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1-3  にあ

2015年 4月7日(火) 午前7時00分

東京都 足立区千住曙町 学生マンション4階 一室



 チクチク・・・チクチク・・・・

 自分の顔にチクチクと何かが触れている感触を感じ、俺は目を覚ました。



 「うわぁ!?」


 「にゃっ!?」



 瞼を開けた瞬間、俺は思わずそう叫んでしまった。

 無理もない。目を開けたら、目の前に可愛らしい幼女の顔が広がっていたからである。

 どうやら顔に感じたチクチクという感触の正体は、幼女の銀色の長い髪の毛先だったようだ。



 「ニア? ど … どうしてここに?」



 そう。昨日の夜、ニアをベットで寝かせ、俺は床に布団を敷いて寝たハズである。

 それなのに獣耳・尻尾が生えているニアは、俺の体の上に馬乗りになり、俺の顔を覗き込んできているのである。



 「 … あの、悪いけど降りてくれないかな? 起きれないんだけど」



 何とかジェスチャーを交えながらそう優しく言うと、ニアは可愛らしい笑顔を浮かべてこう返事をしてきた。



 「れん♪ おはよう?」


 「うん。おはよう …… って、ええっ!?」



 俺は驚いてしまった。

 昨日は、俺が丁寧に言葉を教えないと言葉を話せなかったハズ。ましてや 「おはよう」 という言葉はまだ教えてもない。



 「ニア、言葉を話せるのか!?」



 コクリと頷くニア。



 「れん! おにゃかすいた♪」


 「お … お腹空いたのか。」


 「にゃ♪」


 「よし、じゃあ、朝食作ってあげるぞ!」



 俺はキッチンでウインナーと目玉焼きを作ることにした。

 テーブルの前に座り込んでいるニアは尻尾を左右に揺らしながら、流れているテレビのニュース番組を興味津々に眺めている。



 『東京消防庁の発表によりますと、昨夜、東京都足立区に落下した隕石による負傷者は、計34名に上っています。窓ガラスが割れるなどの被害を受けた家屋が19棟で・・・』



 やはり今日も朝から、昨日の隕石落下関連のニュースをやっていた。



 『なお、東京の他に、アメリカ・ブラジル・イギリス・オーストラリア・ロシア・エジプトなどの6か国にも同様の隕石が落下した模様です。このうち、イギリス スコットランド クリエフに落下した隕石による被害が甚大であり、イギリス政府の発表によりますと、死傷者は103名に上っているとのことです。在英国日本国大使館の調べでは、この人数の中に日本人は含まれていないとのことです。今回、世界7か国に隕石が落下したことを受け、先ほど米国航空宇宙局(NASA)は公式記者会見を開き … 』



 「れん! おにゃかすいた! はやく~!」


 「あっ … 悪い悪い。もう出来たから」



 俺はテレビから視線を外し、目玉焼き・タコさんウインナー・サラダが盛りつけされた皿を、ニアの前に置いてあげた。



 「さぁ、どうぞ」


 「わぁ~、おいしそう♪」



 そう呟くと、ニアは箸を使って器用に朝食を食べ始めた。

 昨日、2時間かけて箸お使い方を教えてあげたものだが、一晩でここまで上達するとは。

 しかも昨日とは違い、言葉も話せるようになっている。

 この子の学習能力は驚くほどに高いのだろう。



 「ニア、美味しい?」


 「にゃあ♪ おいしい♪」


 「そうかそうか、それはよかった」



 朝食を実に美味しそうに頬張っているニアを見ていると、俺は一種の懐かしさを感じた。


 俺が中学生だった頃、俺は当時小学生だった妹の茉那を世話していた。

 父さんは海外に出張中で、母はパートで働いていたため、やれる範囲で俺が家事や妹の世話をこなしていたよな。

 妹が熱を出した時、俺がおかゆを作ってやると、茉耶はいつも嬉しそうにそれを食べてくれた。

 あれからこうして … 約7年経つのかぁ。時が流れるのは早いものだ。


 それから俺も朝食を食べることにした。

 食べ終わった頃には、時計の針は既に午前8時40分を指していた。



 「やべぇ! もうそろそろ出ないと、授業に遅れる!」



 慌てだした俺を見てか、ニアは少し不安そうな表情を浮かべた。



 「れん、にゃにあわててるの?」


 「俺は今から大学に行かなくちゃいけないんだ」


 「だ・・い・・が・・く・・?」


 「そう。勉強しに行くところだよ」



 俺がそう言うと、ニアの目が輝き始めた。



 「ニアもいく! れんといっしょに、おべんきょうする!」


 「ダメなんだ」


 「にゃんでー?」


 「大学というところはね、大学生という人しか勉強できない場所なんだよ。ニアは大学生じゃないから、大学では勉強できないんだ」


 「むぅ・・・」



 ニアは頬を膨らまし、可愛らしい目で俺を睨みつけてきた。

 まったく、可愛い奴だなニアは。


 俺は目線をニアに合わせ、小さな子供に言い聞かせるように優しく言ってやることにする。



 「ニア、6時半くらいには帰れそうだから、ちょっとの間我慢してくれないか? なっ?」


 「にあ・・・れんがいないとさみしい・・・」


 「なるべく早く帰るようにするから。それまでの間、お留守番頼む! 1人でお留守番ができると、とーても立派なことなんだぞ?」



 するとそれを聞いたニアは、ピクリと獣耳を動かした。



 「りっぱ?」


 「そう。つまり、ニアも1人でお留守番をがんばったら、すごいことをしたことと変わりないってこと」


 「りっぱ・・・りっぱ・・・りっぱ! にあ、りっぱになりたい!」


 「そうかそうか、じゃあ、その立派になれるように、お留守番できるかな?」


 「にゃ! にあ、がんばる!」



 ニアはすごく張り切った様子で頷いてくれた。



 「ありがとう。昼ごはんはテーブルの上に置いてあるおにぎりを食べるんだぞ? 分かったか?」


 「にゃあ! わかった!」


 「よし、じゃあそろそろ俺は出かけるよ。絶対に家から出るんじゃないぞ? 知らない人が来ても出ちゃダメだからな? あと、ちゃんと大人しくしてるんだぞ?」


 「にゃ!」


 「じゃあ、行ってきます!」



 そう告げ、俺は部屋を後にすることにした。

 現在時刻は8時56分。

 ちょっと急がないと間に合わないかな?


 部屋に残した謎の獣耳少女こと、ニア。

 彼女のことが心配になるものの、俺が暮らしているこのマンションは基本的に学生専用のマンションなので、オートロックだし防犯カメラも万全である。

 だから大丈夫だろう。


 そう言えば昨日、なぜニアは道路に倒れていたのか。

 なぜ全身傷だらけだったのか?

 理由を聞くのを忘れていたが、そのことは帰ってから聞いてみることにするか。



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