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「ちょっと、出かける」


 何のためらいもなく、深夜に亜里沙が出かけた。

 ………まぁいいや、何か買いに行ったんだろ。



 それより、あの賀島とかいう変な男。アイツの喧嘩……、よくよく考えてみればかなり強い方だよな。

 一体どんな経験積んだらあーなるんだ? もう一度会える機会はないのだろうか?


 ピーンポーン


 玄関のチャイムがなった。誰だ?


「はーい」

 ドアを開けると、長柄……ではなく、見覚えのある茶髪男がいた。

「何だよ急に」

「ちょっと報告にきただけだよ」

「まぁ入れよ」

 畑を部屋に入れ、俺は適当にご飯と茶を入れた。


「数か月前に突如来た礪翥慮媚堊レトロミアっつー暴走族のことなんだけどよ」

「あー………テントの神谷とガチタイマンしたロン毛の金髪野郎のことか」

「そいつに今目付けられてんだよ」

「は!?」

 よりにもよって族に狙われてんのかよコイツ……。

「まぁどんな感じでタイマンするかタイミングが分からない。とりあえずしばらくココにいさせてくれ」

「はぁ……。まぁここの権利者、俺じゃなくて女の方だからよ。ソイツに許可入れろよ。俺は別にいいけどな」

「すまねーな」


 その後、鍵を開ける音がした。

 誰か帰ったきたな。つーか亜里沙しかいないな。


「ただいまー」

「おかえり―――」

 亜里沙の次に出てきたのは、風見だった。相変わらず大人っぽい服を着ている。モデルにでもなるつもりなのかよ。


「何でお前まできたんだよ!」

「亜里沙と遊びたかったから」

「はぁ? こんなんじゃ部屋がパンパンじゃねーかよ」

「別にいい」

 そこで亜里沙が舌打ちした。

「べーつに何だっていいでしょ。それよりこの人誰よ」

 指の宛先は畑だ。

「最近できた俺のツレだ。これでお互い様だろ」


 たく……これで長柄が来たらもうヤバいぞ……。

 ここはたまり場じゃねーっつーの!


 横を見ると、驚いているのか惚れ惚れしてんのかよく分からない表情でいる畑の姿があった。

 多分亜里沙のことだ……。


「こ……ココの権利者、アナタですか?」

 畑は立ち上がり、亜里沙へ近づいた。

「は……はぁ。そうだけど……」

「しばらくココに、いさせてもらえないでしょうか?」

 信じられないくらい綺麗な敬礼をした畑に対する亜里沙は唖然としていた。

 当然俺もビックリだ……。相当ストライクだったんだろう……。

「ま……まぁ、ちょっとだけなら別にいいけど」

「あざあぁあっす!」

 何という事だ。ココの居候を二人に増やすのか……? まさかな。そんな訳があるまい。

 さて、風見に色々と聞こう。


「風見、ちょっと聞きたいことがあんだけどさ」

「何?」

「賀島有我って男、知らないか?」

「うーん、ちょっとだけ聞いたことがある。けどマインノートパソコンのデータには含まってないから、詳しくは知らない」

 風見のデータに入っていない? どういうことだ。彼女は黄金美町の中でならどんな情報も持っているはず……。

 いや待てよ。まさか……黄金美町外ってことなのか?

「できるだけでいい。奴の事を話してくれないか」

「いいよ」

 有我、そして有我の妹の情報が欲しい。少なくとも奴らは只者ではない。


 何かが隠れている。俺が見えてない何かが。


「賀島有我、二十歳。渋谷区出身。モヒカンをしていて一見短気で野蛮に見え、実際そういう連中との付き合いがあるけれど、実際は並外れの優しさを持つ男。今ノーパソで調べた結果、彼は渋谷区最強の座をとる候補ナンバー2。妹のためなら何でもするという勢いで迫る気迫も見られる。彼の特徴は、とにかくロマンチストで、大きなお城で住みたいという桁外れな夢を持っている」

 ノートパソコンをカタカタと打ちながら、そう説明された。

 もうお見通しかよ……。やっぱこいつは日本一の情報屋だな。ハッカーも余裕だろうな。

 ………ん? ちょっと待てよ?

