第一章 第五話 はじまりの英雄伝説
はじまりの村へは行商人が最後の物資を届けるという。
それに同行させてもらうことに決めた俺はマスターに仲介役をお願いし島について教えてもらうことにした。
それなら、ということで昼間は暇な宿屋の娘が島の説明をしてくれることになった。
「ねぇ、王都の方から来たんでしょ?」
翌日、朝食を取りに来た俺に宿屋の娘が話しかけてきた。まぁ、本来この村に来る方法がそれしかなければそうなんだろう。
「どんな感じだった?きらきらしてた?」
えらく、抽象的な表現をする娘である。だが、俺は王都からは来てないし、そんなことを聞かれてもこまる。
「えー?王都から来たんじゃないならどうやって来たのよ!」
大陸から船で来たと答えておく。ここは島のようだからな、逆にいえば大陸もあるってことなんだろう。
「まぁ!大陸ですって!すごーいってことはジュエルの街からの定期便に乗って来たの?いやそれだとこの島の西側だから、北側のルートだと砂漠越えと山越えをしないとこれないんじゃ・・・やっぱり南周りでラインフォール王国を回ってアムラン王国に入るなら王都は通らないとここにはこれないんじゃない?」
いろんな街と国の名前が出てきたが、位置関係がさっぱりわからん、がこういう時に便利なのが大陸の地図というものだ。
「すっごーい、こんな地図初めて見た!」
地理に詳しいだけあって彼女も相当な地図マニアのようだが、こんなものは見た事が無いようだな。
もとは白紙だったが広げると現在地を指し示し、拡大縮小ができる。
「ここが、現在地で~島の北東部に位置してるでしょ?ここがアムラン王国、この島で最古の歴史があるわ、文化と芸術の発祥の地と言われているわ。それで南東部にカナン王国、私の祖父が生まれた国ね。国境付近から森で覆われていて水と森が豊よ、そうそうこの森には注意してね、エルフの里があるわ、昔は神隠しの森ともいわれていたけれどいまは普通に通れるようになっているわ。以前は人よけの結界が張られていたみたいだけど、人間と和解して共存するようになったらしいわ。」
ふむふむとうなずく
「中央部も北側は砂漠地帯になっているわ、ここは炎竜バラドの領域ね、ただ炎竜は100年ほど前に建国された
バーナム王国の国王によって退治されたとも言われているわ。もし、今もいるとしたら子供か転生した竜のはずよ、以前の力はない証拠に炎の精霊力の支配力が年々弱くなっていって過ごしやすくなってきているらしいわ。まぁ逆にこっちの精霊力が強くなったのはそれが原因じゃないかって言われているの」
なにせ、邪魔をする精霊がいないからな
「そうね、全てはバランスで成り立っているものね、それでこの南側がラインフォール王国、農業がとっても盛んな国よ、この国もまだ3番目に新しい国ね、150年程しか経ってないわ、ただ彼らは自分たちを島の規律と秩序を守る事を命題としていて、魔物退治を積極的に行っているわ」
小さくつぶやく・・・島の警察ですか
「北西部にジュエルの街、ここは大陸との貿易地でもあるし、国内最大の商業地ね、ここはどの国家も統治せず商人だけの自治組織として運営されているわ。彼らに軍隊は無い代わりに豊富な資金で傭兵をたくさんやとっているの、ちなみに水竜サーマルの領域、水の精霊は穏やかな性格だからここらへんの海は安定しているの」
金周りがいいんですね。
「最後に南西部のローデン連邦、ここは小さな共和国が15程集まって出来ている群集国家ね、それぞれに元首をおいていていつも小競り合いをしているわ、山岳地帯だからなかなか決着が着かないみたい。ここは風竜ガゼルの領域で強い風がいっつも吹いてるんだって」
窮屈なかんじがするなー
しかし、みたことないのに良く知ってますね。
「そりゃあ、わたしは宿屋の娘だけどこんな田舎に居るからこそ逆に色々見てみたいって言うのがあるのよ!だから、来たお客さんに色々聞いているの、であなたはどうやって来たの?」
えーっとじゃあ大陸からジュエルの街に行く途中でここらへんの岬で降ろしてもらいました。
「・・・こんな山越えルートでよくもまぁたどり着いたわね・・・まぁ前例がないわけじゃないから嘘じゃないと思うんだけど」
前例があるんですか?
「うん、この村よりもっと北にある村の出身の人が里帰りするときに使ったルートなんだけど・・・あまりに事件を起こし過ぎて指名手配になってまともなルートを通れなくって使ったらしいわ」
ロクデモナイ話だなぁ
「その人いまじゃこの島の名前になった程の英雄になってるけどね」