5.村の救済
精霊王の加護を得たリラ、セレス、アウルは、共に干ばつに苦しむリラの故郷へと戻った。
村は、以前と変わらず、乾いた大地が広がり、人々の顔には絶望の色が濃く漂っていた。
しかし、リラの瞳には、もう過去の恐怖や悲しみはなかった。
彼女の心には、故郷を救いたいという、純粋な願いだけが燃えていた。
三人が村に到着すると、村人たちは警戒した目で彼らを見つめた。
特に、リラに対しては、過去の「呪われた少女」という記憶が拭いきれない。
しかし、セレスとアウルの存在が、彼らの警戒心をわずかに和らげた。
リラは、村人たちの前に進み出た。
彼女の体からは、穏やかな温かさが感じられる。
それは、かつて村人たちが恐れた、制御不能な炎の熱とは全く異なる、優しい光だった。
彼女は、静かに空に手をかざした。
「私の力は、呪いではありません。この力は、あなたたちを守るためにあるのです」
リラの言葉が終わると同時に、彼女の手から、温かい光が空へと広がっていった。
すると、乾ききっていた空に、黒い雲が湧き始める。それは恵みの雨となって、大地に降り注ぎ始めた。
雨は、乾いた大地を潤し、枯れかけていた作物を蘇らせた。
干上がっていた井戸には、清らかな水が満ち溢れた。
村人たちは、信じられない光景を目の当たりにし、言葉を失った。
リラの力によって、村に再び生命が蘇ったのだ。
長老たちは、恐る恐るリラに近づき、ひれ伏した。
「リラ様…私たちの愚かさを、お許しください……」
リラは、村人たちに憎しみを抱くことはなかった。
彼女はただ、静かに微笑みを浮かべる。
「過去は、もう過ぎ去ったことです。大切なのは、これからです。
私は、あなたたちと共に、この村を再び豊かな場所にしたいのです」
リラは、セレスとアウルと共に、村の復興に尽力した。
セレスは、水の加護で畑を潤し、アウルは、精霊の知識で村人たちを導いた。
そして、リラの温かい炎は、人々の心を照らし、希望を与えた。
村人たちは、リラの優しさと力強さに触れ、過去の過ちを深く悔いた。
彼らは、リラを「呪われた少女」ではなく、村を救った英雄として、心から受け入れた。
リラは、もはや孤独ではなかった。
彼女の隣には、セレスとアウルという、かけがえのない仲間がいる。
そして、彼女の心は、村人たちの感謝と信頼によって、温かく満たされていた。
こうして、リラは、セレス、アウルと共に、村と精霊の架け橋となり、大地に再び恵みをもたらす、炎の精霊王の加護を体現する存在となったのだ。
彼女の自分自身を知るための旅は、終わりを告げた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
少しでもリラたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は、リラたちの冒険の最後の場面が描かれる予定です。お楽しみに!
感想やお気に入り登録をいただけると励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。