったかもしれないが、騎士は基本的には相続する制度で別の騎士に子弟として入り、礼儀作法や剣術、軍学を学びながら家を継ぐというもので不名誉な家の騎士が再び認められるということはありえないだろう。

 これも幼さゆえのものだったのか。

 事実、英雄は騎士ではなくレジスタンスとして各地を回る革命家のような存在になっている。

 彼が標榜した理想国家は自由、平等、平和であったという。

 だが、彼の存在はすでに育った村においても危険視されており、受け入れがたいものであったようだ。

 彼の一族は生まれながらにして既存の支配階級におけるアンチテーゼのような役割を果たしていたようだ。

 この世界の住人はすべて役割が一族によって固定化されているのも面白い特徴と言えるだろう。

 農民の子は農民であり、騎士の子は騎士である。だが、職業にとどまらずその生き方そのものが世代を超えてまったく変わってない不変であるということだ。


 最初に出会った南の村の宿屋兼酒場のマスターもそうであったろうし、その娘も将来は宿屋を切り盛りしていくことになる。

 行商人の親も行商人であったであろうし、その子どももまた行商人としての修行を積んでいることだろう。

 ダイクス村の村長も世襲制を守っており、うわさ好きの宿屋の主人も先祖代々うわさ好きなのだ。

つまりは、英雄の父親も騎士であると言う以前にそのような特性をもっていたのだろう。自由というのは規律と相反する面もある。

 輪廻から外れた存在であったのかも知れんなぁ、強制力がいびつな方向に向いたのかもしれない。

 

 世界には基本的には同じことを繰り返すというルールがある。これは世界の絶対法則ともいわれ、大枠で言えば文明の起こりから繁栄、衰退、消滅を繰り返すというものだ。


 この世界にもそういう逸話はあり世界の終わりと始まりの際には巨大な隕石が世界を滅ぼし、その隕石から生まれた種族の繁栄が始まるそうだ。

 

 この法則は村のサイクルにおいても当てはめることができる。中山間地域や離島などでは、常に過疎化・高齢化の進行は免れない。このような状態となった集落では集落の自治、インフラの管理、冠婚葬祭など共同体としての機能が急速に衰えてしまい、やがて消滅に向かうとされている。共同体として生きてゆくための「限界」があるのだ。

 

 村は村として存在し、町は町、都は都と存在し続けるためにはこのお約束ははずせない。

 もし、革新的な存在がありとあらゆる分野で活躍し続ければ、この世界は崩壊し自滅への道を突き進むことになるであろう。

 そこにはもはやファンタジーとしての要素は全くないただ悲惨な現実が押し寄せてくるのみである。

 

 ふぅ・・・まぁ何が言いたいかっていうとチートプレイで無双すると既存の世界は崩壊し、新たな神になって世界創造っていうながれになってしまうってことだ。

 それもまた必定なのかもしれないが、この英雄に限っては既存の世界を守る側なのか、それとも崩壊させる側なのか実に不安定な立場をとっているように見える。

 これは、英雄の足取りを追いつつ検証していかねばならないところだ・・・

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