「おい、渋谷区最強の座をとる候補ナンバー2っつったよな?」

「そうだけど」

「ナンバーワンとかいるのか?」

「いるよ」

 早速調べてもらった。ナンバー2って嫌に中途半端だな……

「ナンバーワンは、黒鬼広海。彼は賀島とほんの少しの縁で、不良グループのトップに立った男。また、賀島はその不良グループとはほとんど縁がない」

「なるほど……上には上がいるんだな。賀島は何かグループとかに所属してんのか?」

「入ってるらしいね。カムロっていうギャングのヘッド。それが彼の称号」

 カムロ……? ……のヘッドだと?

「でもあくまで他の連中が彼をトップと言ってるだけで、賀島自身はそこまでヘッドになったことに対して期待してないらしい。その応援責任者的存在であるこの男」

 ノートパソコンを見せてもらうと、金髪でツンツン頭で、いかにもヤンキーという風格をした男の写真が写っていた。

「この男はカムロのナンバー2、西園寺大賀。基本的にカムロその物を動かしているのは西園寺で、賀島は基本的に独りでいる」

 なるほどね……。賀島は単に妹に世話を愉しみ、そういう野蛮な奴らとは違うんか。

 それなら安心だ。多分アレは俺と同じ人間で、大切なモノを見失っていない人間だ。


 情報はこれくらいで十分だな。

 横を見ると、亜里沙をとことん口説こうとする畑の姿があった。当然亜里沙はもう抜け出したいという気持ちが入った顔をしている。

 ――レトロミアの事はいいのかよ……。





 ――デイリー、それは日常。俺はその日常生活を描いているつもりだった。しかし気が付くと、俺が書いている日記は、ほぼ全てが非日常的だ。

 これまでも事を考えよう。

 まず長柄瀬呂との出会い、アイツとはおよそ三度喧嘩をしたが、未だどちらが本当に強いのかは定かではない。

 そして黄金美連合、初対面の美木隆義との乱闘。その時までは愛澤が連合を仕切っていたと思っていたが、上には上がいるのか、その美木という末期人物は人を殺すのに躊躇という言葉1つ残さない最低最悪の危険人物だった。

 後、亜里沙の原付が盗難され、風見の情報源を頼りに追った先が、FBIという、三人の高校生が勝手に作った窃盗グループ。畑という、今俺の横ではしゃいでる男がその本人だ。当時は混乱していたのか、既に狂気に目覚めてしまったのかは知らないが、少しだけ美木とイメージがかぶっていた気がする。しかし高校生だ。まだ若い。だから俺はまだやり直せるという、まるで親みたいな感情を生み出し、畑を救った。

 そして、賀島有我という男。突如現れた渋谷区のナンバー2。妹に世話焼きで憎めない奴だから俺はそこまで敵意を示すつもりはないと思ってる。


「ちょっと佳志! この子何とかしなさいよ!」

 赤面でたまらない亜里沙は大声で俺に救命を要求した。

 こんな平和な光景を見るのは、今だけなのかもな、と。俺はなぜか嫌な予感を察した。


 それはとても不覚で、不滅しか残らないかのような――。第五感を通じて、なぜか予感がする。

 これは、当たるのか? 当たらないのか?

 どうか、外れることを祈る。



 テレビを付けてみる。いつものチャンネルし、「黄金美チャンネル」を開いた。


 女性のニュースキャスターが言う。

「現在、キングヘッドの与謝野佳志が虱潰しに至る人を倒し続けている模様です。VTRをご覧ください」

 ………どういう事だ。与謝野佳志という人物は今、亜里沙のアパートの二階でただただ居座っているだけだぞ。

 このチャンネルを見た俺を含めた四人は豹変した。どう考えてもおかしかったからだ。


 VTRを見ると、場所は閉店した店があちこちにある夜中の商店街。隠し撮りをしているのかあまり良く見えないが、白いパーカーで顔を隠した1人の男が、襲ってくる男達を問題なく殴り払っている姿が映っていた。

 ………これが俺に成りすました奴か。

「遂に与謝野氏は黄金美町全体の街を支配することを決心したのでしょうか。メイルバール、ドラスト、黄金美連合……バラードの連中も全て……倒れております!」

 そのカメラに映っていたのは、倒れているメイルバールの総長、辺留。そしてドラストの志藤、バラードの瀧宮ののたれ死んだ姿だった。


 何と言うことだ……。本当に侵略でもするつもりなのか!?

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