プロローグ
──この宇宙は、かつて一度、滅んだ。
どうやって滅びたのか、今となっては誰にもわからない。ただ、「空から何かが降った」という曖昧な記録と、無数の廃墟だけが、それを証明していた。
死の海から、ほんのわずかに生命が残り、生き延びた。
そして再び文明が灯されたのが、惑星。
そこに築かれた巨大中枢都市──《エリズコア》こそが、新たな世界の礎となった。
エリズコアは、2つの柱によって支えられている。
1つは、「ヴァルハ部隊」。未知と戦い、崩壊の縁に立つ世界を守る武力の象徴。
もう1つは、「オルビスグループ」。経済・技術・資源あらゆる面で惑星社会を統括する商業機関。
だが、この世界にはそれすら凌駕する“存在”がいる。
──《天権》。
それは、ある種の知性体が極限の到達点に達したとき、現実の法則すら塗り替えるほどの力を持って誕生する。世界に奇跡をもたらし、あるいは滅びをもたらす“神”のような存在。
天権の覚醒は、文明にとって光でもあり、深淵でもあった。
そんな時代に、一人の少年が宇宙ステーションに向かっていた。
名は《海》──記憶を失ったまま、凍てついた過去の記憶だけを頼りに。
彼の歩む先で、再び世界は動き始める。